第15話 第二航空戦隊の奮戦
ー第二航空戦隊 旗艦 空母『蒼龍』艦橋内 ー
第一航空戦隊の空母『赤城』と空母『加賀』が大破し炎上している光景。
その光景に山口や柳本たちは、暫し絶句していた。
そんな中で、すぐに立ち直った山口が口を開いた。
「・・・・、いつまでも呆然としている訳にはいかない。稼働出来る零戦隊は、準備が出来次第、発艦させよう!!」
山口の言葉を聞かされて、幕僚たちも動き出した。
アメリカ側が送り込んだ航空隊約100機は、零戦隊、九九式艦爆隊、九七式艦攻隊の奮戦により今では約40機くらいに激減していた。
だが、それでもアメリカ側の攻撃は続いていた。
しかも、アメリカ側の攻撃目標は空母に絞られていて、決死の攻撃は終わる気配は無かった。
(残りの攻撃を凌ぐことが出来れば・・・・。)
山口が内心で思っていると、見張りから報せがきた。
「戦闘機隊に護衛されたB-17数機が、こちらに接近していますっ!!」
その報せに、『蒼龍』の艦橋内に緊張が走った・・・・。
見張り兵の言う通り、P-40ウォーホーク戦闘機隊に護衛されたB-17数機が、高度を下げながら『飛龍』と『蒼龍』に向かっていた。
「アカギとカガの後方に中型空母が2隻いるぞっ!!」
「この2隻を叩けば、ジャップの空母は全滅だなっ!!」
「ここは俺たちウォーホーク隊が守る。ジャップの空母に止めを刺せっ!!」
ウォーホーク隊に護衛されながら、B-17数機が高度を下げながら爆撃体制に入り始めた。
爆撃方法は従来の水平爆撃だが、高度を通常よりも下げれば命中率が高くなる。
彼等もまた、決死の覚悟だった。
もちろん、山口たちも零戦隊、九九式艦爆隊、九七式艦攻隊で阻止しようとしていたが、アメリカの航空隊もウォーホーク隊もB-17隊を必死に護衛していた為に撃墜どころか被弾させることも出来なかった・・・・。
やがて、『飛龍』と『蒼龍』の上空に到達したB-17隊は爆撃を開始した。
次々と投下されてくる爆弾の数々を『飛龍』と『蒼龍』は必死の回避行動で直撃を避けようと奮戦していた。
そのお陰で、『飛龍』は後部飛行甲板の一部が破壊され『蒼龍』は数発の至近弾を受けたが、どちらも致命的な損害にはならなかったし発着艦能力に支障は無かった。
「なんとか、凌いだな・・・・。」
「はい。若大将の提案した航空戦術や対空対策のお陰ですね・・・・。」
山口と柳本が安堵していたが、その安堵に隙が出来てしまった・・・・。
この時、アメリカ海軍のTBDデヴァフテイター艦攻が10機、低空飛行で『飛龍』と『蒼龍』迫ってきていた。
山口たちは迂闊にも、B-17隊やドーントレス艦爆隊に集中し過ぎだった。
その為、デヴァフテイター艦攻隊の存在を見落としてしまった・・・・。
本来ならばデヴァフテイター艦攻の場合、魚雷装備だったが緊急だったことや装備する魚雷が無かった為に、ドーントレス艦爆隊と同じ爆弾を装備していた。
(仲間たちのお陰で、ここまで来れた・・・・。ジャップの残る空母も叩いてやる!!)
デヴァフテイター艦攻のパイロットの一人は、内心で決意していた。
だが、山口たちもアメリカ海軍のTBDデヴァフテイター艦攻が10機、低空飛行で接近しているのに気付いた。
「まずいっ!!すぐに対空砲と対空機銃で迎撃しろっ!!」
柳本の指示ですぐに対空射撃が、デヴァフテイター艦攻隊に向けられた。
だが、デヴァフテイター艦攻隊のパイロットたちは海面すれすれで飛行していた為に、撃墜が困難だった。
やがて、至近距離に達したデヴァフテイター艦攻隊は、急上昇してから『飛龍』と『蒼龍』に対してドーントレス艦爆隊と同様に急降下爆撃を仕掛けた。
結果、『飛龍』は飛行甲板への直撃は失敗に終わったが、『蒼龍』は飛行甲板前部に3発が直撃してしまい飛行甲板前部で爆発が起きた。
爆発が治まり山口と柳本たちが『蒼龍』の艦橋から飛行甲板前部を見ると、飛行甲板前部が破壊され巨大な穴が生じていた。
ただ、艦載機が発艦していたこともあって『赤城』と『加賀』のような火災発生にならなかったのは、不幸中の幸いだった・・・・。
それでも、ある程度の火災が発生していた為、乗組員たちによる消火活動が行われていた。
そんな光景を目の当たりにしていた山口は、近くにいた通信参謀に言った。
「第二航空艦隊の若大将に電文を頼む。内容は、『敵航空勢力ノ攻撃ニヨリ【赤城】オヨビ【加賀】大破炎上【蒼龍】中破』とな・・・・。」
山口の言葉を聞いた通信参謀はすぐに通信室に向かった。
(若大将、君ならこの状況をどうする・・・・。)
山口は内心で呟いた・・・・。
____________________
山口たちの奮戦虚しく、『赤城』と『加賀』に続いて『蒼龍』が中破した第一航空艦隊。
アメリカ側の被害も甚大だが、日本側も相応の被害が出る形となった。
若大将は、いかなる手を打つのか・・・・。
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