第5話 夏の海と塩バニラ
夏真っ盛り、暑さも日々厳しくなります。
カランカラン♪
「おはようございます」
「おっはよー!」
この暑さにも負けずに、バニリィとショコルが来てくれました。今日はどんなお話をしてくれるのでしょうか。
「それにしても毎日暑いよねー、アタシ達メルティーメイツは、生命を落とす事を『溶けた』って言い表すんだけど、ここ最近は周りでも熱中症で溶けそうになった人が続出しててさ……」
「ですね……常日頃から水分補給をしなければなりませんね……」
「今日もいつものココア大さじ9杯ミルクで……って言いたい所だけど、この間ママから、メルティーメイツの中にも糖分の摂りすぎで具合を悪くした人がいるって言われて、水分はなるべく水とかお茶とかで補給するように心掛けているの!」
「良い心掛けね……今日は糖分控えめのをお願い」
あなたは二人に、糖分控えめのお茶とケーキを出しました。
「さて、今日は私がお話します。先日は、ショコルと一緒に海水浴へ行ってきました」
「誰も来ないけどすごく良い所を教えられちゃって、バニリィちゃんを招待したの!」
「とても楽しかったから、聞いてちょうだいね……」
* * * * * * *
もうすぐ夏休みのある日。
学校の休み時間、私がいつものように窓から外を眺めていると、またいつものチョコの香りがしてきた。
「バニリィちゃん!こっち向いて!」
「あっショコルさん……今日はどうしましたか」
「どうしても見てほしい所があるの!これ!」
ショコルは私にスマホの写真をいくつか見せた。
「海辺のようだけど、人がいる気配が無いのね」
「バニリィちゃんを招待したくって、この前の休みの日に行って撮ってきたんだ!海の家とかは無いけど、それ以外は一番賑わってる所にも勝るとも劣らない穴場スポットなの!アタシのパパとママも昔ここでデートしてたんだって!」
「つまり、ご両親に教えられてここに来て撮ったというのね」
「そういうこと!だから夏休み初日はここで楽しんじゃおう!」
「分かったわ、どこにあるのかも教えてくれると嬉しいわ」
「バニリィちゃんにだけ教えてあげるからね!」
ショコルさんから海水浴へのお誘い、今更断る理由など思い浮かぶ訳もなく、承諾する事にした。それにしても、海水浴は小学生の時に行ったのが最後だった気がする。あの日のお姉ちゃんの楽しそうな姿も、微かに思い出せる。
・・・
そんなわけで、学校は終業式を迎え、待ちに待った夏休みがやって来た。私は水着などをバッグに入れて出発して、最寄りの駅でショコルさんと合流した。
「おはようバニリィちゃん!ここから二駅の所にあるからね!」
「はい、こちらでも電車の時間などをちゃんと調べておきましたよ」
「すごっ!アタシより計画的に出来るのね……」
「無計画で行くなんて、怖くて出来ませんから……あとこの荷物、私だけじゃ重たかったからショコルさんも持ってくださるかしら」
「わっ、随分とずっしり……でもバニリィちゃんの頼みならどんと来いだよ!」
お互いに足りない所を補いながらも、私達は一緒に歩んでいく。そんな関係も悪くないと思えてくる。なんて考えながらも電車に乗って、目的の場所へと向かっていった。夏休み中だから、電車の中には沢山の人がいて、色々な香りが鼻に入ってくる。私は、ショコルとはぐれないように電車の中で手をつないでいた。
・
・
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電車を降りて、徒歩で10分程の所に、今日の目的地となる浜辺がありました。
「着いたよ!ここがアタシの穴場スポット!」
「すごい……確かに人がいる気配が無いわね」
私とショコルさんの目の前には、綺麗な砂浜と青い海が広がっている。彼女に会わなければ、私はこの景色を見る事も無かった事だろう。
「それじゃあ早速水着に着替えて!」
「でもっ……人がいないからってここで堂々と着替えるのもどうかと思われます!!!」
私は慌ててショコルさんを物陰に連れて行って、一緒に水着に着替えたのでした。
「ど、どうでしょうか……」
私の水着は、白くてフリルの付いた水着で。
「うんっ!すっごく似合ってるよ!」
ショコルさんのは、大胆にも黒いビキニを着ていました。こうして見ると、ショコルさん、私より胸が大きい。
「さて、このあとアタシとバニリィちゃんがここでやる事成す事といえば……!?」
「ゴクリ……」
お互いの水着姿を見つめる事数秒。
「二人っきりの!海水浴だあーーーー!!!」
もはやショコルさんの感情のボルテージは、天元突破の領域に達した。私も彼女に応えるように、思いっきりはしゃぎ始めた。
「あははー!それーっ!」
「私だって、こうしますよ!」
お互いに海水を掛け合ったり。
「どう!アタシの泳ぐ姿!まるで人魚でしょ!」
「すごいですね……その泳ぎ方、教えてくれますか?」
「考える必要は無い!感じるの!それだけ!」
「……分かったわ!私も泳いでみる!!!」
一緒に広い海を泳ぎ回ったりして、海水浴を満喫した。この砂浜は、道路からは見えにくい位置にあるので、二人の戯れを見ちゃう人は、いないんだとか。
「随分動いて汗かいちゃったね……汗……!」
「ショコルさん、どうしましたか?」
「バニリィちゃん……ちょっと、その肩を舐めてみてもいい……?」
「ええっ!?……まあ、いいわよ……」
ショコルは私の肩を軽く舐めた。
「……どんな味がした……?」
「……塩が効いたバニラの味がした!」
「本当……確かに、そんな味がする……///」
私達メルティーメイツは、流す汗も甘い味がする。それが海水の塩と混ざって、塩気の効いた味に変わったの。
「じゃあ、今度は私がショコルさんのを味わう番……///」
「言うと思ったよ……さあ来て……///」
ショコルさんの汗の味も、塩気が足されていた。
「何だか、今まで知らなかった事も知っちゃった気がするわね……///」
「そうよね……それじゃあそろそろ上がろっか!」
私とショコルさんは海水から上がりました。ショコルさんは浜辺に戻った後肝心な事を心配していました。
「それでさー、この後どうする?海水まみれの身体で帰るわけにもいかないしさあ……」
「そのために持ってきたものがあるのです」
私はバッグから、2リットルの水道水の入ったボトルを出して、じょうろ付きのキャップを着けて即席シャワーを作りました。
「これで、身体を流してあげるって事なの!?」
「素敵な所を教えてくれたお礼に、まず私から流してあげますね……」
しゃわあああああああ……
私はこの即席シャワーでショコルさんに2リットルの水をかけて、バスタオルで拭いてあげました。
「ふーっスッキリ!それで、バニリィちゃんの分のシャワーもあるんだよね!」
「そう、駅で渡したのがありますよね」
私の身体を流すためのもう一本はショコルさんのバッグに入っています。駅で渡したのがそれでした。
しゃわあああああああ……
ショコルさんのシャワーからは、彼女なりの思いやりの心も一緒に伝わってくる感じがした。
「これで、お互いスッキリしましたね」
「それじゃ、着替えて水分取って帰ろう!」
私とショコルは水着を脱いで、もと着た服を着直して、近場の自販機で飲み物を買って飲んで、また10分かけて駅まで歩いて、電車に乗って私達の町へと帰っていきました。
「ショコルさん、また来たいと思ったら一緒に来ませんか?」
「モチのロンだよ!いつでもまた行こうね!」
* * * * * * *
「……以上が、先日の出来事でした……」
「それにしてもバニリィちゃんは凄かったわね!事前に電車の時間調べるし、上がった後で即席シャワーまで用意してくれるんだからまさに至れり尽くせりだったわよ!」
「……ええっと、今度同じ所に来る時はショコルさんも色々用意してくれると嬉しいわ」
「うん!アタシも今度は即席シャワーとか用意して行くからね!それとね……これから良いニュースだけがあるの!今言うね!」
ショコルは自分のバッグから、何かを取り出しました。
「じゃーん!これなーんだ!?」
「遊園地のチケット……?」
「せいかーい!なんと、あの大人気テーマパーク、『スウィートパラダイスパーク』のペア券が、雑誌の懸賞で当たっちゃったのよーーー!!!」
嬉しそうにチケットを見せるショコルと、驚きを隠せないバニリィ。彼女達の次の行き先はこの遊園地なのでしょう。
「それじゃあ!お土産話たーっぷり期待してねー!」
「こんな私達ですが、これからもよろしくお願いします」
バニリィとショコルは店を出て帰っていきました。
「あの後、私のタオルとショコルさんを拭いたタオル、一緒に洗濯したの……」
「そうなんだ!じゃあ洗濯機の中でもアタシ達は……!」
「……それ以上言わなくていいわ」
店から出て、帰っていく二人を後ろから見つめている人が、二人いました。
「あの亜麻色の髪の子が、カフェイさんの言ってた人なのね」
「ああ、あの時のカフェイさんとの約束、俺達で果たしに行こう」
この二人は、一体何者なのでしょうか……。
第5話 おわり
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