第1話ー②「みんな」

翌日、一緒に登校したあの日。あたしは休み時間に教室でアプローチをかけることをしてみた。


 「羽月、○INE教えて!」


 これなら、イケると思ったんだけど・・・・。


 「お断り致します」


 「な ん で ?」


 冷淡な羽月の言葉に私はぽかんとしてしまった。


 「私、まだあんたを信用してない。それに私・・・」


 「分かった、いいよ。またの機会にね」


 「良かったわね、羽月さん。その女はスマホ持ち歩かないし、LINEの返事なんて、全然帰って来ないの。家の電話じゃないと連絡出来ない女だから、交換する価値なしなのだわ」


 天、余計なこと言いやがって。本当のことなんだけど。


 「LINEはやってるのよね?」


 「いやぁ、面倒くさいんだよね、アレ。通知はうるさいし、面倒くさいし、既読したしてないで、いちいちうるさいし。そう思わな?」


 明らかに引かれていることだけは、分かる羽月の表情にあたしは口を噤んだ。 「は、あははははは~、じょ、冗談だってば、冗談」


 「Everything is too late.」 (全てが遅すぎるぞ)


 LINE作戦、失敗。次だ次!


 次の時間、移動教室なので、あたしは羽月に近づいた。 


 「今度、カラオケ行かない?テスト終わってからでいいから・・・」


 羽月の表情はいつも以上に難く険しく、途轍もないを権幕であたしを睨んでいた。


 「ご、ごめんなさい。何でもないです・・・」


 あたしは足早にその場を後にした。 どうやら、羽月は音痴らしい。 

 カラオケ作戦失敗。


 次の日は休みだったので、出会うことは無かったが、何かいいアイディアは無いかと熟考をしていた。 

 その時、両親から滅茶苦茶、勉強しろと言われた気がするが、忘れよう。


 月曜日、あたしと羽月の校区は違うので、遭うことは無いので、下駄箱で待機したかったが、朝練を終えた後に教室で何事も無かったかのように、羽月の下へと駆け付けた。


 「おはよー、羽月!佐野っち!」


 「おはよう」


 「うん!」


 入りは完璧だ。後はここからが、勝負。


 「ところで、羽月さぁ、今日は一緒に飯でも」


 「今日は昼食中にミーティングあるから、無理。アタシらと一緒だろ?」 

 朝の強引且つ、そんな予定は一切ないのに、こいつ、意外と寂しがり屋だから、1人で飯を食いたくないばかりか、変な嘘憑きやがってぇ。


 「それなら、無理ね。それに私嫌いなの。誰かとご飯食べるの」


 予鈴がなり始め、あたしは席に戻っていった。 

 いつの間にか、朝は姿を消していた。あいつは忍者か、覚えておけよ。


 追い詰められたあたしは二時限目の終わりに暴挙に及んでしまった・・・。


 「なぁ、羽月、一緒にお花摘みにいかない?」


 「なんで、あんたとトイレ行かないといけないわけ?信じられない、絶対嫌よ。その言い方もやめて、気持ち悪い!」


 羽月は一人でトイレに直行してしまった。


 「羽月・・・」


 「今のはちょっと・・・」


 「なんか、言ってて、自分でもそう思った。どうしちゃったんだろ、あたし」


 「いつものことですわ」


 トイレ作戦 失敗 流石に詰めすぎたというか、あたしのバカ。 

 その所為なのか、羽月は早退してしまった。何やってんだ、あたし。


幕間 宮本茜の場合


 昼休みの弁当を食べ終わった後、茜たちは、何気ない休息時間を過ごしていた。


 その議題と言えば・・・。


 『ねぇー、ねぇー、天さぁ、秀才様の話聴いた?あれって』


 『不愉快、その言い方、いい加減おやめにしなさいな?』


 『Me Too』 (私もそう思う)


 『だから、晴那が居ない時に話してんじゃん。だって、最近の晴那。おかしいよ、どう見ても、あれは』


 『だから何ですの?友達に嫉妬することがどれだけ、醜いか分かってらっしゃらない?』


 『茜はあんたらと違って、人が出来てないの?嫉妬することって、そんなに悪いの?失神するようなオンナと友達になったら、苦労するのは晴那だよ!そんなの止めたいじゃん、だって、あいつは、あいつは』


 『茜、貴女にどうこうなって欲しいとか、とやかく言うつもりはございませんわ。けれども、一人でいることへの恐怖を抱える彼女を軽蔑するのは、やっていて、悲しくはありませんの?』


『It's not good to make fun of people who are working hard. You're the one who knows that best, right?』


 (頑張ってる人を馬鹿にするのは良くないよ。そんなこと、一番分かってるのは貴女でしょ?)


 『いや、全然、分からん。分かってるのは、お前、絶対、日本語分かってんだろ。』


 『それに彼女は秀才様じゃないわ。彼女の名前は、羽月妃夜。この学校で、このわたくしより、賢くて、優秀で校内随一の努力家で、一人で色んなことに耐えてきたどこにでも居る普通の女の子よ』


 『そんなこと・・・、分かってるよ。けど、けど・・・』


 昼食終わりに、晴那が駆け付けて来た。


 『何、何?どうしたん?けんか?あたしが相手するから、許して!』


 『晴那・・・。』


 『I like that kind of thing about you』


 (そういうとこだよ、そこが好きだけど)


 『ん?何て』


 『何でも無い、強いて言うなら、晴那の所為。』


 『いや、マリー、何て言ってるかと』


 『そういうとこよね、晴那は』


 『No doubt』


 (それな)


 『何でも無い!この難聴系主人公!』


 『何それ?』

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