第2話 密談のカフェ

午後の陽射しが優しく窓ガラスに反射し、「カフェ・デュ・ミラージュ」の内部を暖かく包み込んでいた。店内には、アンティーク調の家具や装飾が並び、時間がゆっくりと流れるような落ち着いた雰囲気が漂っている。この隠れ家的なカフェは、知る人ぞ知る大人のための癒しの空間だ。


瀬川大樹と佐伯夏美は、カフェの窓際の席に座っていた。窓の外には、新京都庁の近未来的なビル群が広がっている。カフェの静けさとは対照的に、街は選挙の熱気で溢れていた。


「さて、大樹君、どんな話かしら?」と、夏美はカフェラテを一口飲みながら聞いた。彼女の長い黒髪が光を反射して美しく輝いている。


大樹は持っていた書類を慎重にテーブルの上に広げた。書類には、新京都庁内で進行している不正の詳細が記されていた。特定の業者への便宜供与や、選挙資金の流用に関する証拠が揃っている。


「これが、今の新京都庁の実態です。これを公にしなければ、都政の腐敗はますますひどくなるでしょう」と、大樹は声を抑えながらも力強く言った。


夏美は書類に目を通し、真剣な表情で頷いた。「これは重大な問題ね。でも、これを公にするには、確実な証拠が必要よ。もう少し調査を続けて、全ての証拠を揃えましょう」と、彼女は決意を込めて言った。


「分かりました。僕も全力で協力します」と、大樹は力強く答えた。


その時、カフェのドアが開き、一人の男が入ってきた。男は40代前半で、短髪に筋肉質な体格。黒いスーツを着ており、冷たい目つきをしている。彼はカウンターに近づき、店員と何やら話をしている。


「あの男、何か怪しいわね」と、夏美は小声で言った。


「確かに…。でも、今は目立たないようにしよう」と、大樹は夏美に小声で応じた。


その男は、カフェの奥の席に座り、スマートフォンを取り出して何かを打ち始めた。大樹と夏美は、その様子を気にしつつも、会話を続けることにした。


「これからどう動くか、具体的な計画を立てましょう」と、夏美は言い、カフェラテを再び一口飲んだ。


「まずは、追加の証拠を集めるために、内部の協力者を見つける必要があります。信頼できる人が必要です」と、大樹は提案した。


「そうね。私も取材を通じて、信頼できる情報源を探してみるわ」と、夏美は頷いた。


その時、カフェのドアが再び開き、一人の女性が入ってきた。彼女は短いボブカットの髪型で、知的な雰囲気を漂わせている。彼女は夏美に気づくと、まっすぐに二人の席に向かってきた。


「夏美、久しぶりね」と、女性は笑顔で言った。彼女は白いブラウスに黒いスカートというシンプルな装いで、落ち着いた雰囲気を醸し出している。


「美奈子さん!こんなところで会うなんて。こちらは瀬川大樹さん、新京都庁の官僚よ」と、夏美は紹介した。


「初めまして、美奈子と申します。私はフリーのジャーナリストです」と、美奈子は名刺を差し出し、丁寧に挨拶した。美奈子は30代半ば、短いボブカットの黒髪が知的な印象を与える。彼女は大学時代にジャーナリズムを専攻し、卒業後は国内外のさまざまなメディアで活躍してきた。そのため、広範な情報ネットワークと鋭い洞察力を持っている。


「初めまして、瀬川です」と、大樹も名刺を差し出した。


「実は、美奈子さんも新京都庁の不正を追っているの。彼女の協力を得られれば、もっと多くの証拠を集めることができるわ」と、夏美は提案した。


「それは心強いですね。ぜひ協力してください」と、大樹は感謝の意を示した。


美奈子は頷き、「一緒に真実を暴きましょう」と力強く言った。


こうして、新たな協力者を得た大樹と夏美。彼らの戦いはまだ始まったばかりだった。新京都の未来を賭けた壮絶な戦いが、ますます深まっていく。その闇の中に潜む真実が、少しずつ明らかにされていく。

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