訪問販売
天川裕司
訪問販売
タイトル:訪問販売
俺は都内のアパートに住む独身サラリーマン。
ある日、訪問販売の女がやってきた。
「結構です、宝石なんて俺買いませんから」
女「まぁまぁそう言わずに」
かなりしつこい。
これが強引な勧誘商法かなんて思っていたら、
だんだんその方向性が変わってきた。
女「ところであの絵、きれいですね。もしかして昔の彼女さんにもらったとか?」
「は?」
いきなり壁の方を見てそう言ってきたのだ。
確かにそこには俺が昔、絵の勉強をしていた
彼女からもらった1枚の絵が飾ってある。
訪問販売に来たのに妙なことを言うなぁ…
なんて思っていると、
女性は次々に部屋の中のものを見始めて、
同じようなことを言ってくるのだ。
女「あのタペストリーももしかして彼女から?」
女「あなたが今つけてる腕時計、かっこいいですね。それも彼女さんからかな?」
女「あ、そのワイシャツ。流行のロゴが入ったものですよね。それも彼女さんからもらった?」
次々、聞いてくる彼女。
でもそれがことごとく当たっていた。
彼女と俺は昔に別れていて、理由は俺の浮気。
でも正直、当時から彼女には少し付いていけないところがあって、
あまりにワガママだったのもあり、
そのうち別れを切り出そうとしていたそんな矢先の事。
「あの、もういいですから帰ってもらえませんか?」
あまりしつこいと警察呼びますよ?
なんてことを俺は言って、彼女を追い出そうとした。
でもそれから毎日のように彼女は俺のアパートにやってくる。
妙な下心さえ生まれそうだったが、その下心は一気に吹き飛ぶ。
女「昔に彼女さんからもらったもの、今でもずっと忘れられないで持ってるんですね?…だったらさぁ、その彼女さんもこの部屋の思い出にしてみない?」
そう言って薄気味悪く笑い始め、
俺が見ている目の前で彼女がふっとその姿を消したのだ。
「え……?」
幽霊を見ちまった…?
その恐怖が怒涛のようにやってきた時、
俺はすぐ引っ越そうと心に決めた。
途中からなんとなく感じていたことだが、
訪問販売に来ていたあの女、あいつはもしかすると
整形でもした俺の元彼女・百合絵だったんじゃないか…?
そう確信するところがあったから。
でもアパートを引っ越してから、やっぱり妙な事はその後も続いた。
捨てたはずの絵やタペストリーが
いつの間にか壁に戻って飾られてある。
腕時計も処分したのに
いつの間にか枕元に置かれてあった。
ワイシャツも処分したのに
いつの間にかクローゼットにかけられてある。
そしていつなんどきでも、
あいつがそばに居るような気がしてならないのだ。
「…ったく、こういうところだったんだよなぁついて行けないとこ…」
時々俺が1人でそうつぶやくと…
「そんなこと言わないでよ…」
と、どこかから声が聞こえる気がする。
こんな一人芝居のような会話が
最近ずっと続いてるんだ。
ある日、同級生だった友達に聞くと、
百合絵は数年前から行方不明になっていたとのこと。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=ZcB9UVQu1U0
訪問販売 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます