第13話 南雲の判断と山口の判断

ー 第一航空艦隊 旗艦 空母『赤城』艦橋内 ー


【約100機のアメリカ軍の航空隊の出現】


順調に作戦を進めていた南雲達にとって、この報せは正に青天の霹靂だった・・・・。

「長官、今すぐ飛行甲板上の第二次攻撃隊を発艦させましょう!!」

「そうです!!そして、護衛役の零戦隊でアメリカ軍の航空隊を叩きましょう!!」

そう言って草鹿と源田は強く主張した。

だが・・・・。

「駄目だっ!!そうしたら、艦爆隊と艦攻隊は護衛無しの丸裸状態で真珠湾に向かわなければならないぞっ!!」

南雲の言い分は最もだ。

「確かにリスクを伴いますが、護衛無しでも対応出来ます!!」

「もしくは、艦爆隊と艦攻隊は近くに避難させて、アメリカ軍を退けてから各空母に帰還させてから燃料の補給をさせてから再度、出撃させましょう!!」

草鹿と源田は食い下がったが、南雲はいきなりの危機的状況に混乱に陥っていた。

その為に、草鹿と源田の意見が正しいのに、決断が出来なかった・・・・。


そんな中、見張りの兵から報せがきた。

「第二航空戦隊の『飛龍』と『蒼龍』から第二次攻撃隊が発艦していますっ!!」

更に通信兵から

「山口司令から平文で『自身ノ判断デ【飛龍】オヨビ【蒼龍】カラ艦載機を発艦サセル』とのことです!!」

南雲達が第二航空戦隊の方を見ると、確かに『飛龍』と『蒼龍』から次々と第二次攻撃隊が発艦している。

南雲よりも早く山口は的確な判断を下して、アメリカ軍に対応しようとしていた。

その様子を見た草鹿と源田は、山口が以前に遠藤が提示した対策を実行しているのに気付いた。


遠藤は以前に南雲達に敵航空隊からの攻撃に対応した対空対策、艦隊陣形、迎撃対策を話していた。

遠藤だけでなく、空母の防御力や対空砲の脆弱に懸念を抱いていた樋端や久我と一緒に協議しあって、幾つかの対策を作り出した。

そして、遠藤は南雲達にも対空対策を話した。

草鹿、源田、山口達は熱心に聞いて賛同してくれていたが、南雲は頑なに聞き入れなかった。

草鹿達は謝罪していたが、その時に遠藤は草鹿達に対策をまとめたマニュアル書を渡していた。

先ほど、草鹿と源田が南雲に言った意見も遠藤が渡したマニュアル書のお陰だった。


結果、頑なに聞き入れなかった南雲と遠藤の話した対空対策を高く評価していた山口の適切な対応が、一連の動きにおいてここまで大きく差が生じてしまった・・・・。


山口の第二航空戦隊から発艦した攻撃隊は、次々と行動していた。

零戦隊は、すぐにアメリカ軍の航空隊への迎撃を開始した。

また、九九式艦爆隊と九七式艦攻隊は爆弾や魚雷を海に投棄した後で、アメリカ軍の航空隊への迎撃を開始した。

一見したら、九九式艦爆隊と九七式艦攻隊の行動は無謀に見えるがそうではなかった。

彼等は、ワイルドキャットなどの戦闘機とは戦闘を回避して、B-17やドーントレス艦爆などに向かった。

九九式艦爆と九七式艦攻の後部座席には、単装機銃が一基あるが、その機銃で彼等はB-17やドーントレス艦爆のコックピットを攻撃した。

日本以上に機体の防御力が高いアメリカ側の機体でも、コックピットの窓ガラスは防弾ガラスがあるとはいえ防御力は低かった。

結果、九九式艦爆と九七式艦攻の機銃を多方面から受けたことで、B-17やドーントレス艦爆などを数機撃墜した。


この迎撃方法は、以前に遠藤が鼓舞に言っていた『新たな航空戦術』の一つだった。

九九式艦爆と九七式艦攻も零戦程ではないが、爆弾や魚雷を装備していなければかなりの速度がある。

だからこそ、遠藤達は後部座席に装備されている機銃を利用して、防御力が低い敵の艦爆機や艦攻機のコックピットを攻撃して迎撃する方法を生み出した。


お陰で、第二航空戦隊の艦載機の奮戦でかなりの敵航空機を次々と撃墜していった。

だけど、全てを阻止するのには無理があった。

やがて、迎撃を逃れたアメリカ軍の航空隊が艦隊に迫りつつあった。


そんな中で一番狙われたのは、飛行甲板上に第二次攻撃隊を待機させたままの空母『赤城』と空母『加賀』だった・・・・。



____________________


遠藤が山口達に託した迎撃方法で奮戦していた第二航空戦隊。


だが、全てを阻止するには限度があった・・・・。

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