第21話:な、なんか皆顔が怖くね?(久住視点)

 飲み会当日。


 今日はサークル室に集まってから皆で飲み屋に向かう事になっていた。


 という事で俺はサークル室に入っていくと、今日の飲み会に参加するメンバーが既に集まっていた。もちろん今日お持ち帰りする予定の四条姉妹も既にいた。


「あれ、皆早いな? 皆お疲れっすー」

「「……」」


 という事で俺はいつも通りのテンションで皆に挨拶をしていったんだけど、でも何だか周りの空気がヤケに重かった。


 なので俺は一旦近くに座っていた鳴海にコッソリと耳打ちをしていった。


(お、おい、何だよこの空気?)

(いや、さすがにわかんねぇよ。俺もさっき来たばっかりだしさ)


 どうやら鳴海もこの重たい空気の理由がわからなくて困惑しているようだ。まぁでも皆集まっているようだし、さっさと飲み屋に移動する事にしようかな。


「え、えっと……ま、まぁ皆集まってるようだし、それじゃあさっさと飲み屋に行こ――」

「あー、すまん……ちょっとだけ待ってくれないか?」

「え? あぁ、良いけど……って、えっ!? な、何で桜木先輩がいるんすか!?」


 俺がそんな号令を出そうとしたら急に同じサークルメンバーの桜木健が手を上げてきた。俺は桜木先輩がサークル室に居た事に全く気が付いてなかったのでかなりビックリとしてしまった。どうやら部屋の隅っこに座っていたようだ。


 という事でこの人は桜木先輩という大学四年生の先輩だ。去年まではこのサークルの部長を務めていた男でもある。とてもガッシリとしたレスラーのような大男で、性格は割と厳格なタイプの人だった。


 俺はそういう古臭いタイプの人間は苦手だったので、あんまり会いたくないと思ってたんだけど、でも桜木先輩は就職活動とかで忙しくなっていたのでここ最近はサークルに顔を全く出していなかった。


 だから俺としてもここ最近はだいぶ伸び伸びとしながらサークル活動を行えていたんだけど……。


「あ、あれ? え、えっと……桜木先輩は今日の飲み会には不参加じゃなかったでしたっけ? 今は就活で忙しいからしばらくはそういうサークル行事には全部参加しないって言ってた気がするんすけど……?」

「あぁ、そのつもりだったんだが……ちょっと良からぬ話を聞いてな」

「え? 良からぬって……一体何の話っすか?」

「それはこの音声データを聞いてもらえればすぐにわかる事だ」


―― ポチッ……


 そう言って桜木先輩はスマホから何かの音声データを再生し始めていった。


『……よし、それじゃあ明日の飲み会は四条姉妹の両隣をすぐに陣取っていって、そのままソフトドリンクだと嘘ついて酒をガンガンと飲ませる作戦でいくか!』

『あぁ、わかった。それじゃあさっさと酔わせたいし度数の高い酒をガンガンと飲ませようぜ! それで四条さん達を上手く酔わせたらそのままホテルに連れ込んでいく感じだよな?』

『はは、そんなの当たり前だろ? ホテルに直行してそのまま酔った四条達の服を脱がせて楽しくヤッていくっていう作戦さ』

『ぷはは、何だよそれ完全に犯罪じゃん。はは、最高の作戦だな!』


「……えっ!?」

「こ、これって……?」


 それは昨日のサークル室で鳴海と話した飲み会についての話だった。いや何でこんなものがデータとしてあるんだ……って、ま、まずいじゃん!! だ、だってこの話って……!


『……あ、そうだ。そういえば鳴海は四条の妹を狙ってんだよな? それじゃあ俺は姉の方を貰っていいのか?』

『あぁ、もちろんさ。あんな可愛くて根の明るいギャルとエッチ出来るなんてマジで最高だよな! 久住の方こそ姉の四条さんの方で大丈夫か?』

『もちろん大丈夫に決まってんだろ。俺は結構Sだからさぁ……ああいう知的でクールっぽい美人を見るとついつい泣かせたくなっちゃうんだよな。だから一晩かけてじっくりと調教していくつもりさ!』


「……えっ、何これ? 四条さん達へのセクハラ発言が酷すぎるわ……最低な事ばかり言ってるじゃない……」

「しかも楽しく笑いながら堂々とこんな酷い話をしてるなんて……もしかして結構ヤバイ人だったのかな……?」

「こんな人がサークルの部長をしてたんだ? あーあ、もっと真面目な人だと思ってたんだけどな……」

「えっ!? い、いや、違くてっ!?」


―― ひそひそ……


 周りの女子達は今流れている音声データを聞きながらひそひそと俺と鳴海の事を話していっていた。俺達は急いで弁明をしようとしたんだけど……でも今流れている音声データにはまだまだ続きが残っていた。


『あはは、相変わらず久住はドエスだなー。そういや前にやった新人OL達との合コンでもクール系の美人OLをお持ち帰りしてたもんな。結局あの美人OLとはどうなったんだ?』

『ん? あぁ、もちろん調教済みだよ。もうあの女の穴という穴を全部ガバガバになるまで調教してやったよ』

『まじか、そりゃあすげぇな。って事は四条さんもお前の手にかかれば一瞬で調教されちまうって事か? はは、あの知的で美人な四条さんがエロく乱れる姿を想像すると何だか滅茶苦茶にエロいよなぁ……あーあ、でもどうせなら俺も四条さんをちょっと味見してみたかったなー』

『いやそれを言うんだったら俺だって妹の方ともヤラせてほしいわー……って、あ、そうだ! それならいっそのことさ……4人で乱パするか?』

『え、マジで? あはは、いいなそれ! 俺も四条さんとヤリたいしちょうどいいなそれ!』


「えっ……な、何よこれ……? ガ、ガバガバ? ちょ、調教? 一体アナタ達は女性の事を何だと思ってるのよ……? 私達女性の事を玩具か何かだと思ってるの……?」

「いやそもそもさ……そういうガバガバになるような行為って向こうの女性と合意の上でやったのかしら? もしそうじゃなかったらこれ……普通に犯罪の証拠になるんじゃないのかしら……?」

「うん、そうだよね。しかもそういうガバガバになるような酷い行為を四条さん達にもお酒で酔わせてヤル気満々だったって事でしょ? これも未遂ではあるけど普通にわいせつ行為で犯罪だよね?」

「う、うん、これも立派な犯罪だよ……そ、それにさ、この音声データの内容的に多分なんだけど……もしかしてこれって四条さん達だけじゃなくて私達の事も襲おうと計画してたんじゃ……」

「「「「えっ……!?」」」」

「は、はぁっ!? い、いや、違くて! そ、その、これは……!」


―― ざわざわ……


 その音声データを聞いた女子達は一斉にざわざわとしだしていった。俺と鳴海はヤバイと焦りながらも必死に弁明をしていこうとしていった。

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