第18話 お月様見て跳ねまくりたい!
アタシショコル!高校最後の夏休みもあっという間に過ぎちゃった!ってな訳でまた通学の日々は始まっちゃったけど、まだまだ暑い日もあり、こまめな糖分補給は欠かせないの!え?それを言うなら水分補給?アタシ達メルティーメイツに糖分は同じぐらい重要なのよ!
っとまあそんな訳で、今日も今日とて愛しのバニリィちゃんと楽しくお喋りしていると、思わぬ事を知らされたの!
「ショコルさん、そういえばもうすぐお月見の日が来ますよね」
「うん、そうだけど、その日何かあるの?」
「……実は、姉さんが次の休みの日、少しだけ帰って来るんです」
「ああ、姉さんね。二年前の夏休みの終わりにも帰ってきてたよね」
「それで、その日はちょうど満月なので、お月見しようとも言ってました」
バニリィちゃんのお姉さんのカフェイがまたバニリィちゃんの家に帰ってくるみたい。あの人、ザラメ社のお仕事をしっかりやってて、大人の魅力があっていいな〜って思ってるの。さすがに総合点はバニリィちゃんにはかなわないけどね。
「それと、私の家に来る理由は他にもあって。この日に開発途中のお菓子を持ってくるので、二人で食べて味の感想を聞かせて欲しいって」
「つまりザラメ社の新製品を一足先に食べれる……ってコトなの!?」
「ええ、ショコルさんも喜んでくれると思うからって、お姉さんも言ってました」
「ありがとー!!!その日めっちゃ楽しみにするー!!!」
カフェイさん直々の新製品モニターテスト。アタシの運命の相手がザラメ社の社員の妹なだけでこんな経験が出来るだなんて今にしても夢みたい!こういう所でもバニリィちゃんに会えてめっちゃ良かった!最高だった!!!
* * * * * * *
そんなこんなで、カフェイさんが帰って来る日になりました。夜に来て欲しいって話だから、日が暮れる少し前に家に来たよ。
「ただいま〜!」
「あらショコルさん、ここは私達の家よ」
「あっごめん、つい実家帰ってきたノリで……ってかもうカフェイさんも来てるのね!」
「バニリィもショコルもこの間と変わらないようで何よりね。ショコル、今日はあなたの家だと思ってゆっくりしてちょうだいね」
少しくつろいだだけで夜が来て、晴れた夜空には黄金の輝きを放つ満月が浮かんでいた。
「こちらにどうぞ」
「ショコルさん、こっちよ」
「うわあ……すごいバルコニー」
バニリィちゃんの家の二階には、立派なバルコニーがあった。さすが昔貴族の家系ってやつ?ここからなら月も良く見える。なんて思っていると、カフェイさんが例の新商品を持ってきてテーブルの上に置いた。
「さて、こちらが私カフェイが考案した新製品の試作品です」
テーブルの上には、クリーム色とチョコレート色の二色のお団子みたいなのがあった。
「まずはクリーム色のお団子からどうぞ」
「はい……」
「そんじゃアタシも……」
クリーム色のお団子を顔の前に持ってきた瞬間、アタシとバニリィちゃんの表情が変わった。
「これ、私の香り……!」
「バニリィちゃんの香りじゃん……!」
単純に考えても、アタシの隣にいる亜麻色の髪の子からする香りのお団子である。まさかこの香りを再現したって事なの……で、味の方はというと……。
「優しい甘さね」
「もうちょっと甘さがあればって言いたい所だけど、真面目に言ってこれでちょうどいいんじゃないかなー!」
お団子を食べた後、別に用意していた緑茶でお口の中をリセットして、次はチョコレート色のお団子を食べてみる事にする。
「あ、これはショコルさんの香り……」
「間違いない、アタシの香りじゃん!ちょっとカフェイさん、いつのまにかこういうの再現していたっていうの!?」
「その件は後で話します、今は食べてみて」
案の定、チョコレート色のお団子は、黒髪のアタシから発する香りそのまんまだった。まさかアタシ達二人の香りのお菓子が作られるとは思ってもいなかった。色々な意味で複雑な気持ちで、チョコレート色のお団子も食べてみた。
「これは……先ほどよりも甘みが強いような……!」
「ココア大さじ9杯ミルクには及ばないけど、良い感じに味濃いよね!」
モニターテスト要員として言うべきことはズバズバ言った……つもりだったけと、カフェイさんはこう言った。
「それでは、今度はその二つを同時に食べてみて下さい」
「えっ、それって……!?」
「口の中で、アタシ達は溶け合うって事なの!?」
「食べてみれば分かります。ではどうぞ」
こうしてアタシとバニリィちゃんは緑茶でお口の中をリセットしてから、月の光に照らされながら、クリーム色とチョコレート色のお団子を同時に食べてみた。すると……!!!
「こ、この感覚は、まるで私とショコルさんが一緒にいる時のような安心感があります……!」
「すごい……すごすぎる……優しい甘味と強い甘味が良い感じに良い感じに絡み合って、味の黄金比が完成している……!!!」
アタシも、バニリィちゃんも、この味には猛烈に感動している……!まさに神の糧!!!
「では、この内容で販売してもよろしいでしょうか」
アタシ達は答えた。
「はい、きっとみんな喜んでくれます」
「全ての顧客のニーズに応えられると思うよ!」
「良かった、二人の感想は会社に伝えておきます。ご協力感謝いたします」
「ありがとうございます、お姉さん」
「いいものを作るお手伝いが出来て、アタシも良い経験になったよ!」
てなわけで、新商品のモニターテストを終えたアタシ達は、バルコニーから月を見上げていたのでした。バニリィちゃんと月を見つめているとカフェイさんがこう言った。
「お二人とも、月は綺麗ですか?」
アタシ達は答えた。
「……はい、綺麗です」
「そりゃあ、綺麗でしょ!?」
するとカフェイさんはこう言った。
「あなた達の事は何も心配はいらないかもしれないけど、世の中の事は毎日変わりゆくものなのよ」
「……そ、そうですよね、今までの私は、姉さんがいてくれればそれで良かったと思ってたから……」
「アタシだって、この先誰にも受け入れられないと思いそうになった事もあったかもしれないから……」
アタシでも軽く考えれば分かる。月は毎日形を変えて、曇って見えない日もある。今のアタシはバニリィちゃん一筋で生きると決めてるけど、周囲の環境の変化だけはどうしても止められない。けど、アタシとバニリィちゃんならどんな変化にも対応出来ると思う。だからその願いを叶える目的としての、二人のお菓子屋さんを作る夢だけは手放さないんだから!
すると、カフェイさんはこうも言った。
「このお菓子は、二人の特別な関係が末永く続くようにと願いを込めて作ったのでした。これから先もあなた達に似たような境遇の子達も支えられるようなものが作りたかったから……」
「そうだったのね……ありがとう、カフェイお姉さん……」
「姉妹でしんみりしてるとこ失礼するけど、あのお団子、まだあったりする?」
「はい、まだ沢山ありますので、今宵はたんと召し上がれ」
「ありがとー!!!カフェイのアネキ!!!」
こうしてアタシ達は月を観ながら新商品を味わった。まるでバニリィちゃんのお家という宇宙船に乗って優雅な宇宙旅行にでも行っているぐらいのテンションだった。今宵のアタシ達は最高に跳ねまくっている!!!
* * * * * * *
それから何日か経過して。
「ショコルさん、あの時のお菓子が学校中でブームになっているみたいです」
「うんうん!さっき生徒の一人が同時に食べてすっごい良い顔してたから!」
「こんな形で、周りに変化をもたらしちゃうのですね、私達は……」
「さーて、こちらもさらに頑張って行きましょっかい!!!」
アタシとバニリィちゃんの出会いが、こんなにもすごい現象を巻き起こすとは思ってもいなかった。このザラメ社の新製品『
第18話 おわり
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