第9話 ゲーセンと言えばって話。
———ゲーセンにて。
「ふ、ふぉおおおおおおおお! レレたんの限定雨合羽姿アクリルキーホルダーだああああああああ!!」
「五月蝿い」
俺は、白髪無表情系ロリっ子であるレレたんの雨合羽姿のアクリルキーホルダーを手に、感動の雄叫びを上げていた。
周りのお客さんと一緒に梓川もドン引きしている様な気がするが……まぁそんなことはどうせ今に始まったことじゃないし、どうでもいいのだ。
因みにレレたんとは、俺が大好きなゲームのヒロインが溺愛する妹で、1番小さいのにド正論をブチかます最強の美幼女であり、人気なのに中々グッズが出ないことで有名なキャラである。
そんなレレたんの第3回目となるグッズが今回のモノで———前回の時代では結局手に入れられなかった。
しかぁーし!!
何と、梓川に引いて貰ったクジで大当たりしてしまったのでした!
それも各店舗1つ限りの超貴重でレアな雨合羽姿のレレたんを!!
俺は、レレたんを引いて下さった梓川様に土下座でお礼する。
「ありがとうございます、梓川様ぁあああああああああ!!」
「だから五月蝿いわよ!」
「ふははははは! 頭を叩かれようと、今の俺には痛くも痒くもない! 多分今ならトラックに引かれてもトラックがひしゃげる!!」
「そんなわけ無いでしょ、馬鹿じゃないの?」
おっと、それは紛うことなきゴミを見る目ですね。
ただ、今の俺にはそれすらも効かないのだ!
「……はぁ、用事はこれだけ? なら帰るわよ」
心底冷え切った瞳を此方を見てくる梓川の視線に諸共せず、俺が高笑いをしていると……梓川が突然そう宣うと共に踵を返す。
そして、スタスタとゲーセンの出口へと向かうので、俺は慌てて引き止めた。
「え、いやいやちょっと待っ。あ、待って……待っ———待ってくださいお願いします! まだ用事はありますから!」
「……何?」
そう言って面倒臭いという感情が全面に押し出された梓川に。
「———さぁ、俺に着いて来い……!」
「言葉と態度が正反対ね」
土下座の状態のまま、告げた。
「———到着です」
「……これは?」
「誰もが1回はやるゲーセン恒例のゲーム———ゾンビシューティングだっ!」
そう、俺達がやって来たのは———3Dメガネを掛け、暗い中、銃を模したコントローラーで迫りくるゾンビを一体残らず撃ち殺すゲームがある場所である。
普通に面白いのだが……中が見えない様な仕様になっているせいで、偶にカップルがイチャイチャしているのが玉に瑕だ。
滅されてしまえ、くそリア充共め。
悔しさに歯噛みしてリア充共に爆弾を投げつける妄想をしている俺に、梓川が訝しげに俺を睨む。
「……何で私が? 1人でやれば?」
「いやいや1人じゃ面白くないわ。全く盛り上がらないって。2人でやるのが面白いんだよ」
「なら別の人とやればいいじゃない」
———お前をクソ野郎が居る家に帰らせないためだよ。
……何て言えたら楽なのだが、流石の俺にも羞恥心というモノが存在するのだ。
そんなキザっぽいセリフは吐けないし、そもそも吐けるほどの度胸も顔も持ち合わせていないのが現実である。
俺は精々……何処までも下手に出るしか出来ない。
「そこを何とかお願いしますよぉ梓川様。ちょっとした暇潰しだと思ってさ、女の子と禄に遊びに行けない憐れな非モテ男子を助けると思ってさぁ!」
あ、自分で言ってて涙出てきそう。
てかもう出てるわ、だってほっぺたに熱いものが……。
「…………グスッ……」
「……あぁ、もう、分かったわよ。1度だけよ、1度だけ」
「ありがとうございます」
どうやら余程俺の姿が憐れだったらしく……同情の色を瞳に宿して気まずそうにオーケーしてくれた。
俺の中で何かが失われた気がするが……まぁいっか。
因みにだが、このゲームを選んだのには理由がある。
というのも、未来で梓川と1度だけゲーセンに行ったことがあるのだが……色々とやる中で、梓川はこれが1番ハマっていたのだ。
何でかって?
そんなの最高にストレス発散できるからに決まってるじゃないか。
偶に急に脅かしてくる奴居てイラッとするけど、それも全部ぶっ殺すのが最高に気持ちいいんだよ。
あの時は結局全部クリアするまでやったっけな。
つい未来での出来事を思い出していた俺だったが……。
「早く終わらせて帰るわよ」
「そう言ってられるのも今の……内……?」
ふと目線を戻すと。
言葉とは裏腹に、早くやりたくてウズウズする子供みたいな様子の梓川の姿があった。
口元をニマニマさせ、何なら律儀にもう座っている。
…………めちゃくちゃ楽しみにしてるじゃねぇか。
え、何、可愛いんですけど。
「何してるの? 早く乗りなさい」
「あ、はい」
俺の中の全俺が尊死した。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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