あじさいは降る/祭藤雨歳

祭藤雨歳(saitousai)

あじさいは降る

日常的音はぼやける 輪郭が欲しくて次回予告を聞く


祈るようすり合わせている 流すまで ゆびさきに行き渡らないまま


本日は手帳によればわたくしは 7個のタスクで生き延びるらしい


じわじわとしわしわになる 君のいない電気のつかない孤独の一時


点滴のように落ちゆく蜂蜜の先のフレンチトーストが温い


あのひとは寂しがってくれるかなあ 早く忘れてくれたらいいな


ねえ、そこの荷台に私も載せてって

白い廃品回収車さん


何回も何度も忘れろ 瘡蓋を剥がさなきゃ今普通にならなきゃ


オパールの一部に君と僕がいる それがいいよ それでおしまい


現実を生きてた間の伴奏のモルヒネのような歌が聴こえない


いくつもの終わってしまった、が おれを 襲う この先も、この先も


7の字の横線がつなぐ私たち いつかの海を渡ってきたの


まばたきをするようなふりで目を閉じて なるべく目を合わさずにいきてる


既読をつけるのはある種の相槌で 遠くのタップに「送信」を待つ


可愛いと交換し合った便箋の遠い記憶とケロリの末尾


エスパーじゃないし現実だし君の好感度メーターは見えないし


知らなくていいし言わなくてもいいよ 君がそう言ってくれたように


きみがいた 夜一緒に傘を買って 見えなくなるまで手を振った駅


僕たちはどこまでもあべこべだけど 隣で月の光を聴くの


忙しなく動く心身は知ってる 夜、あじさいはわたしに降ること

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