第3話 ツリーハウス

 言われた通り根元に魔力を流した。地面に魔法陣が現れて青白く光る。ズンッと下に引っ張られるような感覚。一瞬にして木の上の小屋に移動する。下から見たとき、この木はそれほど大きくなかった。しかし窓から見えるこの景色はどうだろうか。まるで世界を俯瞰ふかんしているかのような高さだ。


俺「これは...すごいな。」


 大木の足元でさっきの魔法陣が淡く消えていくのが見える。同時に部屋の隅の魔法陣も消えた。

 こんな魔法陣見たことがない。一瞬で移動できる技術はこの世界で既に確立している。しかし、それはダンジョンで発掘される移動石を組み合わせて作られる。技術を"生み出した"というより、現象を"発見した"と言う方が正しいだろう。

 しかしこの魔法陣はどうだろう。触媒も何もなく、魔法陣だけで作られた技術である。

 王都の古書館のどの本にも載ってないであろう技術。それ一つで戦争が起きかねない。一体ここは何なんだ。あの人は一体何なんだ。


 部屋を見回す。意外にも広い空間だ。恐らくこの大木に認識阻害にんしきそがいの魔法がかけられているのだろう。下から見ていたときには考えられないような広さだ。王都の噴水が3つくらい入るのではなかろうか。

 今立っているこの場所が玄関らしい。右手側は居住区域、左手側は研究区域と見える。

 足元を見るとスリッパと共にメモが置いてあった。あの爺さんが置いたのだろうか。


【右手側】

・広いキッチンに広い貯蔵庫

・大きなソファはレッドスリルの毛皮を使用

・奥の壁の向こうは寝室と空き部屋ひとつ


【左手側】

・魔物の檻が2つ

 それぞれ対魔法、対呪の効果が付与

・奥の扉は研究資材保管用の亜空間部屋

・資料作成専用の上級ゴーレム2体


(追記)

 ここを気に入ってくれたかね?わしお手製の自慢の部屋じゃ。部屋を見て分かる通り其方にはここで好きに研究をしてもらいたい。弟子への初めてのプレゼントじゃ。じゃあ頑張るのじゃぞ〜。

 あ、わしは1週間戻れんので食料は自分で確保してくれ。



....。はぁ。聞き間違いだと思ってたけど、やっぱり俺はあの爺さんの弟子にさせられたのか?1週間留守にするなら食料くらい貯めておけっての。

 まぁ、なんだ。来てしまったものは仕方がない。取り敢えずは爺さんが戻ってくるまでの生活が優先だな。この辺りの情報も知っておきたい。

 よし、そうなれば狩りをしがてら周辺調査をしよう。頑張るか〜。

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