第5話 テンプレ??

「———はぁぁぁ……ウチの子ってこんなにお馬鹿な子だったかしらねぇ」

「おっと、やめてくれよ母さん。何度も言ってるじゃん。女の子助けた代償だって」

「緋色が人助け? …………無いわねぇ」

「風邪うつしてやろうか」


 俺は冷え◯タをおでこに貼り、ベッドで毛布にくるまりつつ、俺の部屋の扉に寄り掛かって困った表情をする母さんと言い合う。

 ウチの母さんは普段はおっとりとしていて優しいのだが……偶にこういう無自覚な煽りを披露してくるのが玉に瑕だ。


「だってあの緋色よ? 性根が腐ってて、何か言えば屁理屈ばっかり言ってめんどくさくて、人が困っていても『あ、俺には関係ねぇや』って思って無視するあの緋色なのよぉ?」

「待ってよ。それだと俺がとんでもないクズにしか聞こえないんだが!? てかそれを俺の前で言うか普通!? しかも今の俺、病人。母さん分かる? 今の俺はめちゃめちゃ病人なんだよね」

「知ってるわよぉ?」


 うん、どうやらウチの母親は普通にサイコパスだったらしい。

 自分の息子が風邪で寝込んでるのにこの言い様って……あ、今物凄く熱高くなった気がする。

 ヤバい、騒ぎすぎたかもしれん。

 

「ほら、早く出てってくれ。もう寝るから」

「はぁーい。あ、お昼御飯は冷蔵庫に入ってるからね」

「あいよ。あんがとさん」


 俺は倦怠感に苛まれながら手を振る。

 母さんはこれから仕事だというのに、わざわざ昼飯を作ってくれたらしい。

 後でちゃんとお礼を言っておこう。


 さて、改めて言うが———風邪引きました。

 やっぱ2月にポロシャツ1枚でチャリ乗って帰ったのはアカンかったらしいです。

 梓川に『風邪引くなよ?』とかカッコつけて言った手前、物凄く羞恥心を抉られました。


 現在の体温は、38度ピッタリ。

 風邪にしては少々高め、といったところか。


「……ちょっと寝るか。ワンチャン昼から学校に行けるかもしれんし……」


 何て頭のおかしいことを考えてしまうくらいには身体がだるい。

 てか自分で言っててドン引きなんだが……マジで寝よ。


 俺は、ゆっくりと目を閉じた。










「———ふむ、寝すぎたらしい」


 俺はベッドの隣に置いてあるデジタル時計を眺め、真顔で零した。

 因みに時計には『16:37』と表示されている。

 

 いやぁ、俺が思ってた以上にヤバかったんかな?

 俺、人生でこんなに寝たこと赤ちゃんの頃以外で無いんだけど。


 寧ろゲームをしている身としては寝ないことも多々あるほどだ。

 そんな俺が朝の8時から夕方の4時まで寝ていたとは、よほどのことである。


「ま、俺はどうでもいいとして……梓川が熱を出してないかだけが心配だな」


 恐らく梓川が熱を出したら誰も看病してくれないだろう。

 それどころか罵られる可能性もある。

 身体が弱っている時に暴言を吐かれると、普段よりダメージが入りやすいんだよな(個人的な意見です。実際はどうかなど知りません)。


 イジメに関しては、今日は起こらないだろうと推測している。

 昨日俺に見られた手前、露骨なモノをしないはずだ。

 それにしても……。


「……まさか、イジメの主犯格が夢原財閥のご令嬢だなんてなぁ……」


 これは非常にマズいことになった。

 夢原財閥は、今物凄い勢いのある巨大な財閥だ。

 多分動画を学校側に提出してもなかったことにされるだろう。


 なんて言ったって、ウチの学校私立だからね。

 沢山お金を寄付してくれる夢原財閥のご令嬢を退学は愚か、停学にすら出来るはずもない。

 やはりあの時介入して余計なことをせずにもっと証拠を集めれば……。


 そこまで考えた所で、俺は頭を振る。


 いやいや何考えてんだよ、俺。

 それだと目の前で梓川のイジメを見て見ぬ振りをしてるのと同義じゃねぇか。

 でも、根本的に解決するには元凶のあのご令嬢を何とかしないといけないわけで。


「はぁ……どうしたもんかねぇ」


 もうここまで来たら俺がボッコボコにして絞めてやろうかしら。

 まぁそんなことしたら120%人生詰むからしないけど。


 俺はベッドから起き上がり、まだ若干フラつくなぁ……などと思いながら階段を降りていた時。



 ———ピーンポーン。



 インターホンが突如鳴った。

 同時に、数多のラノベを網羅してきた俺には大体察しが付いた。


 これはアレだ、梓川が配布物を持って俺の家に来るパターンだ。

 そこから梓川との距離がグッと縮まるイベントが始まるんだよきっと。

 キタコレ、俺の時代が来たわコレ。


 俺は、今までの身体の倦怠感やフラつき具合は何処に行ったのかと思うほど軽いステップで玄関まで移動。

 舞い上がったテンションのまま玄関の扉を開き———。



「———随分と元気そうだな、緋色。折角梓川が心配して私と共に来たと———」



 無言で、そっと扉を閉めた。

 勿論音が鳴らないようにゆっくり鍵も。

 何やらドンドン玄関を叩いたりインターホンを鳴らしたらしてくるが、一先ず無視。

 今は情緒を落ち着かせる方が先決だ。


 何で此処に静香先生がいるんだろうか、誰か教えてくれ。

 ここは梓川が来るパターンでは?

 というかあの人、俺の担任でも何でもないはずなんだけど……もしかして俺のこと好きなの?

 でもごめんなさい、流石に生徒と教師だと壁があるんですよ。 


「おい、今私が何故かフラれた様な気配がしたんだが?」

「アンタはエスパーか何かか!? どうして俺の考えていることが読めんだよ!?」

「つまり、私をフッたんだな」

「…………」


 おっと、口が滑った。

 てか声デケェよ、扉越しに会話成立しちゃってるじゃん。

 …………はぁ、仕方ない。

 

 俺は、渋々鍵を開けて扉を開く。

 すると、大変ご立腹らしい静香先生が腕を組んで仁王立ちで立っていた。

 また、その後ろで気まずそうに身体を縮こまらせて目を逸らした梓川が……梓川!?


「あ、梓川が何でここに……!?」

「き、昨日貴方に借りた制服を返そうと思っただけよ……」

「そ、そうか……」


 ヤバい、不意打ちの梓川はちょっとというか非常にいけない。

 それに、目の前でイチャイチャ(?)する俺達を見て目を細めている静香先生が別の意味で非常にいけない。


「……と、取り敢えずどうぞ……」


 俺はどんどん機嫌の悪くなる静香先生の様子に恐れ慄きつつ、2人を我が家に促した。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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