第11話:四条さんが飲み会を提案してくる

「ふふ、まぁそんなの別に気にしなくて良いよー……って、あ、そうだっ!」

「え? 今度はどうしたの?」

「うん、あのさ、そういえば沢城君って最近は飲み会とかやってないよね? それなら今日の夕方とかもしも空いてるようだったらさ……良かったら久々に飲みにでも行かない?」

「え、飲み会? あぁ、うん! 確かにここ最近は色々な事がありすぎて全然お酒とか飲めてないから、それはちょっと行きたいかも!」


 四条さんは唐突に飲み会の提案をしてきてくれた。何だかさっきの回答をはぐらかされてしまった気もするけど……まぁそんな事はどうでもいいか。


「ふふ、それなら良かったー! 沢城君はここ最近色々な事があって大変だったと思うしさ、だから今日はお酒を飲んで辛い事なんて忘れちゃいましょうよ!」

「うん、ありがとう、四条さん! そういう事を言ってくれると本当に嬉しいよ! それにお酒を飲むのも好きだから久々に飲み会が出来るのも嬉しいなー」


 実は俺は酒を飲むのはかなり得意な方だったので、皆でワイワイと楽しむ飲み会とかがかなり好きだったんだ。


 でもここ最近は突然とサークルを辞めさせられたり、バイトを沢山やってた事もあって、ここ最近はお酒を飲む機会が全然なかった。


 だから四条さんのその飲み会のお誘いはとても嬉しかった。


「あ、でも四条さんはお酒は全然飲めないでしょ? それなのに飲み会でいいの? 普通に晩御飯を食べに行くとかでもいいよ?」

「ううん、全然大丈夫だよー! だって私は飲み会の雰囲気って凄く好きだし、それにそういう所だと何でも気兼ねなく楽しくお話を出来たりするのも好きなんだよね。だから飲み会で全然大丈夫だよ!」

「あはは、確かに飲み会ってそういう楽しさがあるよね! うん、わかった! それじゃあ今日は久々に飲み会を開こうか!」

「うん! わかった!」


 四条さんがお酒は弱いのは知っているので、俺はそこを心配したんだけど、でも四条さんは笑みを浮かべながら大丈夫だと言ってきてくれた。という事で今日は久々に飲み会を開催する事となった。


「よし、それじゃあ今日の飲み会には他に誰を誘おうか? 俺達の共通の友達で予定なさそうな人に片っ端から声をかけてみようか?」

「え? あー、うん、そうだね……まぁでも今日はちょっと突発的な飲み会だしさ、多分他の皆も予定は既に入っちゃってるんじゃないかな?」

「あ、そっか、確かに今日の夕方なんてもう皆予定があるに決まってるよね。うーん、それじゃあ今から友達を誘っても逆に迷惑になっちゃうかもしれないね……」

「うんうん、きっとそうだよー! だからまぁ今日はこんな突発的な飲み会だしさ……今日はとりあえず私達二人だけで飲まない?」

「うん、そうだね! それじゃあ今日は二人で飲みに行こうか!」

「良かった! ふふ、それじゃあ二人きりで今日は楽しみましょうね……」


 俺がそう言うと四条さんはとても嬉しそうな笑みを浮かべながら返事を返してきてくれた。何だか四条さんが楽しみにしている感じがこっちにも凄く伝わってくるな。


(はは、まぁでも俺も普通に楽しみだしな!)


 だって四条さんとは一年生の頃から仲良くさせて貰っているし、今までに何度も二人でご飯を食べたり、飲みに行ったりとかしているんだ。


 だから今更四条さんと二人きりで飲み会を開いたとしても別に緊張したりとかはないし、純粋に楽しい気持ちで一杯になるよな。まぁでも今みたいに隣にピッタリとくっ付かれたりしたら話は別だけどさ。


「じゃあ飲み会の場所はどこら辺にしようか? まぁでも今日は突発すぎて何にもお店を調べてないし、とりあえずいつも皆で行ってる駅前の大きな飲み屋にしとこうか?」

「うーん、そうねぇ……だけど今日は二人しかいないから大きな飲み屋じゃなくても……って、あ、そうだ! それじゃあ今日は沢城君の家で飲み会をするってのはどうかな?」

「え? 俺の家?」

「うん、そうそう! ほら、そっちの方が好きなお酒を買って好きなだけ楽しめるしコスパ的にも良いでしょ? ふふ、だから今日は沢山……沢城君の家で楽しくお話とかしたいなぁ……」


 四条さんはとても嬉しそうな笑みを浮かべ続けながら、俺に向かってそんな提案をしてきた。


(俺の家で四条さんと二人きりで飲み会か……)


 それは男の俺にとってかなり魅力的な提案だった。


 だって超絶美人な女子が俺の住んでる家に一人でやって来て、そのまま二人きりでお酒を飲もうって提案してきてるんだよ? そんなの男なら誰しもが最高に喜ぶ場面だよな。まぁでも……。


「うーん、それは流石にちょっと駄目かなぁ」

「えっ? ど、どうして?」


 でも俺はその魅力的な提案をやんわりと断っていった。


 すると四条さんはビックリとした表情をしながらすぐに駄目な理由を尋ねてきた。なので俺は四条さんの顔をしっかりと見つめながら続けてこう言っていった。


「それはもちろん……女の子が一人きりで無暗に男の家に上がり込むもんじゃないからだよ。ほら、密室で男女が二人きりだなんてさ、もしかしたら四条さんに危険が生じる可能性だってあり得るでしょ?」

「え、えぇっと……まぁ、それはそうかもだけど、でも沢城君はそんな酷い事とか乱暴な事なんて絶対にしないでしょ? だから私は全然大丈夫だよ??」

「うん、もちろん俺は絶対にしないよ。だけど世の中には二人きりだと変な事をしてくる男の人だっているでしょ? 最近はそういう物騒な事件とかニュースも多いしさ」

「う、うん。まぁそれは確かに……そうかもしれないよね……」

「うん、そうだよね。だからあまり無暗に男の家に一人で訪れるのは良くないっていう意味も込めて、俺は四条さんと二人きりで宅飲みを開くのは駄目だって言ったんだよ。それに俺にとって四条さんはこの大学で一番の親友だからさ……俺はそんな親友の四条さんが傷つく所なんて絶対に見たくないんだからね……」

「あ……沢城君……」


 という事で俺は優しく諭すような感じで四条さんにそう言って注意を促していった。


(あぁ、そういえばちょっと前にも四条さんは休みの日に俺のアパートにやって来た時もあったよなぁ)


 さっきも言ったように四条さんは結構天然さんな所があるので、あの日みたいに俺のアパートに突然一人でやってこようとしたり、今日みたいに身体を近づけてこようとしてくるクセがあるんだ。多分性善説を信じている凄くピュアな女の子なんだろう。


 もちろんそれは四条さんの凄く素敵な部分だというのは俺もわかっているんだけど……でもそういう事をしてるといつか危険な目に合う可能性もあると思ったので、俺はここで改めてしっかりと注意する意味も込めてそう言っていった。


 だって俺は四条さんには絶対に危ない目になんて遭って欲しくないからさ……。


「……ふふ、うん、そうだよね。やっぱり沢城君は誰よりも優しくて……本当に素敵な人なんだよね……」

「え? あ、ごめん、ちょっと声が小さくて聞き取れなかったんだけど……今何て言ったの?」

「あぁ、うん、沢城君の言う事は正しいなって言っただけだよ! ふふ、それじゃあ今日はいつも通り駅前の居酒屋で飲み会を開きましょう!」


 そう言って四条さんは途端に明るい笑みを浮かべてきてくれた。どうやら俺の言葉がしっかりと伝わってくれたようだ。


「うん、わかったよ! それじゃあ待ち合わせ時間はいつくらいにしようか? 俺は何時でも大丈夫だから四条さんの予定に合わせるよ」

「ありがとう、沢城君! それじゃあ私は今日は五限まで講義があるから、それが終わったらすぐにLIMEで連絡するね!」

「了解! それじゃあ今日の四条さんとの飲み会すっごく楽しみにしてるね!」

「うんうん、私もだよー! ふふ、それじゃあ今日は二人で一緒に楽しみましょうね!」


 そう言って俺達は一緒に笑みを浮かべ合いながら今日の飲み会を楽しみにしていった。

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