第3話 読書の時間

 今日もお店の切り盛りをして、お客さんを待っているあなた。


カランカラン♪


 おや、またあの二人がやってきましたね。今日はどんなお話をしてくれるのでしょうか。


「おはようございます」

「おはよー!この前もバニリィちゃんと楽しい事したの!」

「今日も、よろしくお願いします」


 今日の二人は制服姿。二人はいつものミルクと、ショートケーキとチョコケーキを頼みました。


「今日も美味しいですね、ショコルさんはまたココアどっさり入れてるけど」

「うんっ!そういえばこの店、ココア大さじ9杯ミルクが裏メニューとして密かな人気を得てるってウワサになってたよ!」

「ショ、ショコル!?」




 し、真相はさておき、このお店も何かと話題になっているみたいです。


「良かったら他のお客さんにもオススメしてあげてね!」

「えっと、今日は私からお話します。この前、学校の図書室で本を読んでいたら、またショコルさんがやって来ました……」


   * * * * * * *


 私達の通う学校の図書室。ここには多種多様な本が置かれていて、この学校の生徒なら誰でも読んだり借りたりする事が出来ます。私自身、部活は帰宅部であり、放課後はショコルさんに会う以前からいつものように図書室に通っているのでした。


「さて、今日読む本は……あった」


 私は本を一冊取り出して、読み始めました。とある男女の淡い恋物語の本を。


「うんうん……ほうほう……はっ……ウウッ……!」


 ある男女の出会いから始まって、楽しい時を過ごしながらも、大きな困難に二人で立ち向かう時もある内容に夢中になって本を読んでいると、どこからともなくチョコの香りがしてきた。この香り、またあの子……ショコルさんだ。


「ヤッホーバニリィちゃん!ショコル部の時間だよ!」

「ショコル部?何よそれ!一体何をする部なの!?」

「バニリィちゃんと楽しい時を過ごす、今アタシが立ち上げた部なの!」

「そ、そうなの……」


 いきなり『ショコル部』とか言われても、私にはとても理解出来ない……けど、ああいうのがあの子らしい所だなとも思っているの。


「それで、今日は何してるの?」

「本を読んでた所です。良かったら、一緒に見ませんか?」

「そうなんだ!見てみたい!」


 私はショコルさんと一緒に本を読んだ。しかし……。


「う〜ん……なんか文字ばっかりで、絵が少なくてアタシにはちょっと分かりにくいなあ……」

「だからこそ、色々な想像が掻き立てられて面白いのよ」 

「そうなの。じゃあアタシ、ちょっと別の本探してくる」

「分かったわ」


 私は引き続き本を読んでいました。しばらくして、ショコルさんが一冊の本を持って来ました。


「アタシ、これ読みたい!」

「え……これって……!?」


 ショコルさんが持って来たのは、幼稚園児が好んで読んでいそうな絵本でした。明るく楽しそうな雰囲気が全体的に広まっていて、私にはちょっと過剰なトッピングのように眩しいです。


「これ、ちっちゃな頃からすっごく好きな本なの!バニリィちゃんも読んでみて!」

「わ、分かったわ……」


 私はショコルと一緒に絵本を読んでみた。確かに、小さい子供にも分かりやすい内容だと思う。けど、ここ最近活字ばかり見ている私には少し新鮮に感じる事も出来た。


「えっと……なかなか、面白かったわ」

「でしょ!じゃあ今度は何を見ようかな!」


 ショコルは先程の絵本を本棚に戻すと、別の本を探し始めた。


「あ……これって……!」


 ショコルは何かを感じ取り、本を一冊持って私の所に戻ってきた。


「今度はこれ見ようよ!」

「どれどれ……わあっ……」


 次にショコルさんが持って来たのは、本を直す職人のお仕事を描いた水彩画による絵本でした。


「これ!一緒に読んでみたい!」

「分かったわ」


 私はショコルさんと一緒に、その本を読んでみました。


「綺麗な景色で、どこか可愛らしさもある……」

「なんかアタシにも分かりやすい気がする……」


 美しい水彩画の絵と、私の心も引き寄せる物語。


「なんだか、少ない言葉でも、お話の世界に入り込めちゃいそう……」

「バニリィちゃんと一緒なら、どんな世界にも入り込めそうだよ……」


 ……気が付いたら、二人で最後まで読んでいた。私は椅子から立ち上がって言った。


「……今日、さっきの小説と、一緒に読んだこの本を借りるね」

「そうなの!でもアタシもそれすっごく気に入っちゃったから、帰り本屋さんで買ってくるよ!今日のショコル部の活動は、この本を読みまくる事!」

「そ、そうなの……まあ良いでしょう」

「明日この本の事、沢山お話しようね!」


 その後、ショコルさんは一緒に読んだ本を本屋さんで見つけて買ったのでした。私は借りた本を一週間かけて読む方が好きなのですが、あの絵本はショコルさんの感性をも大きく動かした。それを今回私も体感して、同じ作品の楽しさを共有する事を経験したのでした。今日の事を自室で手帳に書く私。


「今日は良い恋愛小説も読めて、感情を奮わす絵本も詠む事が出来ました。これもまた、ショコルさんが私にくれた新しい思い出。明日は何をくれるのでしょうか……」


 手帳を書き終えた私は、そのまま眠りについたのでした。 


   * * * * * * *


「……以上が、つい先日の出来事でした」

「そしてこれが、今回話題になった絵本だよ!」


 ショコルはバッグから水彩画の絵本を取り出し、あなたに見せてくれました。


「大好きな本も長く読んでたらボロボロになっちゃうよね!でもこんなふうに綺麗に直せるだなんて!アタシの住む町にもいるかな!もしいたらアタシが昔読んでた古い絵本とかも直してくれるかな!」

「ショコル……今日はいつにも増して早口すぎる……」

「本当に!すごくいいお話だったから!今度読んでみてよ!!!」


 ショコルの迫力に圧倒されながらも、好きな絵本を勧められたあなたは、普段はどんな本を読んでいるのでしょうか。もしよろしければ、この後コメント欄で、皆さんの好きな本を教えてくれると、バニリィとショコルが読みに行くかもしれませんよ。


 今日も心地よい香りが二人を包んでいます。


 第3話 おわり

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