第2話 里帰り
「ふぃ〜、やっと着いたな」
「
「うるせ」
そりゃ二時間も座ってれば疲れるっての。新幹線だから、他の交通機関に比べれば快適ではあるが、それでも疲れるものは疲れる。この調子だと夜行バスにはもう乗れそうにないな。
「んで? これからどうするんだよ?」
「お母さんが迎えに来てくれてるよ」
「お前……初めっから連れてくる気満々だったな」
「まぁね」
「すぐそこの立駐で待ってるって。早く行こ」
「へいへい」
ったく……恵里のやつ。まぁ、いつものことか。
「お待たせ、お母さん」
「遅いよ、恵里」
「ごめんって。武尊がうだうだ言ってうるさかったんだよ」
「俺のせいかよ。てか、うだうだ言わせてるお前が悪い」
「うーん。多分、恵里が悪いねぇ」
「何でよ!?」
どう考えても日頃のおこないだろ。いい加減気付けよ。
「ま、とにかく早く乗りなよ。遅くなっちゃう」
「はーい」
「よろしくお願いします」
俺達は車に乗りこみ、恵里のお母さん、
「それにしても、ごめんね武尊君。まーた恵里のわがままに付き合わせちゃって」
「まぁ慣れてますから大丈夫ですよ」
「ぶっちゃけ開かなくても全然いいから、気楽にやっていいからね」
「はい。そうさせてもらいます」
「ええー! ダメだよ。開くまで帰さないからね!」
「バカ言ってんじゃねぇよ。そんなに開けたいんだったら、自分でやれ」
「私じゃ無理だから武尊に頼んでやってるんでしょ! バーカバーカ。バカ武尊〜」
腹立つな、こいつ。
つーか、頼んでやってるってなんだよ。何でお前が上から目線やねん。
「恵里〜、それ以上武尊君のことバカって言うと、ご飯抜きにするよ」
「ちょ、それ酷くない!?」
「全然酷くないでしょ。わがまま言った恵里が悪い」
「ぶー」
「むくれてないで、少しは反省しなさい」
そうだそうだ。もっと言ってやって下さいよ。
「あ、そうだ。武尊君」
「はい?」
「今日はうちに泊まっていきなさいね」
「え? 何でですか?」
俺と恵里の家は近所だ。だから普通に実家に帰るつもりだったんだけどな。
「いやね。
「まじっすか」
参ったな。俺、実家の鍵持ってないんだよな。基本的に年末年始ぐらいしか帰らないから、持ち歩かないようにしてたんだよな。
「てか、仕事って何ですか? 親父達は農家だから家に居ないってことないですよね?」
「あれ? 聞いてないの?」
「特に何も聞いてないですけど……」
え? 親父達なにかやらかしたの? それで出稼ぎとかしてる感じ?
いやいや、流石にそれだったら、俺の方にも連絡くらい来るよな。
「守さん達、YouTuberになったんだよ。で、今はその撮影で家を開けてるんだよ」
「は……?」
YouTuber? 嘘だろ。
何やってんの? あんたらもう五十代過ぎてるだろ。
てかそもそも畑はどうしたんだよ。
「あ、大丈夫だよ。畑は人を雇って管理してもらってるから」
「そうっすか。えと……因みに親父達どんなことやってるんですかね?」
「基本的には、お悩み相談系YouTuberだね。ライブ配信で視聴者からお悩みを募集して、それに回答していく感じだね」
「あーなるほど。そういう系ですか」
うん。まぁそれだったらギリいいかな。何か変にはっちゃける系じゃなくてよかったわ。
「結構人気なんだよ。だいたい二万人くらい集まるからね」
へぇ。そりゃすごいな。下手なゲーム実況者より集まってるじゃん。
「で、一つお悩みを解決する度にメントスコーラをして祝杯を上げるんだよ」
「……」
何してんだよ……。
一瞬でもすごいって思った俺がバカみたいじゃねぇかよ。てか、今どきメントスコーラって……。
「それで、今は結婚三十五年記念で、日本最北端と日本最南端からそれぞれスタートして、どこで会えるかチャレンジで、家を開けてるんだよね」
まじで何やってんの?
「あ、因みに守さんが北海道スタートで、
「そ、そうっすか……」
その辺の情報はどうでもいいっす。
「まぁそんなわけだから、遠慮なく泊まっていってよ。守さん達からもお願いされてるしね」
「分かりました。それじゃあ、お世話になります」
「にへへ。武尊がうちに泊まるの久しぶりだね」
「まぁそうだな」
子供の頃はよくお互いの家に泊まってったけな。まぁそれも小学生の高学年前くらいまでだけど。
「部屋は昔使ってた、子供部屋あるからそこを使ってね」
「分かりました」
あそこか。
よく恵里に付き合わされて、プロレスごっことか昼ドラ系おままごとしてたな。
「何でもいいけど武尊」
「なんだよ」
「私に興味あるからって、私の部屋に来ちゃダメだからね」
「行くわけねぇだろ。バカじゃねぇの?」
「思ってたよりずっと酷い反応だね!?」
お前が変なこと言うのが悪いんだよ。バーカ。
「むぅ……」
「あはは、恵里の負け〜」
「お母さん、うるさい」
「はいはい。負け惜しみ」
「むぅ……まじでうるさい」
やれやれ。この親子も相変わらずだなぁ。
「それでさ、武尊?」
「うん?」
「帰ったからすぐに取り掛かるの?」
「あー、そうだな」
正直なところ、どんな暗号なのか結構気になっていたし、すぐに取り掛かってもいいかもしれないな。それに明日の夜には帰らないといけないしな。普通に学校があるから。
「悪いけど、謎解きは明日にしなさい。今からだと遅くなるでしょ」
「まぁそれもそうだね。んじゃ武尊。今日はゆっくり休んで、明日の朝一番からよろしくね」
「へいへい」
ま、そう言われちゃ仕方ないか。んじゃまぁ、明日の朝一番から頑張ってみるとしますかねぇ。
「あ、そうだ」
「ん? 何?」
「何でもいいけど、開けられなくても文句言うなよ」
「分かってるって」
「後、約束のあれも忘れるなよ」
「はいはい。ちゃんと帰ってらトレードしてあげるから」
「なら、よし」
これで心配事はなくなったな。後は、明日上手い具合に暗号を解読出来て開けられれば、万々歳ってところだな。
まぁとりあえずあれだ。
今日はもう疲れたから、さっさと風呂に入って布団にダイブして寝たいわ。
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