第8話 はじけるチョコレートの伝説!
「ハアッ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!!!」
ア、アタシはショコル!今は訳アリで、町内をダッシュ中の身なの!何で走ってるかって言うとね!
「新発売のプラズマパーティクルチョコレート、どこに行っても売ってないのー!!!」
プラズマパーティクルチョコレート。先日から、テレビCMでその存在をアタシに見せつけた、新感覚チョコレート菓子の事なのよ!
『一口食べればスパーキング!二口食べればエレクトロニック!!いっぱい食べればサンダーストーーーーム!!!!!!プラズマパーティクルチョコレート、お菓子売り場で新登場!!!』
ネットの情報によると、そのお菓子はパチパチ成分をミクロ単位でチョコレートに練り込んでいて、食べた人に未だ味わった事のない衝撃を与えるんだって!
「次のお目当ては……あのコンビニ!!!」
アタシはコンビニの自動ドアの前に立つと、開いたドアに両手を突き出してバリアを破るふりをして、お店に入った。しかし……。
「すみません!あのお菓子はありますか!」
「プラズマパーティクルチョコレート、先ほど完売いたしました」
「ここもおおおおっ!!!」
そのチョコレートは大人でも予想出来なかったほどの人気で、もはや宇宙規模で売れてるんじゃないのと思っちゃうぐらいブームが到来していたという。何も買わないで帰るのもどうかと思うので、スポーツドリンク一本買って、店を出ようとした。
「ありがとうございました」
「つ、次の店……ん!?」
すると、アタシの知っているバニラの香りがしてきた。この香りはアタシの友達、バニリィちゃんの。ここはひとつあの子にも協力を要請しよう。
「あら、ショコルさん、どうしたのでしょうかそんな汗びっしょりで……」
「バニリィちゃん!ちょっとこれ探すの手伝ってくれる!?」
アタシは焦り気味にポケットからスマホを取り出して、バニリィに探しているチョコの画像を見せた。
「こ、これって、新発売のチョコレート?」
「そう!これ一緒に探すの手伝ってくれる!?」
「わ、分かりました……こちらも特に急ぎの用事も無いので……」
「ありがとうバニリィちゃーん!!!さあ一緒に探しに行くよ!」
何かとアタシが絡むと巻き込まれやすい体質のバニリィちゃん。でも今や100万の勇者を従えているかのような感覚!このまま次のお店に向かうよ!!!
「あっちにコンビニを二軒確認!バニリィちゃんは右側をお願い!」
「分かりました」
アタシは左側のコンビニ、バニリィは右のコンビニを探す事にした。アタシの友達ならきっと望みの品を見つけてくれるはず!もちろん、アタシも本気で探しているよ!
「探しているお菓子……これで、いいのかしら……」
数分後、アタシとバニリィは合流した。
「ショコルさん、お菓子は見つかりましたか?」
「さっきの店にも無かったよお!それでバニリィちゃんはさっきの店で見つけたの?」
「こちらでしょうか……」
バニリィちゃんはアタシにお菓子の袋を見せた。
「そうこれ!これがどうしても食べたかったの!バニリィちゃんありがとー!!!」
「わっ!」
アタシは袋を見もせずに受け取り、袋を開けて中のチョコを食べたのだった。
「パクパクっ!う〜〜〜この食感、一度体験してみたくって……アレ?なんかグミみたいのが入ってる……!?」
「あら、この袋、『グミグミチョコレート』って書いてある……何だか似ている見た目だったから……」
「ふぅええええええ〜〜〜〜〜っ!!!」
「探してるのと違っていたなら申し訳ありません……」
「これもこれで美味しいけど、アタシが探してるのはコレジャナ〜〜〜〜〜〜イ!!!」
「で、ではまた探しましょう……」
という訳で、またバニリィちゃんと一緒に町中のコンビニを探し回った。
「この店も売り切れ……」
「これは……唐辛子入りチョコ……」
「東洋風の駄菓子屋も売り切れになってた……」
……気が付けば、アタシとバニリィちゃんは最初に入った店の前にいた。
「これだけ探しても見つからないんじゃ……」
「今日はもう帰りましょうか……」
「ヤダヤダ!1秒でも早く味わいたい!!!」
「ショコルったら……あら、あのトラックから……」
バニリィちゃんの視線の先には、トラックの中からダンボール箱が運ばれている所だった。しかも、その箱に書いてある文字は、他でもない『プラズマパーティクルチョコレート』だ……!
「ここに来て神様はアタシを見捨てなかった!!!これくださーーーーい!!!」
こうしてアタシは、念願叶って、プラズマパーティクルチョコレートを手に入れたのであった……!
「画像と同じ見た目の袋ですね」
「これこれえ!これが欲しかったのよお!!!バニリィちゃんもひとつどう?」
「えっと、ショコルさんの食べる所を見てから考えようと思います」
「それじゃあ、アタシから食べてみるねえ!!!」
アタシは意を決して袋を開けて、中身のチョコレートを口に入れたのだった……そして……!!!
パチッ!パチッ!パチパチパチパチ!!!
アタシの口の中で始まる、パチパチ成分の弾ける音。
「そう!この感触!これが楽しみたくて……!!?!」
しかし、思わぬ事態が……!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……
口の中のパチパチ感が加速的に増加していって……!!!
「!?!?!?!?!?!?!?!?」
「ショコルさん!?」
まるで口の中で爆竹が大炸裂したかのような人生最大級の衝撃がアタシの中を駆け巡った!!!
パ パ パ パ パ パ パ パ パ パ パ パ パ パ パ パッ!!!!!!!!!!!
「ビヤーーーーーーーーーッ!!!!!!」
「ショコルさんっ!!!」
バタッ!
そのままアタシは昏睡した。バニリィちゃんはアタシを抱えて自宅へと走っていった。
・・・
夕方、アタシはバニリィちゃんの家のソファで目を覚ました。
「こ、ここは……」
「私の家です、あのお菓子、想像以上の威力だったのですね……」
「ネットの情報ではそこまでの威力は無かったハズなんだけと……ハァ……」
「今日は大変でしたね……今クッキーとお茶をお持ちしますね」
「うん……今日はバニリィちゃんのお手製菓子食べれるだけで良しとする……」
その後、あのお菓子は分量ミスでパチパチ成分マシマシのを食べてアタシみたいになった人が続出して回収騒ぎとなり、当面の間販売を見合わせる事になったそうな……。
* * * * * * *
「ということなんだよお……マスター……ミルクもう一杯注いで下さいよお……!」
「ショコルさん……」
ショコルはあなたに、その日の出来事を愚痴るようにお話したのでした。
「ちゃんとした方のあのお菓子が食べたかったよお……!」
「ショコルさん、実はお母さんからこれを預かっていて……」
バニリィはバッグから何かを取り出しました。それはなんとプラズマパーティクルチョコレートの袋でした。
「お母さんがたまたま買ってて、食べてもあの時ほどパチパチしすぎないから……」
「あ、ありがとうバニリィちゃああああん!!!」
「お礼なら、お母さんにお願いします……せっかくですし、一緒に食べましょうね」
「うんっ!」
バニリィとショコルは、一緒にそのお菓子を食べました。
パチッ!パチッ!パチパチパチパチ!!!
「こういうお菓子も、たまにはいいものですね」
「今度再販されたなら、また一緒に買いに行こうね!」
この二人なら、どんなお菓子でも、楽しく味わえる事でしょう。
第8話 おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます