第6話 キッチン

 小屋に帰ってきた俺はキッチンで小鳥をさばいている。もも、むね、手羽先などにして保存をしようと思う。3話全ての小鳥を裁き終わった俺は味付けがないことに気がついた。今日はなんとなく塩味の気分だ。しかし無いならしょうがない。そのままの味を楽しむとしよう。


 小鳥2匹分の手羽先を沸騰した鍋に入れて蓋をする。その間にとってきたクサムラタンゴとドロタンゴを1匹ずつ手に取り、魔力を込める。そのとき、ゆっくりと魔力を注入するのがコツだ。


 魔物には保有できる魔力の上限値がある。その上限値を上回る魔力が供給された場合、気絶してしまう。最悪の場合死に至る。小型の魔物を料理で使う場合、この性質を上手く利用すると良い。ゆっくりと魔力を注入することにより魔物の体内で出汁が発生し、とても美味しくなる。


 よし、クサムラタンゴとドロタンゴの魔力締めの完了だ。この2匹を鍋に入れて10分ほど待つ。クサムラタンゴから水色の出汁が、ドロタンゴからは緑色の出汁が滲み出てくる。これはそれぞれ治癒の効果と魔力回復の効果が期待できる。

 皿に移して食べてみる。うん、クリーミーで美味しい。クサムラタンゴとドロタンゴのエキスがいい感じに混ざり合っている。さらに2つの魔物の身が溶けてまるでヤギの乳を固めて発酵させたかのような味がする。これはとても美味しいという意味だ。


 鍋中の飲みきれなかった出汁は捨てずに持っておく。瓶の中に入れて1週間ほど寝かせればポーションが出来ることだろう。今回の場合は効果は珍しく2種類で、治癒と魔力回復だ。街で売ったらいい収入源になるだろう。


 外を見るともう日が沈んで真っ暗だ。夜行性の魔物がいないか気になるところだが、今日はもう寝るとしよう。今日はいい1日だった。いや、誘拐されたから良いとは言えないのか。とはいえここの生活は刺激がたくさんあって面白い。なんで俺が自称賢者の弟子に選ばれたかは分からないが面倒を見てくれるのは確実らしい。就職がどうとかいろいろ悩んでいたし、ここで厄介になるのも割と良い案かもしれない。

 そういえば、好きに研究をして欲しいって言ってたな。研究とか、あまり興味はないんだけどな...。まぁ、でも何もしないで1週間過ごすのも気持ちが悪いし。研究するかぁ。

 取り敢えずはクサムラタンゴとドロタンゴを煮るとポーションが出来ます。とまぁ今日はこんなもんでいいだろう。今日はもうベッドに入って寝よう。

 おやすみー。....あ、風呂入るの忘れた。

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