第14話 第一航空戦隊、壊滅
ー 空母『赤城』飛行甲板上 ー
第二次攻撃隊の発艦を見守るつもりだった村田は、今回のアメリカ軍の反撃について悔やんでいた。
本来ならば、ホイラー飛行場とヒッカム飛行場も攻撃対象だったが、アメリカ太平洋艦隊の戦艦に拘り過ぎた結果、ホイラー飛行場とヒッカム飛行場への攻撃がおざなりになってしまった。
「俺としたことが迂闊だった・・・・。キッチリと攻撃対象を決めて分担すべきだったのに・・・・。」
そんな村田の目の前で発艦準備が整っていた零戦隊が次々と発艦していった。
それは、『赤城』だけでなく『加賀』でも零戦隊が発艦を始めていた。
「長官、『赤城』と『加賀』の零戦隊は発艦したらすぐにアメリカの航空隊に向かわせます。」
「そうか・・・・。」
草鹿の報告を聞いた南雲は力無く答えた。
南雲は現在の危機的状況や、山口の迅速な対応を目の当たりにしたことで零戦隊の発艦許可を決意した。
これにより、『赤城』と『加賀』を狙っていたアメリカの航空隊と対等に戦えるようになった。
その状況を複雑な心境で見ていた南雲に草鹿と源田が進言した。
「長官、九九式艦爆隊と九七式艦攻隊も発艦させましょう!!」
「彼等にも爆弾と魚雷を投棄して迎撃してくれれば、この窮地を脱せます!!」
二人の進言を受けて南雲が決意しようとした矢先、見張り員の一人から報告があった。
「上空真上からドーントレス艦爆が数機、我々の『赤城』と『加賀』に急降下してきますっ!!!」
報告を受けた南雲たちは、絶望的な表情になっていた・・・・。
『赤城』と『加賀』を狙っていたのは、真珠湾にいた数少ないドーントレス艦爆6機だった。
彼等は、第一航空艦隊の零戦隊などの迎撃を掻い潜り、隙を突いて『赤城』と『加賀』の上空に辿り着いていた。
「俺達は、こちらのアカギを叩く!!」
「ならば、俺達はカガを叩く!!ジャップたちに鉄槌を下してやろうぜっ!!」
ドーントレス艦爆のパイロットたちは各3機に分かれて、九九式艦爆隊と九七式艦攻隊が待機したままの『赤城』と『加賀』の飛行甲板を目指した。
気付いた『赤城』と『加賀』だったが、垂直に近い急降下だったため2隻の対空砲は使えない上に周囲を守る戦艦、巡洋艦、駆逐艦も対空兵装は少なかったので、結果、6機のドーントレス艦爆は撃墜されずそれぞれ1,000ポンド(約454kg)爆弾を『赤城』と『加賀』の飛行甲板目掛けて投下した。
それぞれ3発の爆弾が命中した直後、凄まじい爆発が相次いで起きた。
更に、飛行甲板上の九九式艦爆隊と九七式艦攻隊の翼内にある燃料や各機体に装備された爆弾や魚雷が次々と誘爆してしまい、結果、『赤城』と『加賀』は大火災が発生した。
空母『赤城』の艦橋から炎に包まれ始めている飛行甲板上の惨状を南雲は呆然と見ることしか出来なかった・・・・。
草鹿や源田たちの声も届かないくらいだった。
(なんてことだ・・・・。俺が若大将の話を聞き入れなかった結果が、この惨状か・・・・。)
直後、『赤城』艦橋近くで誘爆が発生して、艦橋内に破片や炎が飛び込んできた。
破片や炎に巻き込まれてしまった南雲は、その場に倒れてしまった。
意識を失う直前に彼が聞いたのは、草鹿たちが救護兵を呼び出す声だった・・・・。
一方、村田は目を覚ました時、彼は小型艇に乗っていた。
(俺は、確か飛行甲板上にいて、敵艦爆の爆発に巻き込まれて後の意識が・・・・。)
村田がおぼろげに思い出している中、
「村田隊長、気付きましたかっ!?」
一人の水兵が声を掛けてきた。
「ここは・・・・?」
「ここは『赤城』の小型艇の中です。隊長は爆風で『赤城』に設置されていた小型艇まで飛ばされていたんです。」
「それで、他の負傷兵たちを乗せて『赤城』から脱出しました。」
村田が周りを見ると、数名の負傷兵たちや看護兵もいた。
「そうだっ!!『赤城』は!?」
村田の問いに、水兵は辛い表情を浮かべながら視線を変えた。
村田が水兵の視線先を見て絶句した。
第一航空戦隊所属の空母『赤城』と空母『加賀』は、飛行甲板だけでなく艦艇全体を包むように炎上していた・・・・。
周囲には駆逐艦数隻が近付き、消火活動していたが見た目は『焼け石に水』だった。
アメリカ軍の航空隊による反撃により、南雲が率いる第一航空戦隊の『赤城』と『加賀』の2隻が大破炎上という事態になってしまった・・・・・。
____________________
キンメルとショートによる反撃と南雲の決断が遅れたことで起きた空母『赤城』と空母『加賀』の大破炎上・・・・。
残る山口が率いる第二航空戦隊の空母『飛龍』と『蒼龍』の運命は如何に!?
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