第10話 勇者の聖剣

 今や、魔王の勢力は世界の半分を収めるほどまでに拡大を続けており、人類の存続の危機が差し迫っています。

 勇者候補は人類の危機を救うために生まれました。


 勇者候補が勇者様へ栄転するためには重大な一つの条件を満たさなければなりませんが、その条件を満たせた勇者候補は約百年間も現れていません。


 また、本題となる重大な一つの条件達成に挑戦するためにも、更なる細かな条件が設けられており、それらを満たすこともまた容易ではありません。


 細かな条件は全部で三つ。


 一つ、道徳的な資質や正義感を持ち、人々を守る意志を示すこと。


 二つ、重要な使命を果たすための冒険心や決断力を持つこと。

 

 三つ、勇気と犠牲を厭わない覚悟を持つこと。


 どれもこれもが抽象的な判断基準にはなりますが、それらの細かな条件を満たせるか否かを判断する機関こそが、勇者育成学校——セイクリッド・アカデミーなのです。

 また、モルド様によると、勇者様を見つけ出す方法は他にもあるみたいです。

 それは資質を持った賢者、僧侶、戦士が直感で勇者を見つけ出す……という、これまた何とも曖昧なものでした。

 更に言えば、勇者様と賢者と僧侶と戦士の三名は互いに惹かれ合う運命らしいです。


 ただ、モルド様の提唱には全く裏付けがなく、実際はアルス王国のみならず世界的に参照にはしていないようですが。


 話は戻りますが、三つの細かな条件を全て満たした勇者候補は、やがて王宮へと呼び出され、古の祠に祀られる聖剣を抜く儀式に招聘されます。

 ただ、招聘されたからといって必ず聖剣が抜けるわけではなく、過去数百人が挑戦しては全てが失敗に終わっています。


 それこそが勇者様になるための本題となる一つの条件です。

 勇者様になるためには、聖剣を抜かなければなりません。


 ちなみに、聖剣の儀式が始まったきっかけは今から数千年前に遡ります。

 当時の勇者様は単騎で魔王に挑み敗戦し、帰還した後に自らの生命の全てを一振りの剣に込めたそうです。

 いつしか勇者の聖剣と呼ばれるようになったそれは、勇者候補が勇者様に栄転するための関門とされました。

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