第12話:久々に四条さんと飲み会を開く

 それから数時間後。


「かんぱーい」

「かんぱーい!」


 俺と四条さんは二人で大学近くの居酒屋で乾杯をしていった。俺はいつも通りビールを注文し、四条さんはノンアルコールのカクテルを注文して一緒に飲んでいった。


「んく、んく……ぷはぁ! いやー、やっぱり久々に飲むお酒は美味しいなぁ……!」

「ふふ、それなら誘って良かった。あ、それじゃあ私に気にせず沢城君は沢山お酒飲んじゃっていいからね?」

「いやいや、久々のお酒だし今日はちゃんとセーブするよ。それにお腹も空いちゃったしさ、今日は普通にご飯を食べる感じにしようよ。だから四条さんの食べたい物とか何でも頼んじゃっていいからね?」

「え、本当? ふふ、実は私さ、ちょっとお腹空いてたんだよね。うん、それじゃあせっかくだし今日は沢山食べちゃおっか」

「あはは、良いね! 久々の飲み会だし今日は沢山食べちゃおうよ!」

「うん! わかった!」


 という事で俺と四条さんは食べたい物を色々と頼みつつ、俺はお酒を飲んで四条さんはノンアルコールのドリンクを飲みながら楽しくお喋りをしていった。


◇◇◇◇


 そんな楽しい飲み会が始まってからしばらくして。


「あ、そうだ! そういえば今更なんだけど沢城君に聞きたい事があったんだけどさ……」

「うん? 何々? 何でも聞いてよ!」


 四条さんと楽しくお喋りをしながら過ごしていると、ふと四条さんは神妙な顔をしながら俺に質問があると言ってきた。


 俺は久々のお酒と美味しいご飯のおかげで気分がとても良くなっていたので、俺は笑みを浮かべながら四条さんに何でも聞いてくれと言っていった。


「うん、ありがとう沢城君! それじゃあ早速聞きたいんだけどさ……そういえば沢城君って彼女さんとかはいるの?」

「え? 彼女?」

「うん、そうそう。いや今日は沢城君を突発的に二人きりの飲み会に誘っちゃったでしょ? でももし沢城君に彼女さんが居たら……こんな二人きりで飲み会をしちゃって彼女さんに申し訳ない事しちゃったかもって思ってさ……」

「あぁ、そう言う事かー」


 どうやら四条さんは俺に彼女がいたら、こんな男女二人きりで飲み会をするのは不義理だったかもしれない……と思ってそう尋ねてきたようだ。


(なるほど、それは真面目で心優しい四条さんらしい質問だなー)


 俺はそんな事を思いつつ、四条さんのその質問に対して笑いながら答えていった。


「あはは、そんな全然気にしなくて大丈夫だよ。だって俺には彼女なんていないしね。ってかそもそも今まで生きてきた中で彼女なんて一度も出来た事ないんだけどさ」

「あ、そうなんだ? ふふ、それなら良かったよ。でも沢城君って凄く優しいから……地元では女の子から凄くモテてたんじゃないの?」

「いやいや、全然そんな事ないよー。そもそも俺の住んでた所はかなり人口の少ない田舎だったから、同年代の友達とかもかなり少なかったんだよね。はは、でも俺も高校生の頃に女の子と付き合って色々と青春してみたかったなぁー」

「ふぅん……そっかそっかー……ふふ、なるほどね……」


 そんなわけでずっと田舎に住んでいた俺は今まで彼女を作ったりデートをしたりとかの青春っぽいイベントは一度も発生する事がなかった。


 まぁ人口の少ない田舎だったからしょうがないんだけど、それでもやっぱり俺だって高校時代に一度くらいは学生服を着た彼女と一緒に放課後デートとかしてみたかったなぁ……。


「……あ、そうだ。それじゃあさ、ちなみにもしも沢城君が付き合うとしたらどんな女の子が良いとかってあるかな?」

「え? 付き合うとしたら? うーん、そうだなぁ……やっぱり気の合う女の子がいいかな? お互いの事をちゃんと尊敬しあう事ができて、尚且つ気さくに色々と話が続けられるような子がいいかなー」


 やっぱりどんなに綺麗だったり可愛い女の人でも、お互いにリスペクトし合えない関係だとちょっと辛いよね。だから高飛車な感じだったり、高圧的な態度とか取って来る人はちょっと苦手だな。


「あぁ、うん、なるほどね! すっごく参考になったよ、ありがとう沢城君!」

「え? 参考に? う、うん、それならよかったよ?」


 俺がそんな事を言っていくと何故か四条さんは満足そうな笑みを浮かべてそう言ってきた。


 よくわからないけど……まぁ四条さんが喜んでくれるのならそれでいっか。


「……って、あ、そうだ。そういえば四条さんこそ俺なんかとサシで飲み会なんてしても大丈夫だったの? もし四条さんに彼氏さんとかいるようなら、流石に俺も四条さんの彼氏さんに申し訳ない事をしちゃったなーって思うんだけどさ……」

「え? あぁ、ううん、そんなの気にしないで大丈夫だよ。だって私も彼氏は居ないしね。というか私も沢城君と同じで、今まで生きてきて彼氏なんて一度も出来た事ないからね?」

「えっ!? そ、そうなの!?」


 四条さんがあまりにも衝撃的な事実を教えてくれたので、俺は驚きのあまり大きな声を出していってしまった。


「……ちょっと? どうしてそんなにビックリとした顔をしてるのかな? もしかして私がそんな尻軽な女に見えてたって事なのかなぁ……?」

「え? あ、いや、違うよ……!」


 俺があまりにも大きくビックリとしてしまったせいで、四条さんは頬をプクっと膨らませながらちょっとだけ拗ねたような可愛い仕草をしてきた。


 はは、やっぱり四条さんって物凄く美人なんだけど割と子供っぽくて可愛いらしい所も多いよなぁ……って、そんな事を考えてる場合じゃないよな! 早く弁明をしなきゃだ!


「え、えぇっと、いやその……俺がビックリとした声を出しちゃった理由は……って、あ、あれ?」

「ぐすんぐすん……すっごく悲しいなぁ……入学当初からずっと仲の良い親友に尻軽女だってずっと思われてたなんてさぁ……ぐすんぐすん」

「え……って、えっ!? い、いや、だからそうじゃなくて!」


 急いで弁明をしようと思ったら突然と四条さんは泣き始めていった。いやまぁどう見てもそれは嘘泣きなんだけど、それでもそんな変な誤解をされるのは嫌なので俺は慌てながらすぐに否定していった。


「い、いや、そのさ……! 四条さんって物凄く綺麗だし、普段から結構な頻度で告白とかされてるでしょ? だから普通に今までにお付き合いとかした事あるんだろうなーって何となくそう思ってただけだよ。だから別に尻軽とかそういう事を思ってたわけじゃないって!」

「ふぅーーん……って、うそうそ! 沢城君がそんな酷い事を思ってるわけないって私もちゃんと知ってるよ! でも何だか沢城君の慌てた素振りがすっごく可愛くてちょっとからかっちゃったんだー」

「え? あ、な、何だ……からかってただけか。いやでも本当にビックリしちゃったよ。めっちゃ仲の良い四条さんに嫌われちゃったらどうしよう……って思わず俺も泣きそうになっちゃったもん」

「あはは、大丈夫だよー! だって私は沢城君の事を嫌いになる事なんて絶対にないもの! だからさ……これからもずぅっと……仲良くしましょうね? ふふ……」

「え? う、うん……?」


 俺はホッと安堵しながらそう言っていくと、四条さんも笑みを浮かべながらそんな嬉しい事を言ってきてくれた。でも……。


(……あ、あれ?)


 でも何だろう。その四条さんの笑みはいつもの柔和な笑みとちょっと違ったような気もしたんだけど……う、うーん……まぁ、気のせいかな?

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