第3話 昼休み、屋上突撃
「———それで……突然私を振り切って逃げた理由は何だ?」
「……。実はですね……突然用事を思い出したんで———痛っ!?」
「馬鹿かお前は。用事を思い出した程度で教師の話を無視して逃げる奴が何処に居る!」
「またまた~居るじゃないですか、今ここに」
無事『キモッ』というクリティカルダメージを受けた俺は、静香先生と共に生徒指導室にやって来ていた。
そして今、再びお巫山戯に走る俺の目の前で、静香先生が俺のおでこにデコピンを繰り返している。
「お前! 以外で! の! 話を! しているんだ!」
「痛っ、ちょっ、先生、やめっ———鬼みたいに力強いんだからぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ここなら誰にも邪魔されずに舐め腐ったお前の根性を叩き直せるな。覚悟しろ、私を舐め腐った罰だ!」
俺が避ける間のなく頭を捕まれ、そのままアイアンクローをお見舞いされる。
あまりの痛さに絶叫する俺の姿を見て、静香先生は丁度良い……と言わんばかりに加虐的な笑みを浮かべていた。
「ストップ! タイム! 本当にタイム! やめて、死ぬ! 本当に真っ赤な液体噴き出しちゃうからァァァァァァ!!」
「はぁ……こんなことをされたくなかったら、これからはちゃんと真面目に授業を受けることだ。分かったか?」
俺の頭から手を離し、呆れた様子で宣う静香先生。
ただ……と俺は考える。
仮にこれから真面目に授業を受けたら……必然的に静香先生とじゃれ合うことは無くなる。
俺的には美人に頭を握ってもらうだけで十分ご褒美であり……何なら偶に大きな胸部装甲が当たって役得というか……。
寧ろ静香先生と戯れれるのは俺だけの素晴らしいポジションであって。
つまりは、だ。
「ごめんなさい、静香先生。真面目に授業は受けれそうにないです」
「お前はどうやら死にたいようだな??」
「そんな貴女もお美しいぃぃぃぃぃぃ!!」
無事、1時間程の説教(途中から雑談)となった。
———昼休み。
学生なら嫌いな奴は先ずいないであろう
かくいう俺も、昼休みは大好きである。
「痛い……まさか昼休みになってもまだ痛いとは……恐ろしや、学校の鬼」
勿論誰が原因かなど、言う必要もないだろう。
美人の皮を被ったオーガに掴まれた箇所を擦りながら……俺はとある場所に向かっていた。
おっと便所じゃないぞ?
便所飯するほどボッチじゃないからね?
もしボッチなら静香先生と食べてるよ。
何て緊張を必死に紛らわせようとしたが……結局緊張が解けることなく目的地に着いてしまった。
そう———屋上に。
「…………居るよな、梓川……」
ちょっと不安になってきたんだけど。
一応昔聞いた時は1年の頃から此処でご飯を食べてると言っていたので……多分いると思う。
「よ、よしいくぞ———」
俺は覚悟を決めて扉を開ける。
すると———。
「———あ、アンタは……」
だだっ広い屋上のフェンスに寄り掛かって可愛らしいお弁当を膝に置き、此方を驚愕に染まった表情で見つめる梓川の姿があった。
しかし如何せん朝の出来事もあって俺達の間に気まずい雰囲気が流れる……のもお構いなしに俺は片手を上げて笑みを浮かべた。
「よっ、梓川。俺の名前は金ケ崎緋色。朝は突然号泣して悪かったな」
「……あっそ。どうでもいい」
あら冷たい。
まぁ1年以上前に1度同じ返しをされている身としては、懐かしいという気持ちしか沸かないが。
「なぁ、ここで飯食って良い?」
「嫌よ。教室で食べれば?」
「ところがどっこい。次の授業がまた静香先生だから、会ったら間違いなく連行されるんだよな、これが。俺、静香先生のお気に入りだからね」
因みに静香先生に会ったら連行されるのは事実だ。
会えば『おい、どうせ暇だろう? 今からプリント印刷するから手伝え』とか言って無理矢理連れて行かれる未来しか見えない。
俺が肩を竦めて言うと、梓川は何故かドン引きした様子で此方を見ていた。
疑惑を宿した瞳が俺を射抜く。
「……問題児だから、目を付けられてるだけじゃないのかしら」
「ザッツライト! 大正解! いやぁ静香先生って俺のお巫山戯に唯一付き合ってくれるから、ついつい遊んじゃうんだよな。あ、一緒に昼飯食べるね」
「嫌よ」
「くッ……さらっと言えばバレないと思ったのに……!」
俺はこれみよがしに悔しそうに歯噛みする。
ここで、俺は秘策に出ることにした。
「はぁ……ま、梓川がダメって言うなら仕方ない。ゆっくり飯が食いたかったんだけど……便所で飯を食うか。クソ不味くなるし気持ち悪くなるけど……教室はそもそも飯食えないだろうし。それじゃあな、梓川」
「…………好きにすればいいじゃない」
はい、掛かった。
やっぱり梓川、お前は優しい奴だな。
だから自殺なんてしてしまったんだろうが……今度こそ俺が止めてやるからな。
「え? ここで食べていいって? マジか、サンキュー! あの超絶美少女梓川麗羽と一緒に弁当が食べられるなんて今日は良い日だな!」
俺は目を輝かせて梓川から1メートルくらい離れた場所に座る。
同時に梓川が半目で俺を睨みながら言った。
「誰が一緒に食べるなんて言ったの? アンタは離れて食べなさいよ」
「またまた~素直じゃないなぁ〜1人が寂しいならそう言えばいいのに〜」
「……っ、誰がそんなこと……!」
今まで心底面倒臭そうに始め以外表情を変えず対応していた梓川だったが、俺の言葉に一瞬表情を崩した。
どうやら図星ではあったらしい。
ま、今の俺では此処らへんが限界かな。
「悪い悪い、離れて食うよ。ありがとな、梓川」
俺は取り敢えず完全な拒絶をされなかったことに安堵しながら、梓川から離れた場所に座り直して菓子パンの袋を開けた。
「……何なのよ、アイツ……」
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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