第2話 オシャレしていこう!

 バニリィとショコルが出会ってから、数日が経過しました。あなたはいつものようにコップを磨き、お客さんが来るのを待っています。


カランカラン♪


「こんにちは、マスター」

「こんにちはー!ショコルも来たよ!」


 バニリィとショコル、今日は二人で来てくれました。今日は制服ではなく、私服を着ていました。バニリィは水色地にリンゴがプリントされた白袖のラグランシャツを着て、ショコルは茶色の格子模様のTシャツを着ています。


「いつものミルク、お願いします」

「アタシも同じのを!またココアどっさり入れるからね!」


 あなたは、いつものミルクを二人に差し出すと、バニリィは普通に飲んで、ショコルはココアをどっさり入れて飲みました。普段とは違う姿の二人を見るあなたに、バニリィは言いました。


「この服ですか?先日の休みの日、たまたまショコルと会いまして、一緒に服を買ったのです」

「バニリィちゃんのセンス、今までのアタシには無かったからね!今日はアタシがお話してもいいかな!」

「分かったわ」

「ありがとうバニリィちゃん!今日はたーっぷりとお話するからねー!」


   * * * * * * *


 アタシはショコル・ブラウニー。それほど裕福ではないけど、十分暮らせている家に生まれた。パパとママと三人で暮らしている、一人っ子家庭で、色々な人にグイグイくる気質から、中学まで友達が出来た事が無かった。けど、先日、バニラの香りのバニリィと出会って、秒でお友達になる事が出来たの!その日からアタシの人生はさらなる勢いをつけて加速していった。


「せっかくの休みだし、ちょっと買い物でもしよっかな」


 あまりオシャレな服は持ってなかったので、漆黒のワンピースを取り出して着替えた。黒は太陽光を吸収するから暑くなりやすいみたいだけど、アタシはそれほど気にしてない。紫外線対策はクリーム塗るだけで十分だし!


「今日の朝食は、チョコグラノーラとチョコフレークにココア大さじ3杯のミルクをかけたやつ!」


 しっかり朝食を済ませ、財布とバッグを持って出発した。


「それじゃ、行ってきまーす!」


 休日を楽しむパパとママに挨拶して出発した。


・・・


 っとまあ、こんな調子で外に出たんだけど、アタシ何しに来たんだっけ?のっけからノープランだった。


「アタシ、ここでなんかするんだったかな……おや……この香りは……!」


 遠くからバニラの香りが漂ってきた。このバニラの香り、アタシには分かる。まぎれもなくあの子だ。アタシは香りのする方へ向くと……!


「バニリィちゃん!みーつけた!」

「ショ、ショコル!?どうしてここに!?」

「ここで会えたのも、きっと運命だよね!」

「そ、そうかもしれないわね……」


 どうやら今日のバニリィちゃん、アタシを見ても逃げようとはしていないみたい。アタシはバニリィちゃんに向かってひと思いに真っ直ぐ走り出した。今回は逃げる様子も無くアタシを受け入れようとしている。アタシは彼女の想いに応えるように走った!


「すごい迫力で迫ってくる……」

「バニリィちゃーーーーん!!!」


ダアァ……ボフッ……!


「会いたかったよー!バニリィちゃーん!」

「また、グイグイくる、ほっぺスリスリしてくるそれにしても、お胸も大きい……///」


 これでアタシの今日するべき事は決まった。大好きなバニリィちゃんと一緒にお出かけするんだ!それにしても、今日のバニリィちゃんの服装は、クリーム色のワンピースで、バニラの香りも引き立っていた。


 ショコルの走る速度は、通常の三倍に感じた。(バニリィ談)


「バニリィちゃん!今日は何するの?」

「これから、ブティックへ寄ろうとしていたの」

「ブティック?って事は新しい服を買うのね!アタシも来ていい?」

「いいけど、店の中では大人しくしててね」

「はーい!」


 バニリィちゃんはアタシの保護者かい……


 なんて思いながらも、アタシはバニリィちゃんと一緒にブティックへと入った。こういう店、入るのは人生初だから、正直メッチャ緊張している。一方でバニリィちゃんは慣れている様子で店に入った。


・・・


『いらっしゃいませ』


 お店に入るなり店員さんが挨拶した。緊張が少し和らいだ。この店はこの辺りでも取り分けハイソな身分の人が立ち入る所なので、アタシみたいな平民には敷居が高い気がする……お店の服の値段もチラッと見えたけど、アタシの財布の中身じゃ買えないものばっかりだった。バニリィちゃんの家族、一体どんな仕事をしているのやら。しかし、バニリィちゃん、お店の服を見てもあまりピンと来ない様子。


「……今日は私が着たいと思うものが見当たらないな……」

「アタシだって、これ買えそうと思ったら、ゼロがもうひとつ付いているから買えないし……ん、あれは!?」


 そんなアタシの目に入って来たのは、セール品のワゴンだ。どうやら売れ残って安くなっているみたい。そこに、アタシの感性を震わすものがあった。


「このチョコレート色の格子模様、アタシにピッタリ合いそう!」

「そ、そうなの……あ、これ……何か惹かれるのを感じる……!」


 アタシが気に入った服を取り出すと、バニリィちゃんは水色地にリンゴがプリントされた白袖のラグランシャツを見つけたの。


「ショコルさん、これ一緒に買いませんか?」

「いっ……いいよっ!これとこれならアタシのお小遣いでも普通に買えるし!」

「いえ、自分の分は自分で買います」


 アタシは必死に嬉しい感情を抑制していた。その商品を持ってレジへ行き、一緒に服を買ったのだ。


「ありがとうございましたー!」

「バニリィちゃん!早速着ていこう!」

「いいけど、下はどうするの?」

「あ……考えてなかった……」

「今日は私がおごってあげます。次からは気を付けて下さいね」


 バニリィちゃんは自分に水色のショートジーンズを買って、アタシにはカーキのショートジーンズを買ってくれて、あらためて着替えて店を出たのだった。


 今アタシが着ているシャツの格子模様が、アタシの大きな胸を誇張しているように見えた。バニリィちゃんのラグランシャツの真ん中の林檎りんご刺繍ししゅうもバニリィちゃんの控えめな胸を美しく見せている感じだった。


「こういう服着るの初めて!ありがとう!バニリィちゃん!」

「今日はいい服が無いなと思ったら、ショコルさんのおかげで見つける事が出来た。私からも、ありがとう」


 その言葉を受け取ったアタシは言った。


「でもさ!やっぱり!一番大切なのは、値段よりもこの服を作った人がどんな思いを託したかだと思うよ!」

「……そ、そうよね!今日は新たな価値観を切り開けた気がする。これから日が暮れるまで一緒に遊びませんか?」

「わーい!やったー!するー!いっぱい遊ぶー!!!」

「ふふ、可愛いわね、ショコルさんは……」


 この後、日が暮れるまで沢山遊んだ。


   * * * * * * *


「そして今着てるのが、この服なの!」

「私も、最近お気に入りなの」


 二人の服を見つめるあなた。何を思ったのか、二人にさらにミルクをサービスしてあげました。


「あ、ありがとう、ショコル、たまには普通に飲んで本来の味を楽しんでみてはどうかしら」

「分かった!飲む!ゴクゴク……やっぱ物足りない!ココアどっさり入れちゃう!!!」


ドバーーーーーッ!!!


「ゴクゴク!ぷっはーーーうめーーー!!!」

「ショコルさん、本当にそのココア好きなのね……」


 新しい服を買った二人は、これからも楽しく過ごす事でしょう。今度はどんなお話が聞けるのか、楽しみにしてて下さいね。


 第2話 おわり

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