第6話ー①「こういう時間」
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新学期が始まり、今日から、新生陸上部は動き始めようとしていた。
はずだった。
「ピューピュー!」
「何やってんすか、元部長」
「何って、後輩ちゃんと遊んでるんだよぉ」
「先輩もやりましょうよ、ゲーム」
早朝の部室にて、元部長こと、宝多先輩と後輩の櫻井の2人はゲームに興じていた。
「先輩、此処は遊び場じゃないんですよ。それに、引退したんですから」
「まぁだ、国体がありますぅ~。それに推薦もあるし、怠けるとダメなんで、部活には来ていいんですぅ」
「そうだそうだ~」
頭が割れそうだった。
これまでは、こちらが甘えていた分、これからはこちらが厳しくやらないといけないので、自らを律した。
「だったら、ゲーム辞めて、朝練始めますよ」
「どうする、梅ちゃん」
「やめて下さいよ、宝多先輩。下の名前で呼ぶの」
「悪い悪い、じゃあ梅」
「先輩、お友達は多くないですよね?」
「バレっった?あはははははは」
「いい加減にしろッ!」
今日から二学期。あたし、暁晴那は陸上部部長として、いきなり、ОGと後輩に舐められていた。
その後、三好先輩が介入したお陰で、何とか部活は始まったものの、後輩である櫻井はあたしに対しての風当たりがきつい為、サボったりが目立った。
原因は分かっているので、深くは触れないことにしよう。
朝練が終わり、着替え終わり、部室の確認を終え、鍵を閉め終わり、一人教室に向かっていた道すがら、会いたくないヤツに遭遇してしまった。
「やっほー、暁ちゃん」
「やっほー」
「何々、暗い暗いよ。同じ陸上部の仲間なんだから、楽しく行こうぜ?」
「はいはい」
同じクラスで、男子陸上部副部長の緋村剣(つるぎ)。
性格は軽薄で、10股の最低〇乱野郎である。
「もっと、気楽に生きようぜ。まぁ、副部長のオレが気軽に言えた義理じゃないけどさ」
何で、うちの陸上部はこういう奴が多いんだろう。
全員では無いし、部長の桝田は堅実で無口のいいヤツだけど。
「そうだね」
「いつもそう。暁ちゃん、女子とは楽しそうなのに、男子には視線も合わせないよね」
コイツのこういう所が嫌いだ。 人の顔をよく見ている。本当に苦手だ。やりづらい。
「そうかもしれない」
「オレ、オレに興味のない女性はどうでもいいんだよねぇ」
知らねぇよと突っ込んでやりたかったが、返す気にもならなかった。
「まぁ、頑張って下さいよ。暁部長!」
教室に近づき、緋村は友人の下へと駆け寄っていった。
痛い所を突かれた気がしたが、どうでもいいことだ。
あたしは深呼吸をして、教室に入った。
「おっはよー」
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