私は貴方の日記帳? 〜あなたの話は聞き飽きました〜
白雪なこ
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「その頃、リリスは、そそっかしくて。今もそそっかしいけど。あっ!あれ?あそこで転けた子、リリスじゃないか!?そうだ、リリスだ!僕が助けてあげないと!ちょっと行ってくる!」
いつもダラダラのそのそ動くと叱られているらしい人が、シュビッビューンという感じで走り去った。
王都騎士学校へ入学予定と聞いています。その動きは、現在通われている入学準備学校の訓練の場でみせた方が良いのではないでしょうか。そしてここは走るの禁止です。
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「あ、聞いてくれよ。昨日出かけようと家を出て少し歩いたところで、リリスにバッタリ会ってさ。何だか困ってる様子だからどうしたのって聞いたら、迷子だって。ほんと、可愛いよね!
僕の知っている店にハンカチを買いに行きたいって言うから、案内してあげて。どれも可愛いから選べないって困っているから、選んであげて。お金足りないかもって言うから、買ってあげたんだ!
その店を出た後、2人同時に喉が渇いたって声に出しちゃって、ふふふ、大爆笑だよね。
露天で人気のジュースと揚げ菓子買って、中央広場の噴水前にあるベンチに座って食べたんだ。その後2人でまた街を歩いて。しばらく歩いて疲れたなと思ったところで、ここに来る予定があること思い出しちゃってさあ。はぁ。リリスに悪いことしたなぁ」
リリスさんが10歳の頃に引っ越してきた街で、家から徒歩5分の距離にある貴方の家の近くで会ったのですよね?職務に忠実な門番に追い払われ、敷地の内には入れてもらえないけれど、ほぼ毎日通ってくるとか。迷子?それは可愛いではなく、病院に連れて行くべき症状なのではないでしょうか?結構進行していると思われますよ。知り合いのおばあちゃまがそんな感じでしたから、知ってます。
買い物は、それ、完全に買うように誘導されていますよね?
ここに来る予定は……思い出さないなら、永遠に思い出さない様、お願いしたいです。私の話ではないですが、一般的に、来る来ないはハッキリしていただかないと困るんですよ。待つ方は誰でも。こんなこと、貴方もリリスさんも知らないでしょうね。非常識ならご存じかもしれませんが、なんせ常識ですから。仕方ないです。
ちなみに、私は貴方を待っていません。ご存じないかもしれませんが。
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「今日は、来る途中にリリスに会って、挨拶してたら、虫が出たらしくて。それで、リリスが驚いてさ。きゃあって、飛び跳ねて、転けそうになったんだけど、ちょうど僕の立っている場所だったから、慌てて抱きとめたんだ。そしたら、やだ、あたしったら、男の人の胸に飛び込んじゃった恥ずかしいって!そう言われるとこっちも恥ずかしくなるよね」
今日
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「そういえば、久しぶりに叔父様にお会いしたら、最近暑くなってきたけど、毎日体力作りの訓練頑張っているのか?よく焼けて引き締まってきたなって、褒められたんだ!そういえば、ここ数年、リリスと一緒によく歩いたなと。リリスに会った時にその話をしたら、体力作りを一緒にできて嬉しいって。可愛いよね。笑顔の歯が輝いて見えたよ」
確かにリリスさんとの、朝から夕方まで、毎日欠かさずの街歩きは、訓練になってるかもですね。
ワー、スゴーイ!(棒読み)
今日は、気になっていたことがわかり、スッキリしました。
2人して、黒光り&白い歯!
マーツシゲルンのミニコピーコンビとして、劇場に出してもらえるんじゃないでしょうか。
ガンバレー!(棒読み)
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「昨日、久しぶりに家に帰ろうとしたら、家の近くにリリスがいたらしくて。俺を見つけて飛びついてきたんだ。夕方で、暗くなってきていたせいかな?そこに誰かが立っているなんて全く気づかなかったから、驚きすぎて、悲鳴あげちゃったよ!
近所の人まで出てきたから、慌てて逃げて。その後、リリスといつも行ってた噴水前にあるベンチで話していたんだけど、急に俺に会えなくなって、どうしたのかなって心配して、
騎士学校ってどこにあるのか知らないって言うからさ。
その後、家のものが俺を呼びに来てさ。近所の人から俺が学校から帰ってきてたと知らされたらしくて、探していたって。家でちょっと怒られて参ったよ。この近くには昔から不審者がいるから気をつけろって。夜は特に、闇に紛れているから怖いらしい。驚いて落とした金とか食材とかが、消えることもあるって。物語に出てくる魔法使いみたいでびっくりだよね。あ、リリスだ!黒のワンピースだと昼間は目立つね!キョロキョロ何か探しているみたいだから、俺も手伝ってくる!あ、このクッキー食べないよね?もらって行くね!」
全寮制の王都騎士学校の帰宅許可は半年毎ですから、本当に久しぶりですよね。闇に完全に紛れるとは、リリスさんは、マーツシゲルンを越えられたのですね。もっと焦げるのか、今がマックスレベルなのかが気になります。まあ、私の愛読書「高貴なる漆黒」に出てくるジャック裁判官のガウンの色には負けると思いますけど。あ、ジャック様の漆黒のガウンは、公正を象徴しているのですよ。黒色は他の色に染まりませんので。
貴方は騎士学校で毎日訓練しているはずなのに、マーツシゲルンじゃなくなりましたね、訓練……サボってるんでしょうか。退学にならないと良いのですが。
リリスさんは騎士学校に通うと聞いても、これまでの入学準備学校の様に、週に数回数時間、自宅から通うだけだと勘違いしてたんでしょう。馬車を乗り継いでいくなんて、お金もかかりますし、行けないとわかって良かったのでは?仮に毎日通える距離だとして、王都騎士学校の前に立って貴方を待っていても、寮生の貴方は外に出てきたりしないでしょう?その前に、王都騎士学校なら、門の前だけじゃなく、塀沿いでも、毎日通って立ち続けたら、通報というか、すぐに捕まって取り調べされると思いますから、諦めてもらった方が良いと思います。
ご自宅のご近所の不審者に関しては。不審を通り越して、追い剥ぎ?
関係ないですけど、僕から俺に変わったのですね。僕より俺が格好良いんですよね。聞かなくてもわかります。うちの可愛い
クッキー泥棒……それは
私も通報したいです。貴方も是非取り調べされてきてください。
***
「最近リリスに会わないって思ったら、手続きの為に連れて行かれた、転校先の学校のある街でバッタリ会ったんだ!なんだか雰囲気、色?が違ってて、リリスだとわかんなかったよ。小さい頃、路地裏に座り込んでいるのを見た、占い師の婆さんみたいだった!俺は全く気づかなかったんだけど、名前を呼ばれて、リリスだってわかったんだ。びっくりしたよ。でも、なんだか大勢で移動中みたいで、大きな馬車に乗ってどこかに行っちゃったんだ。迎えに来てと叫んでたけど、どこに行けば良いのかなあ。俺、もしかしたら、リーダーになるかもしれないから、忙しいんだけど。それに加えてリリスも探さないといけないとなると、ここにもなかなか来れないだろうなぁ。明日には学校のある街に引っ越ししちゃうし」
王都騎士学校は、退学になったそうですね。ご家族からお聞きしました。転校先は民兵の訓練所ですので、学校ではありません。単位もありません。良かったですね。少し通えば、訓練終了で、辺境に派遣だそうです。大丈夫。まずはリーダー目指して頑張りましょうという意味で言われただけです。エリート教育を受けたわけじゃない人が、いきなり長がつく役職に就けるわけがありませんので、当然隊長にもなれません。訓練所で判断した適材適所だそうですから、多分ひたすら穴を掘る役とかにつけてもらえますよ。大丈夫です。
更にご安心ください。もう、ここには来れないと思います。辺境兵はお休みの日も待機場所が決まってますからね。貴方の家も辺境に用意されるらしいです。本当にもうここには来なくて良いですよ。最初から来なくて良かったんですけど、勝手に来てましたよね。営業はしていませんけど、営業妨害だと思います。
そもそも貴方の話は聞き飽きましたし、私は貴方の日記帳ではないのです。
少し前に、貴方のご実家から、職場に
「アリスさん、受付カウンター業務交代するわ。お昼行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
王立図書館勤務のアリス・ブッカーは、総合受付案内のカウンター内にある椅子から立ち上がると、足早に職員食堂に向かったのだった。
fin
プチ補足:
王都の端っこ住まいの少年少女。中央市場は王都の真ん中。王立図書館は中央市場より少年たちの住まい寄り。王都騎士学校は、少年たちの住まいから、王都の中央を挟んだ反対側。(広い敷地が必要なので、王都という名前はついていても、ど真ん中にはない)
私は貴方の日記帳? 〜あなたの話は聞き飽きました〜 白雪なこ @kakusama33shiro
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