第12話 キンメル達の反撃
時間は南雲が放った第一次攻撃隊が引き上げた直後に戻る。
ー 真珠湾 アメリカ太平洋艦隊司令部 ー
「ウィリアム、現時点での被害状況を教えてくれ。」
被害が最小限で済んだ司令部で、キンメルはスミス参謀長に聞いた。
「はい、艦船被害を中心に戦艦『アリゾナ』、『オクラホマ』、『ウェストバージニア』、『カリフォルニア』が撃沈。また、戦艦『ネバダ』は座礁。他の戦艦『テネシー』、『メリーランド』、『ペンシルベニア』も損傷しており、駆逐艦数隻にも大なり小なりの損害が出ています。」
更にハワイ方面陸軍司令長官ウォルター・C・ショート中将からの報せをマクモリス主席参謀が追加報告した。
「長官、先ほどショート長官から報告があって、ホイラー飛行場とヒッカム飛行場は一部被害がありましたが、かなりの航空勢力は無事だそうです。」
二人の報告を聞いたキンメルが思案している中、ハガティ航空参謀が朗報を伝えた。
「長官!!先ほどの日本の攻撃隊が引き上げた時に密かに追跡していたカタリナ飛行艇数機が敵艦隊を発見しました!!」
ハガティの報せに皆が色めき立った。
「位置はっ!?」
「ハワイ諸島北方約300キロの海域とのことです!!」
ハガティの報告を聞いたキンメルは決断した。
「チャールズ、すぐにショートに連絡してくれ!!陸海軍の航空勢力を使って、敵の艦隊を攻撃するとなっ!!」
「了解しましたっ!!」
マクモリスが部屋を飛び出した中、キンメルは残っている幕僚達に話した。
「諸君、いきなりの陸海軍共同での戦いになるが、真珠湾を攻撃した日本艦隊に一撃を与える千載一遇のチャンスだ。我々はこの好機を逃してはならないっ!!」
キンメルの言葉を聞いた幕僚達は、日本艦隊への反撃に向けて各自一斉に動いた。
(ピンチと同時に、チャンスは訪れる。この好機、逃すものかっ!!)
キンメルは、内心で強く決意していた・・・・。
ー 第二航空戦隊 旗艦 空母『蒼龍』艦橋内 ー
第二航空戦隊の山口は、空母『蒼龍』の艦橋内から飛行甲板上で進んでいる第二次攻撃隊の準備を見守っていた。
当初、南雲は航空戦には素人なことや現時点で真珠湾に不在の空母からの反撃を恐れて第二次攻はしないのではないかと懸念されていた。
しかし、南雲は更なる攻撃をすべく第二次攻撃隊の発艦準備を進めていた。
(そんな南雲さんの原動力が、若大将に対しての強いライバル意識とは皮肉だな・・・・。)
内心でそう考えていると、空母『蒼龍』の艦長を務める柳本 柳作(やなぎもと りゅうさく)大佐が山口に声を掛けてきた。
「南雲さんは思った以上に積極的な行動をしていますね。」
「そうだな現時点では順調だが、順調過ぎて怖いよ。」
そんな山口の言葉に、柳本だけでなく周りにいた幕僚達や乗組員達も笑った。
だが、彼らの笑いはすぐに無くなる。
直後に伝令兵が艦橋に駆け込んできて報告した。
「報告します!!真珠湾の方角から多数の航空機が接近していますっ!!!」
「数はっ!?」
「約100機ですっ!!」
伝令兵から内容を聞いた山口達は言葉を失った。
現在、第一航空艦隊の4隻の空母は真珠湾への第二次攻撃隊を発艦させようとしている。
4隻の空母は、魚雷や爆弾を搭載した艦載機で飛行甲板上は、塞がっている。
そんな中で、一発でも爆弾が命中したら・・・・。
山口達の脳裏によぎったのは、真珠湾と同じ『阿鼻叫喚の地獄絵図』だった・・・・。
そんな中、第一航空艦隊に向かいつつあったアメリカ陸海軍共同の攻撃隊は以下の通りだ。
海軍のF4Fワイルドキャット戦闘機:10機
陸軍のP-40ウォーホーク戦闘機:60機
海軍のSBDドーントレス艦爆:25機
海軍のTBDデヴァフテイター艦攻:10機
陸軍のB-17フライングフォートレス4発機爆撃機:10機であった。
持てる戦力を全て使った真珠湾アメリカ軍の陸海軍の決意と覚悟が伺える内容だった・・・・。
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キンメルとショート達によるアメリカ陸海軍共同の反撃作戦。
史実のミッドウェー海戦に近い悪夢が、真珠湾近海で起きようとしていますね・・・・。
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