第2話:大学サークルから追放される

「はぁ、お前さぁ……マジでこのサークルのノリとか全然わかってねぇよな? 何でそんな自信満々に反論してきてんだよ?」


 俺がしっかりと反論をしていくと、久住はため息をつきながらそんな事を言ってきた。


「は、はぁ? いやノリがわかってないってどういう事だよ? そもそも俺はサークルメンバーのために企画したり裏方作業をしたりと色々と――」

「だからそう言う所だよ! 俺達はサークルのメンバーで楽しくワイワイとやりてぇだけなのに、お前はいつも変な企画を持ってきて俺達の邪魔ばっかりしてくるじゃねぇか! お前みたいなノリが全然わかってなくてウザいだけの男はもうこのサークルには要らねえんだよ! なぁ、鳴海もそう思うよな??」


 久住は俺に向かってそう怒鳴り声をあげてきた。そして久住の隣に座っていた鳴海孝樹なるみたかきも続けて声を出してきた。


「あぁ、俺も久住と同じ気持ちだよ。沢城は自分の事がノリが悪くてヤベェヤツだって自覚は無いのかよ?」

「いや、だからどういう意味だよ? ノリが悪いって言われてもわかんねぇよ、もっと具体的に言ってくれって」

「はぁ、お前本気で言ってんのか? 例えばいつもサークルの集まりとか飲み会があってもお前はすぐに皆を家に帰らせようとすんじゃん? 俺達はまだまだ皆飲み足りてねぇってのにさぁ……それなのにお前が勝手にリーダ面して無理矢理メンバーを全員帰らせたりしてんじゃん。あれマジでノリわかってなさすぎてクソだから止めた方が良いぜ?」

「いやいや、流石に夜遅くなってきたら解散の号令を出すのは当たり前だろ? 特に去年からこのサークルは女子の数がだいぶ増えてきたんだぞ? 最近は何かと物騒な事件も多いんだから終電前には絶対に帰らせないとマズいだろ。もしも女子達に何かあったら親御さんに申し訳ねぇしな」


 もちろん久住達がもっと遅くまで飲み会を続けたい言ってくる気持ちも理解出来る。そりゃあこんだけ沢山の女子達とワイワイとお酒を飲みながら話せるなんて楽しいに決まってるもんな。


 でも普通に考えたら深夜過ぎまで女の子達を拘束してしまうのは絶対に良くない事だと思う。だから俺がサークルの集まりや飲み会を企画する時は毎回遅くても夜十時までには解散出来るような計画にいつもしていたんだ。


「はは、お前さぁ……マジで馬鹿なんだな?? サークルメンバーは皆夜遅くまで酒飲んでドンチャン騒ぎしてぇに決まってんだろ! だから早く帰りたいなんて誰も思ってねぇよカス! それなのにお前の意味不明な価値観で全部決めんなよな! ってかお前のそういう自己勝手な所マジでヤベェからな?? 社会に出たらマジで一瞬でクビになるぜ?」

「は、はぁ!? いや別に解散後にも飲み足りない奴がいるんなら各自で二次会とかすれば良いじゃんか。そこからは各自の自己責任で各々楽しんでくれる分には俺だって何も言わねぇよ。俺は全員を深夜まで飲み会に巻き込むのは違うだろっていう話をしてるだけだからな?」

「はぁ!? お前マジで頭湧いてんじゃねぇのか?? サークル内で地位の高い副部長のお前が解散号令を出したら皆それに従って帰るに決まってんだろ! だから本当は皆まだまだ酒を飲みたいのに飲めずにモヤモヤとした気持ちでいつも解散してんだよ! そんな事もわかってねぇのかよ?? お前マジで頭悪いんだな!!」


 俺がそう言っていくと久住達はすぐさまそんな反論をしてきた。でもその久住の口ぶりだとまるで……。


「な、何だよそれ? その言い方だとまるで……サークルメンバーの皆から聞いてみたような口ぶりじゃんか?」

「はっ、そうに決まってんだろ! 飲み会の終わり際に四条さんとか他の女子達をいつも二次会に誘っても〝沢城君が解散って言うからこのまま帰る”って物凄く悲しそうな顔しながら毎回帰ってくんだぜ? 他のメンバーも皆モヤモヤとした気持ちを抱えながらも副部長が帰れって命令するからそれに無理矢理従ってんだよ!!」

「えっ!? あ、あの四条さんが!? いや、でもあの人はいつも楽しそうな顔をしてるけどなぁ……」

「そりゃあお前が見てる所では皆ニコニコするに決まってんだろ! 馬鹿かお前は? お前がいない所でサークルメンバーの皆はお前に対して滅茶苦茶にブチギレてんだよ!!」

「あぁ、だから今のサークルの空気はお前のせいでかなり悪くなってるからな? それに毎回勝手な判断をして場を混乱させる副部長がいるせいでこのサークルに入ったのに全然楽しくないっていうクレームもめっちゃ入ってきてるんだぞ。お前この責任をどう取るつもりだよ?」

「え……って、えっ!? そ、そんなクレームが入ってきてるのかよ……」


 流石にサークルメンバーからそんなクレームが入ってるなんて想像もしていなかったので、俺はその言葉を聞いて気分が一気に落ち込んでいった。


「ぷはは、何ショック受けてんだよ? ノリも悪くてウザいんだからサークルメンバーから嫌われるなんて当たり前の事だろうがよ!」

「あはは、本当にそうだよな? むしろサークルメンバーから嫌われてないと思ってたとか、沢城はどんだけ鈍感なんだよ。アホ過ぎて笑うわ」

「……」

「はは、まぁそんなわけでさぁ、サークルメンバーの皆のためにもさっさとサークルを辞めてくれよ? ってかこんだけサークルの空気を滅茶苦茶に悪くしたんだから、責任を取ってスパっと辞めるのがスジってもんだろ? なぁ、鳴海もそう思うよな?」

「あぁ、そうだな。俺も久住の意見に賛成だな。これだけサークルを滅茶苦茶にしたんだからさっさと辞めて俺達の前からいなくなってくれよ。なぁ?」


 久住と鳴海はあははと嘲笑しながら俺にそう言ってきた。


 俺はサークルメンバーからそこまで嫌われてたなんて知らなかったので、しばらくの間ショックで動けなくなってしまっていたんだけど、でもそこまで皆から嫌われているというのなら……。


「……あぁ、わかったよ。皆からそこまで嫌われてたなんて知らなかったけど、でもそれがサークルメンバーの総意だっていうんなら……わかったよ、辞めるよ。辞めればいいんだろ」


 俺は悲しい気持ちを押し殺しながらも久住達にサークルを辞めると伝えていった。


 すると久住達はその言葉を聞いて一瞬にしてぱぁっと満面の笑みを見せながら俺に向かってこう言ってきた。


「あはは、それなら良かった!! いやー、沢城ならサークルのためにそう言ってくれると信じてたぜ! よし、それじゃあ達者でな、沢城!」

「あぁ、よくぞ決断してくれた! それでこそ沢城だ! それじゃあな! あ、もう二度とこのサークル室に来んじゃねぇぞー? ぷははっ!!」

「……あぁ、それじゃあな」


 という事で俺は大学一年の頃からずっと入っていたこのサークルから本日を持って辞める事となった。

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