第10話 第一次攻撃隊、発艦せよっ!!

ー 戦艦『土佐』防空指揮所 ー


話は再び現在に戻る。


現在、第二航空艦隊指揮下の4隻の空母では第一次攻撃隊の発艦準備が完了していた。

第一次攻撃隊の編成内容は、


零式艦上戦闘機二一型:100機

九九式艦上爆撃機一一型・(爆装):59機

九七式三号艦上攻撃機・(爆装):74機


第一次攻撃隊は合計で233機だ。


久我と淵田が遠藤に報告してきた。

「若大将、第一次攻撃隊の発艦準備が完了しました。」

「何時でも出撃可能や。」

遠藤が二人の報告に頷くと、鼓舞がある提案をしてきた。

「若大将、Z旗を掲げましょう。」

Z旗は、1905年の日露戦争時で日本海海戦の際、連合艦隊司令長官の東郷平八郎(とうごう へいはちろう)は、トラファルガー海戦の信号文『英国は各員がその義務を尽くすことを期待する』に倣い、『皇國ノ興廢此ノ一戰ニ在リ、各員一層奮勵努力セヨ』という意味を持たせたZ旗を旗艦である『三笠』のマストに掲揚した。日本海海戦の逸話以降、日本海軍ではZ旗は特別な意味を持つ事となっていた。

鼓舞から提案されて、勿論、遠藤も賛成した。

「そうだな。直ちに、『土佐』にZ旗を掲げろっ!!」


そして、1941年12月8日午前8時30分、『土佐』にZ旗が掲げられた中、第五航空戦隊、第六航空戦隊の各空母の飛行甲板上では合計233機が、発艦命令を待っていた。

遠藤は発令した。

「第一次攻撃隊、発艦せよっ!!」

4隻の空母から次々と発艦していく第一次攻撃隊を遠藤達だけでなく、乗組員達が帽子を振りながら見送った。


やがて、第一次攻撃隊が飛び去った方向を見ながら遠藤は言った。

「今回の開戦に備えて、第五航空戦隊、第六航空戦隊の搭乗員達には困難な夜間発着艦も含めて新たな航空戦術も猛訓練して貰ったから俺としては有り難い。」

遠藤の感想を聞いた鼓舞は、呆れながら言った。

「若大将も知っているんでしょう?搭乗員達から若大将が呼ばれている別名を。」

しかし、遠藤はどこ吹く風だと言わんばかりに答えた。

「第二航空戦隊の多聞丸さんと同じ『碌でなし若大将』だろ?気にする事じゃあない。」

遠藤は、さらりと言い返した。


第二航空戦隊の山口は、搭乗員達の練度を高める為に苛酷な訓練を搭乗員達にしていた事や苛酷な訓練中の事故が相次いだ事から、搭乗員達から『人殺し多聞丸』と渾名を付けられていた。

だけど、自分たちの為に山口は苛酷な訓練をしているという事から、そんな渾名を付けられた経緯があった。

遠藤の答えを聞いた鼓舞は珍しく溜め息を付きながら、

「それだけではなく、『多聞丸すら恐れる鬼大将』とか『鬼も震える若大将』とかも言われているんですよ・・・。」

それでも、鼓舞の話に遠藤は気にする事なく言った。

「多聞丸さんと同じ様に、俺も第五航空戦隊、第六航空戦隊の搭乗員達の練度と生還率を高める為に文字通り『心を鬼』にしているだけだったからな・・・。」


続けて遠藤は、「それに・・・。」と言いながら鼓舞に言った。

「久我や淵田を通して搭乗員達に教えた『新たな航空戦術』は、搭乗員達からしたら『常識破り』だろ?」

鼓舞は、遠藤が自分達に初めて聞かせた『新たな航空戦術』を思い出しながら納得した。

鼓舞は、機影が見えなくなった第一次攻撃隊の飛び去った方角を見ながら、内心で呟いた。

(この新しい戦術は、敵からしても『常識破り』だな・・・。それをこれから嫌と言うほど体験する敵艦隊の連中は、お気の毒だな・・・。)


鼓舞が再び遠藤の方に振り向くと、遠藤は鼓舞の考えはお見通しだと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべていた・・・。



____________________


遠藤達の猛訓練を受けて真珠湾に向けて放たれた『蒼天の艦隊』の搭乗員達。


更に、遠藤達が託した『新たな航空戦術』とは・・・・🤔



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