第16話 初バイト!アイスクリーム屋さん!
アタシショコル!この前はバニリィちゃんと一緒に美容室へ行って新しい髪型にしてもらったの!バニリィちゃんと一緒に過ごすようになる前は、オシャレとかほとんど無頓着で、ボサッとした髪とかしてたけど、今はハイソなバニリィちゃんに恥ずかしい所見せられないから、アタシなりに工夫してオシャレとかも頑張っているんだよ!
……とまあ、こーんな感じで過ごしてたら、いつのまにかジメジメの季節は過ぎ去り、アツアツの季節がやって来たのよ……!
・・・
ミーンミンミンミンミン……
蝉の鳴き声が響き渡る中、アタシとバニリィちゃんはいつも通り、図書室で雑誌を読んでいた。
「あら、この記事……アイスクリーム屋さんの特集ね」
「しかもそんじょそこらのアイスクリーム屋さんの中でもこの街の覇権を握っていると言われる、『ジェラートプラネタリウム』の特集が数十ページに渡って載っている!」
アタシは興奮気味に雑誌のページを次々と見る。この夏の人気フレーバーとか、美味しく食べてくれるお客さんの声とか、店員さんのインタビューなども載っていた。
「なるほど、こちらも色々と参考になる記事ですね」
「ここまでの情熱が無ければ書けない事ばかりだよ!まるで自分の好きなものを押し込めた小説を書いて発表するみたいにね!」
そういえばアタシ、バニリィちゃんの影響で小説だって読むようになった。輝く瞳の少年少女がてをつないで楽しい日々を過ごす話や、ドラゴン族の少女が迷子の女の子を助ける話や、一度荒廃した世界を元通りにしようと頑張る少女とロボットの話や、色の魔法使いが世の中を良くするために活躍する話など……気が付けば沢山読んだっけ。
……なんて、話が迷走しかけたその時。
「……ねえバニリィ、記事の最後のとこ見て!」
「これは……!?」
「そう!ジェラプラのアルバイト募集の記事!ただいま学生オンリーで絶賛募集中だって!」
「まさか、行きたいというのですか?」
「そう!あのお店での経験が、アタシ達をさらなるステップにブチ上げてくれるかもだよ!」
「ショコルさんが行きたいというのなら、私もご一緒させていただきます」
「ありがとー!!!バニリィちゃん大好きー!!!」
「ここは図書室だから静かにして下さい……!」
アタシはバニリィちゃんと一緒に雑誌のQRコードを読み取り、スマホからバイトに行く日を指定した。二人までなら同日OKだったので、首尾よく行きたい日を指定する事が出来た。バニリィちゃんと一緒にアイスクリーム屋さんのアルバイト、楽しみ半分、緊張半分と言った所……!
* * * * * * *
二人で指定したバイトの日がやって来た。所定の時間に、最寄りのアイス屋、ジェラプラにやって来たの!
「あなた達が応募してきた子達ね、今日はよろしく頼むよ」
「はい、本日はよろしくお願いします」
「よ、よろしく……エヘヘ……!」
このお店の店長さんはチョコチップクッキーの香りの壮年女性。いかにもベテランの風格を感じる面持ちね!そんなわけで二人はこのお店の制服に着替えて、いよいよ一日限りのアルバイトに挑む事になったの!
「いらっしゃいませ」
「バニラとチョコのダブルでお願いします〜」
「かしこまりましたー!」
バニリィちゃんが礼儀正しく接客している中で、アタシは隣でお客さんの注文通りにアイスを掬ってコーンやカップの上に乗せる。定期的に二人でお菓子作りをしていたから、こういう作業はちゃんと出来る。これもバニリィちゃんに出会うまでは考えられなかったなー。
「ありがとうございます」
「おや、今日のアイス、やけに多くないかな」
「あら……なんかやらかしちゃいましたか?」
この通り、アタシなんかしちゃいました?と思っていると店長さんが来てお客さんに言った。
「今日はサービスだよ、お客さんにも、アルバイトの子にもね」
「あっ、ありがとうございます!」
店長さんのはからいで、アタシもお客さんも笑顔になれた!目の前に並んでいるアイスの箱の中身が切れても、冷凍庫からまた新しいのがドンドン出てくる。これが覇権店の実力なのか……と、お店の視点から見る事が出来た。
「ほら、次のお客さんは抹茶と大納言小豆よ」
「りょーかいっ!次から次といっぱい来る!」
……とまあ、アタシとバニリィちゃんによる4時間のアルバイトは特に大きなトラブルも無く、無事に終了した。すぐに他に応募してきた子がアルバイトに取り掛かる。みんなも上手く出来るといいね!
「雑誌見て応募してくれてありがとうね。また募集するかもしれないからまたおいで」
「今日はありがとうございました」
「また来るからねー!」
・・・
時給を受け取り、お店を後にした。外から見たジェラプラは、いつもより輝いて見えた。バイトの後の帰り道で、アタシはバニリィちゃんとお喋りしていた。
「今日はとっても楽しかったね!お店の人の視点で色々な事が分かってタメになったよ!」
「私も同じ気持ちです。」
「ねえバニリィ……アタシね……」
「なに?」
アタシはバニリィと付き合って2年ちょっと。思い切って告白するノリでこう言った。
「将来お仕事するなら、バニリィと一緒じゃなきゃ厭」
「ショコル……」
「だから、アタシはバニリィちゃんの仕事をお手伝いしたい」
言いたい事は、ここでハッキリ言っておいた。アタシとしてはタイミングはこの時だと判断したから。
すると、バニリィからの返事は……。
「では、念のために、やりたい事を同時に言っておきましょう」
「分かった!せーので言おう!」
「ですね、では言いましょう」
せーのっ!
「お菓子屋さん」「お菓子作り」
……アタシとバニリィちゃんのやりたい事は、ほとんど同じものだった。
「……というわけで、アタシとバニリィちゃんでお菓子のお店作って一緒に働くって感じでどう?」
「姉さんともよく相談してみようと思います」
「はい決定!それじゃあこれからはこれが目標って事で!!!」
アタシは、バニリィちゃんとお仕事出来るなら、何でもいいと思ってた。例えバニリィちゃんがやりたい事が農家とか歌手とかプロゲーマーとかでも、無理してでも合わせるつもりでいた。けど答えは最初から決まってたようなものだった。それが分かって、安心した。
「それじゃあこれからお店に出す商品のアイデアを一緒に出し合っていこうね!」
「はい、わたしも出来る限りやってみせます!」
アタシとバニリィちゃんの行き着くべき場所のイメージは、やっと見えたって感じだった。暗闇の中で暴れ回っていたアタシが、バニリィという名の光を見つけて、導かれるままに見つけた将来の夢。
でも今は残りの学生生活をチカラの限り頑張るのがやるべき事。これから先、どんな問題もバニリィと一緒なら乗り越える自信がある。
だから見ててね、アタシ達のココロが溶け合い大きな夢を掴む所をね!
第16話 おわり
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