第6話ー②「こういう時間」

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 教室での天たちとのやり取りを終え、あたしは妃夜に挨拶をした。


 「おはよう、佐野っち、妃夜」


 彼女は視線を合わせても、逸らすばかりだった。 

 あたしは引きつった笑顔のまま、自分の席に着いた。


 あの夏祭りから、三週間。連絡を取ったりもしたが、直接会うのは、今日が久しぶりだった。 

 まるで、最初に戻ったかのように、妃夜の顔は何処か、余所余所しいものに見えた。


 今日は始業式もあって、あたし達陸上部やその他運動部が表彰する為に、待機していた。 

 朝は眠たそうな眼を擦り、あたし達はその時を待っていた。


 大会が終わった後のことは、よく覚えている。 ショックよりも、まだまだあたしは先があると思えたことが、一番の成果だったと思う。 

 心の何処かで、成長限界を感じていたあたしだったけど、こんな所で終わりたくない。そう思えた全国だった。


 表彰式には、宝多先輩のスピーチもあったけれど、全然面白くも無かったので、割愛ということで。 


 「おいおいおいおいおい!」


 始業式も終わり、朝と途中まで一緒だったが、珍しくやる気に満ちた彼女の瞳にあたしは心を燃やしていた。


 「また行くぞ」


 「うん」 

 2人で拳を合わせ、あたし達は再び全国に行く決意を固めた。


 「うっわ、お熱いですねぇ、お2人サン!」 

 割って入って来たのは、全国大会で3位だった宝多先輩だった。


 「何すか」 

 朝はいつもの無表情で、宝多先輩を制していた。


 「いやぁ、別にぃ。まだ、国体もあるし、朝は駅伝チームに入ったりとウチは安泰だなぁってさ」


 「からかいに来たのかと思いました」


 「からかいに来たよ。まぁ、頑張り給え、若人よ」


 「あんた、一個上でしょ?何、年上ヅラしてんすか」


 「詩っちょ、アタシに対して、当たりキツクナイ?先輩やぞ」 


 「詩っちょ、やめたら考えてもいいですよ」


 2人のやりとりを聴いていた時のこと、中村といつもの取り巻きがあたしを睨みつけていた。 

 しかし、それ以上のことは、何もして来なかった。


 「アイツら、まだせなっちょのアレ、怒ってんのかねぇ」


 「負け犬は所詮、負け犬ですよ」


 「詩っちょ、そういうとこやぞ」 


 「本当の話ですよ」 


 「せなっちょ、今日は具合悪いの?もしかして・・・」


 「違います!元気です。何でもないです」 

 あたしは走って、教室に戻ろうとその場を離れた。

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