〔第1章:第4節|絲色宴〕
光の柱が消えた途端、見えたのはビルだった。
と言っても外ではなく、無数に広がる窓越しに、だ。
何階にいるのかは知らないけど、ガラス張りの巨大な窓を前に、広いホールの真ん中に立っていた。見えている外は晴れ渡っており、ビル群と道路、少し変わった形の、おそらく車らしき物が、奥に見えている。
車……口の中に、嫌な味が広がった。煙臭さとか、鉄の焼ける臭いとか……。窓の外から、窓の中へと視線を戻す。
清潔感のある、白と灰の内装。天井がかなり高く、数階分吹き抜けている。足元から広がっていくのは、一メートル程度で無数に敷き詰められた、六角形型のタイル。
近くのタイルから光の柱が立ち上り、知らない顔の人が現れた。さらに奥や、左側からも。
光の柱が上がる度、誰かが姿を現す。その殆どが、僕と同じような白い服を着ていた。
全員日本人顔で、僕と同じく軽い困惑を浮かべている。
人が沢山いる。
死人が。
新たな人生を始める者たちが。
——ここが、『天界』——。
「絲色くん!」
背後からの声に振り返ると、くるみ先生と墓終結空がいた。タイル群の外側に点在していた、背もたれのないデカい正方形型のベンチに座っていた。たぶんベンチだ。一瞬足を止めた僕は、たぶん大丈夫と、光っていない正六角形のタイル群を横切る。
「良かった〜。……いや実際、誰も一緒じゃなかったらどうしようかと……。結空ちゃんと二人が嫌ってわけじゃないんだけどね」
どうやら先生も、天使から「誰か欠けるかもしれない」と脅されたらしい。
「眼鏡が無いと違和感」
「そういう墓終も、その髪型は違和感」
そう笑って見せると、左側だけ長い髪を振り払うような仕草をした墓終は、僕の左肩に拳を一発。軽い感触。薄く心地良い。そして、どこか安心そうだった。
「薇さんは?」
「字名ちゃんは……まだ。悪魔……半魔? だから、時間が掛かるのかな?」
出てこない、とかは、できればよしてほしい。
「天使と色々話をしたけど、スムーズに出てきた僕らの方が異例なのかも」
「あたしらが『おかしい』って?」
「ものの例え、だよ。——『ものの例え』、の使い方合ってます?」
先生を見ると、先生は頬を掻いた。
「……私、国語の先生じゃないからな……」
なんの先生だっけ? 訊くのを忘れていたような——
「来た」
墓終が顎で示す先に、怯えた肩の少女が現れた。……悪魔——
「字名ちゃん!」
ホールの中は行き交う人々が多くも、薇字名はすぐにこっちを見つけると、小走りで合流した。
「あっ……ご、ごめんなさい。遅れました……」
「僕も今来たところだよ」
ガヤガヤとする中、四人で向かい合う。
「で、どうすんの?」
墓終は腕を組む。僕もわざとらしく腕を組む。
「……なに?」
「久方振りに、腕を組んでみたところだよ」
見下ろすと、自分の左腕がある。何年振りか……。
「
僕は笑顔で、降参するよう腕を解いた。
「でも、本当にどうしようか?」
先生が辺りをキョロキョロ見渡す。
「あ、あの……」
薇さんが控えめに手を挙げる。
「あっ……あっち、かと……」
指差したのは、窓とは逆側。
さっきまでいた待合室が、いくつも並んだような受付。人の流れはまばらだが、そっちへと流れている者たちが多い。大半は一人で不安そうにしており、二、三人のグループもいたが、四人でというのは、
「ホントに役所みたいだね」
横いっぱいに並ぶ十数個あろう受付の上には、「転移後はこちらへ」と大きな看板文字が掲げられていた。日本語だ。
「……案内と手続きが多過ぎ」
墓終は嘆いた。僕も同感だ。
「人間が死ぬって、そういう事なのかもね」
静かに先生が言う。
人々が行き交うその光景は、まさしく『人間世界』みたいだった。
「四名様ですね。どうぞ」
カウンター越しに、座って向かい合う天使と人間たち。出入りは激しく、並んでいる者はいなかった。僕らは空いている受付のうち、こちら側に椅子が四つある一画に入った。
対面する天使は、編んだ黒髪を両脇に垂らし、笑顔で僕らを出迎えた。
意図してかそういう種族であるのか、顔が日本人っぽい感じだ。
前に二つ、後ろに二つ並んだ椅子。先生を前へ促す。隣は墓終にと思ったが、
「いい。あんたが座って」
と、僕が左前に。先生の後ろに墓終、隣には薇さんが座った。
「皆さまは、転移したて、という事でよろしいでしょうか?」
「はい」
先生が代表で答えると、天使はゆっくりと、白い瞳を一度閉じた。
背筋を伸ばし、羽を畳んで座っているその脇から、四枚の巻物が現れた。天使との間でその紙は開かれると、白い羽ペンが四本飛んできて、茶色く粗い作りの紙の前に、それぞれ構えられた。
「天国へようこそ。まずは、戸籍の本登録を行います。順番にお一人ずつ、名前を仰ってください」
絲色宴。
墓終結空。
薇字名。
琴石九留見。
——「あ、あと……」
薇さんが控えめな声で、
「ク、クージレイン……ヴァリス……イ、イデアルタ……」
「なに?」
墓終が怪訝そうに薇さんを見る。怯えを露わに、薇さんは歯をカチカチ鳴らせた。
「あっ……あの……わ、私の、中の……あ、悪魔の、名前……だ、そうです……」
「そう。……なんか、ごめん」
——クージレイン・ヴァリス・イデアルタ。
凄い名前だ。どれが名前だ?
「人間が三人。人類と悪魔の混在種である半魔が一人。で、よろしかったですか?」
「はい」——先生。「カッコいい名前だね」——薇さんを向いて、耳打ちする。
羽ペンが踊るように動き、紙に何かの文字が書かれた。たぶん名前が書かれたのだろうが、僕らが読める言語(日本語や英語)ではなかった。
「では、本戸籍の登録を完了致しましたので、以降の手続きに参ります」
紙はひとりでに巻いて閉じられると、天使の背後へと飛んでいった。
天使が左手を出し、指を流れるように閉じると、雲のような煙が「ボンッ!」と小さく現れて、シンプルな時計が出てきた。金属っぽい細い線の針と、同じ材質で描かれた数字が、円形に並んだだけの物が、天使の顔の横に浮いている。現在の時刻は、十九時半くらい。さっき見た時、外はそこそこ明るかった気もするが、チラッと背後を振り返ると、窓の外はもう暮れていた。
そういえば、『人間世界』では夏真っ只中だった。この世界にも四季とかあるんだろうか。
「天国とは、生前に叶わなかった願いや、これから抱くあらゆる願望を叶える事のできる場所です。この世界にも、生命エネルギーの循環——所謂『死』という現象は存在しますが、寿命という概念はございません。そちらの男性——」
天使が僕の事を指す。
「のように、生前の致命的な負傷や欠損、身体概念の時間的劣化さえも、この世界では、ほぼ永久的に回復可能であり、手順通りの申請をすれば、老いた年齢に至っても、その時点での身体劣化の停止や、本人の身体年齢の
僕は左腕を見る。
生前失った腕と、それを見る事のできなかった肉眼。どちらも今は、正常に機能している。回復力というより、トカゲの尻尾のような、再生能力に近い体感だ。
「くらげみたいに、永遠の命って事? 詳しくないけど、なんか習ったんだよね。……細胞が新しくなって……みたいな?」
先生が訊き返すと、天使は少しだけ宙を見た。
「少し違います。厳密には、身体概念の時間を書き換える、というものになります。ですが『老いる』という現象と『死ぬ』という概念は、生命らしい活動を行う上で、重要かつ必要な構成要素となりますので、場合によっては果てしなく、最大数万年間生きる方もいらっしゃいます。故に、余生の
「じゃあ、この世界じゃ死ぬ事もあるの?」
墓終に頷く天使。
「多少の病気や怪我に関しては、病院に行くなり治療を行うなりで対処できますが、人為的だったり物理的だったりするような、私たち天使の干渉しない部分につきましては、基本的には
「あんた、知ってた?」
墓終は僕に訊く。何気無く訊いたつもりだったのだろうけど、僕は……僕は、あの白い世界に行く前を思い出す。
——死んでから目が覚めて。
——腕も視力も失ったまま。
——闇の中で這うだけの時。
——暗闇に響く、厳格な誰かの声。
『——生前によるその
「——絲色?」
眉をひそめた墓終に、僕はゆっくりと口を開く。
「……体の、異常的なものは持ち込めないと聞いた。魂とか、生命概念とかの事を考えると、たぶん、そういう意味だと思う。——生前の『異常』は『天界』には持ち込めない」
「『天界』に生前の『異常』は持ち込めない? DNA異常、的な事とかかな?」
先生がそう言うと、
「概ね、その通りです。全ての後遺症や老いなどは、『天界』に転移する前に全て、浄化されています。矯正視力ではなかった皆様も、一定まで視力が戻っているはずです」
天使は特に、僕に向かって笑いかけているように見えた。
「『天界』には、天国と地獄があります。そしてどちらも、
そして——と。
「天国において私たち天使の干渉は、『天界』や『地獄』に直接的な影響をもたらす事象にのみ、となっております。各々の一生に関しては、私たちは最低限のみの支援となり、その自由と可能性と責任こそが、『生命概念』というものだとお考えください」
「怪我して傷付く事も、死ぬ事も、自由と可能性の責任って事?」
墓終が訊くと、天使は頷いた。
「その通りです。人格の個体差は広く、死でさえも快楽にする者や、傷付いた者を治す事だけに、生き甲斐を感じる者もいますので」
仕切り直しみたく、天使は笑顔を深める。
「転移の作用で多少頭が冴え渡っているとはいえ、突然の情報量が多く、不安でしたり、お疲れであったりすると思われます。以降の動向に関しましては『天界』の概要を知ってから決めるとし、本日は宿泊する場所だけの決定、という事でよろしかったですか?」
僕らは顔を見合わせて、各々「どうせわかんない」という顔で、先生に一任する。
「お願いします」
「では、本日の宿泊所ですが——もし、『人間世界』で先に逝去されたお知り合いとの再会を望まれる場合は、相互の情報交流が承認されている場合は連絡を取る事が可能です。ご所望の方はいらっしゃいますか?」
…………。
「それは……あたしらより先に死んだ人と、互いに連絡が取れるって事?」
「はい。死に別れた両親や恋人との再会や、死後を共にしようと約束を交わした間柄の者など、互いの情報交流に承認があれば、最速で本日中にご対面が可能となります。時間的にはギリギリですが、この近場に居住している相手なら、手続きさえすれば、本日その方のもとで宿泊する事も可能です」
「……僕らが死んだ事が、誰かに知られてるのか?」
個人情報の秘匿性とかは……?
「来界したてでの手続き上では、知られる事はありません。その辺りは明日以降、個人別で詳細な設定を選択可能です。本日可能なのは、必要最低限のみの連絡と、近距離範囲内での接触に限られます。具体的には、半径一キロメートル圏内のみ、です」
そんな心配は必要ないらしい。
「それじゃあ……誰か、知り合いがいる人——その人のとこに行きたい人、いる?」
遠慮がちに——というか、露骨に寂しげに訊く先生。僕らは互いを見て、肩をすくめて首を横に振る。先生が短く、安堵の息を吐いた。
「では、このビルの上階が宿泊施設となっておりますので、本日から以降未定で、上階に住む、という事でよろしいですか?」
「それでお願いします」
「——お二方はご親戚のようですが、他の血統関係者の情報は、ご覧になられなくてよろしかったですか?」
と。
天使は言った——僕に向かって。
…………ん?
「……はっ? えっ? ……誰と誰が、親戚ですって?」
上擦った声で僕が聞き返すと、
「あなたです、絲色宴さん。——そして、薇字名さん」
僕は後ろを向き、驚いている顔と見つめ合う。
「お二方は、百以内の血統に繋がりがございます」
「……えっ?」
あまりにも予想外過ぎて、なんか……言葉がうまく出てこない。
——僕らが、親戚……?
僕が、薇字名と……?
「えっ? あっ……えっ?」
前髪の隙間から、瞬きをする薇さん。僕と一緒に、ゆっくりと首を傾げた。
「……知ってた?」
薇さんは震えるように、首を横に振った。
「だよ、ね……」
ん〜? どうしよう……
別に、嫌なわけじゃない。
でも……なんか……どうしようか。
……どうもしなくていっか。
今はいい。
今は……いいか。
僕は天使に向き直る。
「え〜っと……じゃあ……親戚とかへの連絡は、無しで」
勝手に決めてしまったが、まあ、しばらくはこれで良いだろう。天使はニッコリと微笑む。——まるで、「
なんにしても、先生と墓終と別行動する意味は無い。
「かしこまりました。部屋の様式はどうされますか? 四人部屋という選択肢もございますが、一人部屋四つで良かったでしょうか?」
僕は気にしなかった(寧ろ歓迎。やったね、ハーレムだ!)けど、成り行きで集まった四人のうち、三人は異性だ。プライバシーは必要だろうし、それぞれ思うところもあるだろう。
気を遣って先に言う事に。
「一人部屋が四つで、お願いします」
「でも、近くがいいです。隣とかまたその隣とか」
先生が慌てたように付け足す。
「では——」
天使は僕らに、「8001」から「8004」の部屋を割り当てた。
「八十階もあるの?」
驚く先生に。
「もっとございます」
天使は人差し指で上を指して言った。
「この建物は街を一望し、上の部分は街からも見えるほどです」
「鍵は生体認証になります。それぞれ最初に手を触れたドアノブが、自室だとお考えください。本日必要がありそうな物は、それぞれ自室にあるかと思われます。部屋にある物は好きにお使いください。また、『天界』に関する基礎情報や現在情報の媒体もありますので、精神的に余裕のある方はご覧になられても良いかもしれません。フロア内の移動に制限はありませんが、互いに認知しておらず、歓迎のない部屋への入出はできません。食事等も、本日は自室にある物をご活用ください」
天使との対面受付が終わり、僕らは案内されたエレベーターに乗っていた。
ガラス張りの窓。下半分は半透明で、上半分からは、下に遠ざかる受付が見える。
「みんな、ありがとね」
ノイズ程度の駆動音だけの中、先生が笑った。
「一緒にいてくれて」
礼に値するほどの事なのか——正直、よくわからない。
「……今だけかもしれませんよ」
僕は冗談めかして言う。
「明日にはバイバイ、かも?」
あえてのニヤケ笑いに、先生の顔から赤みが消えた。
「それは……そうかも?」
冗談だと気付いている墓終が、小さく咳払い。
「細かい事は明日考えれば? 案外、先生からバイバイって事もあるでしょ?」
「それも……そうかも?」
「後は野となれ、山となれってね」
先生を見ると、にっこり笑った。——使い方、合ってるって事か?
ふと思い立って、薇さんに向く。
「思い出したとかで良いんだけどさ。——親戚って、聞いた事あった? なんか……同じ歳くらいの男がいた、とか」
「い、いえ……」
僕ら二人を見た先生が少し笑った。
「遠いのかも。私から見ると……顔はあんまり似てないし」
「
あんたの所為でよ——とでも言いたげに、墓終は言い捨てた。
「明日になったら、ちょっと調べてみても良い? どのくらい遠いのか」
「あっ……は、はい。……どうぞ……」
「いや、あんたも調べるんでしょ」
「えっ!?」
「いや、それは別に……必要になったら、お願いしても良い?」
「は、はい……」
「ちょっと面白そうだね」
チン。
着いたようだ。エレベーターのドアが開く。
ぞろぞろと出ると、本当にホテルのようだった。
広いマット生地の廊下と、両側に一定間隔で拵えられているドア。部屋番号も書かれている。
「なんか……高級っぽくない? これ、ホントにタダで良いの?」
先生が言うのは尤もで、廊下は綺麗なマット生地で、先が一点に見えるほど長く続いていた。
「『8001』から『8004』だったよね。近くにないかな」
エレベーター前に置かれていた案内板。先生は部屋を指で辿り探す。
「……右奥だって」
「『1』から『4』が、なんで奥にあんのよ」
「ええとさ……生前の常識が通じない事には、慣れた方が良いかもね」
「……嘘でしょ。めっちゃ豪華だよ」
僕らは全員で目を丸くする。
『8004』の部屋。
まずは見てみよう、と。全員で一つの部屋に入る事にして、先生が代表してドアノブを開けた。『人間世界』でよく見るようなアパートやマンションよりも、ひと回りほど大きかったドアを。
その先——中は、もっと広い。
白を基調とした玄関。日本式なのか天国全体がそうなのか、玄関の靴置き場はきちんと段差になっており、踵まで覆う簡易スリッパが二つ置いてあった。
流石に、ドアの外——フロア全体の廊下よりは狭くとも、それなりに広い廊下が続き、風呂やトイレがありそうなドアの間を進み、突き当たりがリビングだった。
ドアを開けると、電気が点いた。
何畳——という古い数え方が、僕自身よくわかっていない。だけどたぶん、畳が十枚なんてものじゃない。『人間世界』のお金持ちとか、タワーマンションとかにありそうな、ひと家族の生活圏内。部屋の中央にはローテーブルを囲んだソファがある。上にも広く、左の壁際には上への階段も見える上、正面には大きな窓が。
「……無償ってホントに? 他の部屋は違って、ここだけ豪華ってわけじゃないよね?」
家賃相場なんて気にした事はなかったけど、一介の学生に割り当てるにしては、この部屋はあまりにも甘美だった。
壁に掛かっている大きな画面。コの字型のソファには、二つも三つもクッションが置かれ、壁際の本棚には詰まるほど本が入っている。文庫本から大判の本、雑誌と……見た事ないような、たぶん本、って言えるかも? みたいな物。入ってすぐの左にはキッチン。階段下ちょうどに合わせて作られており、レンジのようなものやら、幾つかのフライパンが掛けられている。デカい冷蔵庫らしきのが二つも。
ここで四人で過ごせと言われても、充分やっていけそうな部屋だ。
あちこち、物色してみようか。……待った。先生の部屋だった。
「すっごい……」
部屋の主は、窓から見える夜景に感嘆を漏らす。
「……逆に、落ち着かないかも……」
墓終は戸惑っているようだ。薇さんも緊張しながらゆっくりと歩き、キョロキョロあちこちを見渡している。
「じゃあ……今日は解散?」
悩ましい微妙な顔で、墓終は言った。
「えぇ〜……もう少し一緒にいない?」
先生は拗ねたように、焦りを隠し切れずに言った。
「あたし疲れたから、早く寝たいんですけど」
ため息混じりの墓終。薇さんはなんとも言えぬ顔で。
「じゃ、今日は解散して、明日の……十時くらいに、それぞれ部屋の前でどうです?」
僕は提案する。
この部屋を出て右へ進むと、『8003』、『8002』、『8001』となっていたはず。
「部屋番だけ決めて、あとは休憩って事で」
渋々頷く三人。墓終と薇さんを見て訊く。
「どの部屋が良いとかある?」
「テキトーで良い」
「と、特には……」
「じゃあ——」
天国初日。
みんな、一人の時間が必要だ。
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