第47話 ロイヤル・サブリン級戦艦たちの最期
ー 戦艦『伊勢』艦橋内 ー
ロイヤル・サブリン級戦艦『ロイヤル・オーク』1隻相手に『伊勢』と『日向』の2隻で砲撃を続けていた宇垣たちは、『ロイヤル・オーク』の後方で発生した相次ぐ爆発音が聞こえたことで、宇垣たちは後方に視線を向けた。
そこで宇垣たちが目にしたのは、木村が率いる『最上』と『熊野』が射出した酸素魚雷が『ロイヤル・サブリン』と『レゾリューション』に次々と命中したことで、2隻が爆発を繰り返しながら沈んでいく光景だった。
『最上』と『熊野』が射出した酸素魚雷は、2隻の弾薬庫辺りに複数命中したことで2隻が爆発を繰り返しながら沈んでいく結果に繋がっていた。
『ロイヤル・サブリン』と『レゾリューション』を撃沈した木村たちは、発光信号で宇垣たちに『第二戦隊ノ救援二向カウ』を伝えて『長門』と『陸奥』の救援に向かっていった。
ー 戦艦『ロイヤル・オーク』艦橋内 ー
宇垣たちとは違って『ロイヤル・オーク』の艦橋内は、重苦しい雰囲気に包まれていた・・・・。
自分たちだけでイセタイプ2隻を牽制する中で、他のロイヤル・サブリン級戦艦3隻が加勢してくれたら、反撃から勝利に向かうと信じていた。
だが、たった今、『ロイヤル・サブリン』、『リヴェンジ』、『レゾリューション』の3隻が撃沈してしまった。
更に、火力を分散させてしまうがイセタイプ2隻を相手に牽制するため、前部の主砲2基で前にいるイセタイプを、そして後部の主砲2基で後のイセタイプを相手に分散砲撃を続けていた。
結果、前方のイセタイプは中央部に命中して火災による黒煙が発生していた。
また、後方のイセタイプは最初の命中弾も含めて中央部や後部に数発が命中していて、前方のイセタイプより黒煙が舞い上がっていた。
だけど、『ロイヤル・オーク』も無傷とは言えなかった。
2隻のイセタイプによる砲撃で、『ロイヤル・オーク』も火災による黒煙が発生しているだけでなく、4基の主砲の内後部の2基が使用不能になり、大量の海水が流入し続けていた結果、速力が14ノットしか出せなくなっている。
今や『ロイヤル・オーク』は、満身創痍の状態となっていた。
だけど、トンプソン艦長は退くつもりは無かった。
満身創痍の状態でも、『ロイヤル・オーク』の使える主砲で『伊勢』と『日向』相手に戦い続けていた。
ー 戦艦『伊勢』艦橋内 ー
なおも戦い続ける『ロイヤル・オーク』の姿を見た宇垣は命じた。
「彼等に止めを刺そう・・・・。次の砲撃で決めるんだ。」
「宇垣さん・・・・。」
「我々に大和魂があるように、彼等イギリス人にはジョンブル魂(逆境に打ち克つ不屈の精神)がある。かつて、七つの海を支配して大英帝国を築いた彼等の誇りを、これ以上汚してはならない。」
宇垣の言葉を聞いた武田たちも、異論は無かった・・・・。
そして、『伊勢』と『日向』は使用出来る全砲門を『ロイヤル・オーク』に向けて、一斉に火が噴いた。
直後に、『ロイヤル・オーク』の艦橋付近や損害が大きい船体後部に次々と直撃弾として命中し、船体後部で爆発が相次いで発生していく中、30分後には船体後部からマレー沖の海中に沈んでいった・・・・。
最後のロイヤル・サブリン級戦艦『ロイヤル・オーク』の最後を見届けた宇垣たちは『ロイヤル・オーク』が沈んだ海域に暫し敬礼した。
ー 戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』艦橋内 ー
戦艦『アンソン』と共に戦艦『土佐』に砲撃を続けていたフィリップス長官の元に、ロイヤル・サブリン級戦艦4隻が、イセタイプ2隻と6隻の巡洋戦隊による砲雷撃により撃沈されたとの報せが届いた。
これにより日本側は、
戦艦5隻、巡洋艦6隻、駆逐艦9隻に対して
イギリス側は
戦艦4隻、巡洋艦3隻、駆逐艦5隻と一気に形勢が悪くなっていた。
(一部の戦力に攻撃を集中すべきだったか・・・・。)
内心でフィリップス長官は、自分の戦術ミスを悔やんだ。
ー 戦艦『長門』艦橋内 ー
そんなフィリップス長官に更なるダメージを与えるために、矢野が松田に意見具申した。
「松田さん、例の砲弾を使いましょう。その砲弾でブルックリン級巡洋艦3隻を叩きましょうっ!!」
「例の砲弾とは、九一式徹甲弾かっ!?ならば、『長門』と『陸奥』に九一式徹甲弾を装填しろっ!!」
松田の指示を受け、矢野達は準備を始めた。
『九一式徹甲弾』は、所謂、水中弾で、目標の手前に落下した平らな弾頭部を持つ砲弾が水中を進む際に、ある程度の距離を安定した弾道で水平に直進することを指す。これにより、艦船の水中防御部に命中する効果が高い。
この原理は、高速の砲弾が水中を進む際に平らな弾頭部周辺から気泡が発生し、それが弾体を包み込んで水の抵抗を下げ、弾道を安定させることにある(スーパーキャビテーション)。
日本海軍はワシントン海軍軍縮条約により破棄されることになった未成戦艦『土佐』を用いた射撃試験、同じく除籍となった戦艦『安芸』を標的とした射撃訓練を行い、有効性が証明された。
特に、当時の『土佐』は完成していたら長門型戦艦を上回る戦艦になる筈だった事から、その威力は折り紙付きであった。
今回の艦隊戦で初めて、松田たちは初めて、九一式徹甲弾を使用する事にした。
間もなくして、『長門』と『陸奥』は九一式徹甲弾の装填を完了した。
矢野達から、装填完了を聞いた松田は、命じた。
「両艦、目標のブルックリン級巡洋艦3隻に向けて、一斉に砲撃開始だっ!!」
直後に、『長門』と『陸奥』の主砲から九一式徹甲弾16発がブルックリン級巡洋艦3隻に向けて放たれた。
九一式徹甲弾は、ブルックリン級巡洋艦3隻の手前で海中に撃ち込まれた。
『ブルックリン』の艦長は、砲撃が失敗したと思い安堵した。
だが、直後に破局は突然訪れた。
ブルックリン級巡洋艦3隻の手前の海中に撃ち込まれた九一式徹甲弾は、本来の性能を発揮してブルックリン級巡洋艦3隻の海面下の水中防御部の船体側面に次々と撃ち込まれていった。
直後、ブルックリン級軽巡洋艦『ブルックリン』、『サバンナ』、『ナッシュビル』の3隻は、九一式徹甲弾が撃ち込まれた側から一気に転覆した直後、弾薬庫の誘爆を引き起こしながらマレー沖の海中に沈んでいった。
『ブルックリン』、『サバンナ』、『ナッシュビル』の3隻を撃沈した『長門』と『陸奥』では、乗組員たちの間で歓喜の声が湧き上がっていた。
松田に至っては、周りを気にせずガッツポーズをしたくらいである。
イギリス東洋艦隊の戦力が次々と削られていく中で、マレー沖での日本艦隊とイギリス艦隊よる艦隊戦は終局に向かいつつあった・・・・。
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4隻のロイヤル・サブリン級戦艦を撃沈することに成功した日本艦隊。
戦力が削られていく中、フィリップス長官が率いるイギリス東洋艦隊はどこまて戦い続けるのか・・・・。
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