第4話 初めての共同お菓子作り!?

 あなたは喫茶店でいつも通り支度をしていると。


カランカラン♪


 またいつもの二人が来てくれました。今日はおそろいのピンクチェックのお洋服を着てて、なんだか嬉しそうな表情を浮かべています。


「おっはよー!」

「おはようございます。今日は是非とも見てほしいものがあります」


 バニリィはバッグから小袋を取り出しました。中には美味しそうなクッキーが数枚入っていました。


「昨日、ショコルと一緒に作ったのです」

「すごく美味しく出来てるよ!食べてみて!」


 あなたはクッキーを一枚いただきました。




「……もしかして、言葉にならないぐらい、美味しかった!?」

「その表情を見れば分かります。良かった、上手く出来て」

「今日はアタシが、お話してもいい?このクッキーをどうやって作ったのか、今回のお話をちゃんと聞けば、君も本当に作れるようになるかもしれないよ!それじゃあ始めるね!」


   * * * * * * *


 学校の図書室、バニリィちゃんが決まった時間にいつもいる所。アタシも漂ってくるバニラの香りに引き寄せられてついつい立ち入っちゃうの!


「ヤッホーバニリィちゃん!今日のショコル部の時間だよ!」

「あっショコルさん、今日はこういうのを読んでいまして……」


 バニリィちゃんが読んでいたのは、なんとお菓子作りの本。ママのお手伝いやら学校の調理実習ぐらいしか料理の経験が無いアタシでも分かりやすい内容だ。


「私、将来何をするか、まだハッキリ決めてなくて、とりあえず覚えられそうな事は色々試しているんだけど……」

「じゃあ、アタシとお菓子作り、してみる!?」

「えっ……!?」


 アタシの目はバニリィちゃんをしっかり見つめていた。直感的に分かる。彼女には底知れない才能があるって。


「今回のショコル部は、バニリィちゃんと一緒にクッキー作りで決まり!今度の休みの日、バニリィちゃん家に材料持っていくからね!よし決まり!」

「わ、分かったわ……」


 アタシとバニリィちゃんははその日に向けて準備を進めた。


・・・


 休みの日、アタシは初めてバニリィちゃんの家に上がった。


「ここがバニリィちゃんの家……とてもキレイ!」

「でも、二階には上がらないでね、まだちょっと散らかってるから……」

「今日はお菓子作りに来たんだから大丈夫だよ!」


 今はバニリィちゃんのパパとママは出かけているみたい。お姉ちゃんがいるとも聞いているけど、一体どんな感じの人か、想像出来ない。


「さて、これからアタシとバニリィちゃんの初めてのお菓子作りをするよ!」

「今日用意した材料は、バター120g、粉糖120g、卵1個、薄力粉300g、塩ひと匙、クルミフレーク60g、ハチミツ30g……といった所」


 目の前に出される材料。これを順序良く、段取り良く使っていくみたい。


「まずは食塩無しのバターをクリーム状になるまで練ります、ハンドミキサーがあればすぐ出来ます」


ブイイイイイイン!!!


「すごいっ!こんなにトロットロに!」

「クリーム状になったら粉糖を加えてしっかり混ぜます」


 アタシがバニリィちゃんの指示通りに粉糖を入れると、バニリィちゃんはハンドミキサーで混ぜ合わせてくれる。


「次は塩ひと匙と溶き卵三分の一を入れて混ぜます」

「こんな感じかな!」


「クルミフレークと溶き卵三分の一を入れて混ぜます」

「クルミ入ってると味が良くなるよね!」


「ハチミツと残りの溶き卵を入れて混ぜます」

「これでいいのね!」


 バニリィちゃんの読んだ本によると、卵は3回に分けて混ぜるのがポイントなんだって。


「よく混ざり合ったら、薄力粉を加えてヘラで切るように混ぜます。ボウルを回して『ノ』の字を書くように。ショコルさん、やってみて」

「分かった!こんな感じね!」


 生地を混ぜるのは思ったよりもチカラが要る。お菓子作りを経験した人いわく、やればやるほど腕っぷしが鍛えられるみたい。


「なんかポロポロ細かくなってきた」

「そぼろになったらボウルに押し付けて混ぜて固めます……そこで、固めた生地を半分にして別のボウルに移します」

「もう片方の生地はどうするの?」

「ショコルさんの持ってるココアパウダーを適量入れてください、もちろん入れ過ぎちゃダメですからね」

「そっか!もう片方はココア味にするのね!じゃあこれぐらい入れちゃおう!」


ドバッ!


 アタシは生地の大きさに見合った量のココアパウダーを片方の生地に入れて混ぜ合わせた。


「ちょっと多めな気がするけど、まあいいでしょう……あとは、生地を手で平たく整えてラップで包んで冷蔵庫に入れて2時間寝かせます」


 バニリィちゃんはココアの入ってない生地を固めて、アタシはココアの入った生地を固めて、それぞれラップに包んで冷蔵庫に入れた。


「えっと、この生地を2時間寝かせてから型抜きをするんだけど、その間何かしたい事ある?」

「え?そうなの?このまま平べったくして形作ってもいいかなって思ってた」

「生地をしっかり寝かせれば美味しいクッキーが出来るの。それまでの間、とっておきの映画を一緒に見ましょう」

「映画!?なにそれ見てみたい!」


 一緒に固めた生地を寝かせている間、バニリィちゃんと一緒にリビングのテレビで映画を見た。


・・・


「バニリィちゃんと一緒なら、どんな内容でも楽しく見れるよ!」

「そう、良かったわ……さて、そろそろ時間ね」


 アタシとバニリィちゃんは台所に戻り、クッキー作りを再開した。


「冷やした生地を取り出して麺棒で生地を伸ばして……」

「こんなふうにね!」


 麺棒で生地を伸ばす。バニリィちゃんの動きを真似していれば、だいたいなんとかなる気がする。


「型抜きをして、形を作ります」

「丸型、星型、ハート型、パンの形もあるわね」


 色々な形にくり抜かれていく生地。余った生地は丸めて平たくして二人合わせて24枚出来た。


「そしたら30分寝かせます」

「また寝かせるんだ」

「その間は、使った道具を洗い場で洗っておきましょう」


ジャーーーーーー


 使った道具を洗って水切り籠に置いている内に、30分が経過した。


「鉄板の上にベーキングマットを敷いて、その上に型抜きしたクッキーを置いて200℃のオーブンで15分焼いて……」

「いよいよ出来るのね……ワクワク!」


 バニリィちゃんの家のオーブントースターはアタシの家にあるものよりも大きくて、24枚入れても余裕で焼き上げてくれた。


「焼き上がったら、火傷に気を付けて鉄板を取り出して、焼きたてのクッキーをざるの上に置いて冷ませば、出来上がり!」


 バニリィちゃんは普段洗濯物を乾かす用に使っているサーキュレーターを出して焼き立てのクッキーに向けて風を吹かせた。


ゴオーーーーーーー


 ……というわけで完成したクッキーを味見するアタシとバニリィちゃん。


「……うん……美味しい」

「ココア味もすごく美味しくよ!バニリィちゃんもどう?」

「……これも、とても美味しい!」

「やったあ!今日のショコル部、クッキー作り大成功!!!これ、明日いつもの所に持っていこうよ!きっと喜んでくれるよ!」

「良いわね、そうしましょう」


 アタシとバニリィちゃんは残ったクッキーを小さな袋に入れて、アタシはクッキーの袋と一緒に家に帰っていった。


 その夜、メールであのクッキーは両親も美味しいと言ったと報告し合ったのだった。また一緒にお菓子作りしたいな……!


   * * * * * * *


「……という事で、出来上がったクッキーをここに持って来たってワケ」

「出来れば、このクッキー、お姉ちゃんにも食べさせてあげたかったな……」

「大丈夫!また定期的に作っていれば、そのうち機会は訪れるって!」

「それもそうね……」


 あなたは二人の想いが込められたクッキーを受け取ると、バニリィとショコルは帰って行きました。


「そういえばさ、あのクッキー、コーヒーにも合うと思ったんだよね……バニリィ?」

「コーヒーは、お姉ちゃんの事思い出すから、私の前には出さないでくれる……?」

「そ、そうなんだ……なんか熱々のエスプレッソでココロを溶かされただか何だかで……ごめんね……」

「分かればいいのよ、分かれば……」


 第4話 おわり

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