白き世界へようこそ

霜月

気になるものに手を伸ばして

 あぁ、なんてキラキラした世界なんだ。



 真っ白な世界には隙間なく本が並ぶ。

 小刻みに更新される本たち。新しい本は私の目の前へやってくる。どれどれ、後で読むから待っていてね。本を優しく撫で、世界を見て回る。



 とん、とん、とん。何かが積み上がる音がした。見に行ってみる。




 己をみてくれと煌めく企画。たくさん積み上げられ、崩壊しそうだ。この中から掻き分けて本を探すのは大変だな。時間のある時に探しに来よう。




 競り合うように新しい小説がこの白い世界へ落ちてくる。小説たちは自信に満ち溢れ、光り輝き、宝石のように美しい。



 どれ、覗いてみよう。

 占い師がその先にある未来を視るかのように。目に留まるものを手に触れ、作品とリンクする。



 文字の世界。試行錯誤して作られたストーリー。拙い文章でもその人の作品への愛を感じる。



 私は読んだ。

 敬意を表し、赤いハート情熱を作品へ乗せる。作者への微々たる力添え。頑張って欲しい。読み手からの愛の贈り物。



 さっきの山積みの企画置き場へ行こう。

 私は来た道を戻る。



 目に惹かれる企画を手に取り、その世界へ足を踏み入れた。



 すごい。企画の中の世界には内容に沿った作品が一面に広がっている。それどころか、またひとつ、またひとつと本が落ちてくる。気になる見出しの小説とリンクする。



 面白かった。

 指先からこぼれ落ちる星々。作品は星に包まれ、光を帯びる。光が集まれば集まるほど、作品はこの白い世界の天高くへと昇っていく。



 白い世界を歩きながら考える。何故この世界に来たのだろう。わからない。私は本が好きだったのだろうか? まぁ、漫画は好きだがね。



 理由はよく分からない。

 ただ、惹かれたものを手に取り、読む。



 私は白い世界に訊いた。




「私も何か書くことが出来るのだろうか?」




 答えてはくれない。目の前に白い四角いページが広がった。脳で考えたことが字となり、ページに書き込まれていく。



 面白い。




 書き込みが終わり、青いボタンに触れる。




 バサ。



 目の前に一冊の本が落ちた。私が先ほど書いたものだ。こんな私でも何か作り出すことが出来るのか。

 私はもう一度、目の前にページを開き、書き込みを続けた。




 書くことも、読むことも止まらない。




 私は気づく。

 あぁ、根本は本が好きだったのだなと。

 だからここにいるのだ。




 だからここへ居続けるのだと。




 私は手を止め、この白い世界を歩き始めた。




 全く、なんの金にもならないと言うのに。

 時間と労力だけが消費される。





 なのに何故こんなに楽しいのだろうな。

 不思議だね。



 

 目の前には椅子とテーブル。

 私は椅子に腰掛け、脚を組み、片手で頬杖をつく。




「カクヨムの世界へようこそ。私はカクヨムの案内人。霜月だよ。どうぞよろしく」案内人は片手を出した。握手を求めている。




「初めて来たの? 書く? 読む? あぁ、カクヨムになってしまったね」案内人は額を押さえ、笑う。




「自分から何かを生み出すというのは面白い。それは凄いことでもある。それが目に見える形で認められるというのは素晴らしいことだとは思わないか?」案内人は立ち上がり前へ進む。




「それがこの世界だ」



 案内人は手を広げた。その瞬間、案内人の背後に視界を覆い尽くすほどの本が突然現れた。凄まじい。こんなにも世の中には本が溢れているのだ。




「さぁ、執筆を始めよう」



 案内人は目を細め、薄い笑みを浮かべた。







 あとがき。

 カクヨム自主企画。占い、根、宝石を含む短編企画、私の短歌からつくるという企画参加に向けた短編。


 作者が登場すると言う異質なファンタジー要素になっているが、カクヨムの運営とは何も関わりはなし。

 

 少し奇抜な設定だが、カクヨムの中へ入ったらを想像して作った作品である。


 

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