三話 みるいろショコラータ

 翌日。日曜なので今日も休日だ。


 昨日一緒に寝るというイベントをこなしたのにも関わらず、彼女は平然としている。普通に一階にノートPCとヘッドセットを取り出して、ゲームパッドを握っていた。


「瑠衣、何のゲーム?」

「ソードウェイブオンライン。MMO」

「ああ、SWOね」


 俺でも知っている有名タイトルゲーだった。


 ソードウェイブオンライン。通称SWO。ジョブシステム性のごく普通のオンラインゲームだが、そのコンシューマーゲームのような操作性で取っつきやすく、システム周りの快適さ、運営のレスポンスの早さが有名となり、ネトゲと言えば、との代表格。基本はオープンワールドアクションMMORPGだ。広大な惑星を手探りで探している感覚が堪らないんだとか。


 知識としては頭にあるが、実物を見たのは初めてだった。


 実際画面を見ると、綺麗だった。可愛いキャラが乱舞のような攻撃をしていて、目にも鮮やか。素早いスティック操作とボタン捌きが、彼女の練度を物語っている。


「面白そー」

「是非! 一緒にやろう……!」


 目を輝かせながら鼻息も荒く迫る彼女に気圧されつつ、頷く。


「お、おう……俺のPCで動くかな」

「ちょっと見せて」


 彼女はノートPCを置き去りにし、俺の部屋へ。俺も付いていき、デスクトップPCの電源をつけた。画面がすぐに立ち上がる。


 ロックを解除すると、彼女は手慣れた様子でスペックを表示させる。さすが慣れてるだけあって尋常じゃない速度だ。


「……なるほど。グラボもミドルハイ……画面は、2k……全然いけるよ」

「そっか。でも俺パソコンに刺すコントローラー持ってないんだよなあ。買おうかな」

「そこのプレイングソウルコントローラーが使える」


 有名ゲーム機プレイングソウル5の抽選に無駄に当たったのは良いものの、特にやるゲームもないので物置と化していて、コントローラーも放置していた。白のそれを持ち上げる。


「これPCで認識するのか?」

「するゲームとしないゲームがある。プレソに互換があるゲームはそれで遊べる。SWOもちゃんとプレソ5で遊べるよ?」

「でもオンラインゲーはプラン入んなきゃだろ?」

「まぁ、うん。パソコンからがいい」


 俺は早速インストールを始め、コントローラーをPCに接続。ドライバを入れて認識させ、準備完了。ダウンロードが終わるまで手持無沙汰で、瑠衣に話題を投げてみる。


「瑠衣はネトゲ好きなの?」

「趣味のひとつ。ゲーム、好き」

「おおー。俺も好きだぞ?」

「ファッションオタクのくせに」

「さり気にファッションオタク見下すじゃん……」

「そんなところも好きだよ」

「え!? 好きなの!? あんな唾棄すべき表情をしてたこの二秒間の間に何があったんだ!?」


 相変わらず瑠衣は意味わからん。そう言うところも可愛いんだけど、なんというか、本当に一緒にいて癒されるんだけど疲れるというか。うん、矛盾だな。


 さておき、爆速の回線のおかげでDLはすぐに終了。インストールして、プレイしてみる。画面にでてきたのは、まず性別。んで下の項目は容姿に関連するものだった。IDネームとキャラネームは知らないけど、IDネームは被ってたら使えないか……よし、適当に。


「フランスパン好きなの?」

「いや、そうでもない」


 俺のIDネーム、『フランスパンかってぇわ』は無事に被ることなく通せるようだった。


 次の問題に取り組まねばならない。


「……キャラクタークリエイトか」

「うん。めんどかったらオートできるけど」

「まず、性別は男」


 決めようとすると、意外そうな顔をする瑠衣に思わず目がいった。


「え? 男の人って可愛い女の子のお尻見ながら冒険したいんじゃないの?」

「いや自分の分身だから、男なら野郎なんじゃないの?」


 そう返すと、彼女は細い顎に手を当てた。よくやるこの仕草は癖のようなものなのだろうな。


「ちょっとその解釈は驚いた。一般人ってそういう考えなんだ……」

「う、うーん。俺が一般人かどうかは怪しいが……」

「そうだね」


 いやそうだねってあんた。一般的だと言ってくれよ。


「えー、男性オート、君に決めた!」

「おお、チャレンジャー」


 スパッと出てきた。ピンク色のモヒカン。下半身ほっそいけど上半身が異様にたくましい。


「次」

「面白かったのに」


 次は何故かガチムチオヤジ。もっとこう、ないのか。青年っぽい奴。


「次」

「面白かったのに」


 つい先ほどみたやり取りをしながら、再び容姿変更ランダムボタンをクリックする。


 そんなこんなで、七回くらいチェンジして、明らかに瑠衣が退屈してそうだった。うん、ごめん。でもこんな珍妙なやつらに感情移入できないんだ。


「じゃあ、次で決める!」

「よろしく」


 パッと出てきたのは、藍色の髪の……美少年? 白い肌に青い瞳、なんというか、なで肩で、華奢で……瑠衣にそっくりなんだけど男の子。


「よし」

「よくない」

「なんで?」

「わ、私に、なんか似てる気がする」

「でもこれ野郎だよ?」

「別のにして。な、なんか、この後水着とか装備させられたら、ちょっと恥ずかしいくらいに似てる……」

「えー、どうしよっかなー」

「えい」


 あ、ランダムボタン勝手に押しちゃったよこの子。


 産出されたのは……また、妙な奴だ。前髪が長くて顔が見えない。なんか、よくあるギャルゲーの主人公的なやつ。その手のゲームは数本経験していたが、全部の作品がまるでAVの顔出し禁止女子を隠すように顔が隠れていた。恐らく没個性にさせたかったんだろうけど絶対悪目立ちするって。あの髪型風紀の厳しい学校なら一発アウトだぞ。


「これでいこう、ザ・ギャルゲー主人公」

「名前もこれ主人・公でいいや」

「面白かったから採用。戦闘スタイルはどうする?」

「こいつは女の子を攻略するヤリチンだから魔法使いは外して……大剣使いにしよう。物理特化だ」

「おお、SWOは魔法が優遇されてるのにチャレンジャーだね」

「決定し終わってから後悔するようなこと言わないでくれ……」

「最強は魔法だけど物理特化もかなり強いから。今割りを喰ってるのは間接攻撃職かな。弓とか。半端なダメージだし距離とっても攻撃当たるしね。その代わりこまごました回復とかできたりするけど」

「なるほど」


 機会があったらそっちも触ってみたいな。


 というかソードって名前付いてんのに魔法強いんかい。騙されたじゃん。


「ん、ID覚えた。後でチャット送るからフレ登録しよう。後は色々やってみて」

「そうだな。教えてくれてありがと、瑠衣」

「ううん、同じ話題ができるのは楽しそうだし。それに……私も、一緒にいれて楽しかったし」

「ん? すまん、最後の方なんて?」

「この難聴系主人公」

「唐突になんの謂れもない俺にすげえ手投げ弾飛んできたぞ!?」


 彼女は最後に軽く舌を出して去って行った。何あの挙動、可愛過ぎるだろ。


 ともあれ、俺は初めての本格的ネトゲを前に、テンションが上がっていた。


 よーっし、やっちゃるぜ!





 その後、夜になるまでぶっ続けで狩りをしまくり、下級職のマーシナリーがカンストした。上級職にジョブチェンジできるらしい。斧も使える勇者と、大剣一本だが高火力な大傭兵になれるらしい。


 瑠衣と交換した通話アプリの着信。


「なんぞ」

『真面目にやってたらもう下級職はカンストに近いはず。どう?』

「おう、丁度選んでるとこ。大傭兵になりたいんだけど」

『それオススメ。そこから最上級の神将になるといいよ。大剣特化がいい』

「分かった、まず1キャラ目はその通りやってみる」

『楽しい?』

「おう、楽しーぞ。敵も程よく手ごわいし、やり応えある。なんかマルチに参加できるらしいけど……」

『一緒に行こう。フレンドID送る』


 同時に、画面内で通知。


「この、『カオスジャム』っていうのが瑠璃?」

『そう。フレンド登録して、次のPT承認を押して』


 ……サーバーは同じようだった。瑠衣が移動したのかはさておき、カオスジャムと同じPTに入る。


 キャラのネームのところには玻璃と表示がある。あれ、カオスジャムじゃなかったっけ?


「なんだこれ? 玻璃? 誰?」

『ああ、多分IDネームとキャラネームで戸惑ってるんでしょ? ギルドのチャットはID、PTチャットではキャラネームで表示されるから、覚えて』


 ヤベェ、俺のID『フランスパンかってぇわ』にしたんだが、これモロに見られるのかよ。もっと考えて付けりゃよかった。キャラの名前だけじゃなかったか……。


 PTに参加。玻璃は……なんかロリっぽい白髪のキャラクターだった。女の子。なんか衣装も凄く凝ってて、何ていうのか。ピンク色のゴシックロリータ……甘ロリ? みたいな感じで、とても華々しい。無駄にマッチョで無個性ながらもどことなくむさくるしい主人・公が何だかとても残念に見えてくる。


「瑠衣は装備カッコいいな」

『まぁ、これ迷彩だから。本当はもうちょっとこの杖宝石でじゃらじゃらしてる』


 シンプルな箒型の杖だとおもったが、そういうのもあるのか。そういえば装備スロットに迷彩って項目がある。


 マッチングはほぼ一瞬。十六人のクエストが始まった。デカい竜が吠えている。


『とにかく前に出て殴って!』

「了解! あれ、瑠衣も俺と同じレベル?」

『レベルだけ同じに調節されるの。まぁ武器はそのままだから差が出るんだけど』


 大傭兵になった俺も最大レベルである40レベルまで引き上げられている。今までに見たことないダメージを叩きだすキャラに、俺は割と興奮しながら自己強化の後にあらん限りの攻撃スキルを叩き込んでいく。


『うん、初心者にしては良いムーブ。死んでないし。まぁダメージはお粗末だけど』

「しゃーないだろ始めたばっかなんだから。でもなんか、みんな強くね?」

『だね。周りも最上級職だらけだし、すぐに終わる』


 確かにゲージの減りがえげつない。特に馬に乗ってる奴の槍の攻撃がマジでえぐい。ゲージがゴリゴリ減っていく。


 何とか倒して、全員がディールというものを行うようだ。


「ディールって何?」

『これが欲しい! ってのに投票して、抽選が行われるの。当たった人だけが持って帰れるって感じかな……ってうわあ!?』


 驚きの声に俺も画面を見るが、最高レアリティの武器が落ちていた。


「いや、瑠衣、これもう瑠衣のレベル帯だとゴミなんじゃないの?」

『迷彩で使うよ、これ超絶カッコいいの! ほ、欲しい……ディールしよ! 冬悟も、ディールして当たったら譲って!』

「わ、分かった」


 しかし、当選とはならず。


 先ほどの……多分神聖騎士のジョブの人が最高レアを持っていってしまった。


 通話から声が聞こえなくなっている。そんなにショックだったのか。


『市場に出せば50Mは確定だったのに……!』

「そ、そーか。続けて掘るか?」

『ショックだからいい……。頑張って。最上級職になったら一緒にレベリングしよ』

「おう」


 その日は何だか有耶無耶になって解散する運びになった。レアアイテム、美少女の機嫌を一瞬で変じさせるとは、魔性過ぎるだろう。





 結局深夜までレベリング&レア武器掘りは続けて、何とか三十二戦目で運よくディールを制することができた。確かにカッコいい武器だ。透き通る蒼い宝石剣といった具合。


 激レアらしいのだが、何度かディール自体には出没していた。四回くらい。ちょっと凄い数字らしいのだがそれはどうでも良くて、出てくるたびにあの神聖騎士の女の子のプレイヤーが持っていくものだから、ちょっとイラっとしていた。


 深夜ゲームの代償として、しょぼしょぼする目をこすりながら月曜という日を迎え、登校に至る。曇っているはずの空から降り注ぐ朝の光が眩しい。


 自分の席に向かう瑠衣とハイタッチをゆるゆるかわして、自分の席に腰を降ろした。


「うぃーっす……」

「はよー。うわ、冬悟眠そうだね」


 笹見がこちらを覗き込んでくる。なんかポケットからくれた。半透明の白いキャンディだ。口に放ってみると、ハッカ飴だったようだ。スースーして、幾分か眠気がマシになる。


「サンキュ。いやー、昨日ネトゲしてたらやめ時わかんなくってさー」

「あー、あるある。あたしもそこそこオタクでさ。昨日、SWOってゲームやってたんだけど、マジで微笑ましい初心者に出くわしてさ。上級職になったばっかの大傭兵の子が果敢に突っ込んでいってたんだけど、まぁ攻撃があんま通ってなくてさー」


 どこかで聞いたことのある話だ。


「んで最強迷彩武器とっちゃって、60Mで売れたからほっくほくでさ。しかも四回も落ちたんだよねー! めっさ儲かった! 気になってたコス買っちゃったんだよねー、見る? てか見ろよあたしのキャラを!」

「んん……?」


 フリフリの女の子で可愛い可愛いしているが、この持ってる大槍……神聖騎士……ま、まさか……?


「まさか、『クライクライン』?」

「え!? 何で知ってんの!?」

「お前か! 何度も何度も持っていきやがって! 俺がこの『蒼穹剣アズールブレイド』を手に入れるために何十周したと思ってんだ!」


 まさかあの神聖騎士が笹見だったとは。世間狭すぎるだろ。


「あ、あー……あの中にいたんだ」

「大傭兵になったばっかの新人だよ……! お前が言ってた攻撃が通ってなかった悲しい奴さチクショウめ」

「ぬはは、ディールに負けるとは運命力が足らんのだ!」

「くっそー……」


 実際運がなかったと言えばそれまでだが。いいもん、俺にはS級美少女の婚約者がいるもんだ。羨ましくなんか……いや、やっぱり羨ましい。


「笹見さんもやってるの?」


 瑠衣もずいっと会話に入って来た。積極的でお兄さん嬉しいぞ。


「お、瑠衣っちもやってんの? ジョブは?」

「大賢者。フレコ交換していい?」

「オッケーオッケー、ガンガン狩りに行こうぜ!」

「俺もぜってー追いついたるわテメェら……!」

「うん、冬悟もフレコ交換しよ」


 というわけで、リアル友人とネトゲのフレンドIDを交換することになった。椿はぽけーっとそれを眺めている。


「椿もネトゲやろーぜ?」

「あ、いや……わたし、どんくさいから。高難易度コンテンツとか難しいアクションとかやったら絶対に死ぬんだよね……わたしは小説でいいや」


 とか言いながら、読書に戻っていった。今日は何を読んでるのかな。妖艶に紡がれし薔薇たちの饗宴――うん、嫌な予感がするのでそっとしておこう。


 俺は視線を右斜めに向けた。


「ミラーナはネトゲやんねーの?」

「ゲームをあまり嗜まないというか……。ダイエットの運動と勉強と少女漫画を読んでたらそんな時間ないですし」


 なるほど、ミラーナらしいと言えばミラーナらしい堅実な生活だ。


「少女漫画の時間減らせば?」

「少女漫画は生きる意味。それを減らすのは寿命を減らすのと同意義です!」

「お、おう。俺が悪かった」


 急に瞳が燃え盛るので驚きもひとしお。おい、笹見。「火をつけちゃった。しーらね」ってどういうことだ? 椿も本に戻っていったし、何かマズい空気でも察したのか瑠衣も自分の席に。いやあいつは元からああいうフリーダムな性格だから不思議じゃないけど。


 しかし、面白い漫画というのは女性向け男性向けとレッテルを貼られているものの、おおよそどちらが読んでも面白いものだ。いっぱい読んでそうなミラーナのおススメには興味がある。


「ミラーナ、少女漫画って最近何が熱いんだ?」

「興味がありますか!?」


 うっわー、目に星があるよこの人。


 そしてタブレット取り出したよ。お前だけはこういうの持ってこない性質だと思ってたんだけど気のせいだったか。慣れた調子で電子書籍アプリを立ち上げる。


「少女漫画で今熱いのは、この作品なんです! 単純なボーイミーツガールの物語から始まって結婚でエンディングかと思った瞬間SF舞台で未来の生まれ変わりの話に! そう、この現代こそが遠い過去のお話になってて、もうこの作者さんの構成力がですね!?」

「ほー、面白そう」

「でしょう!? ほら、現代編は八巻まで出てますから、これを読み切れば絶対今出てる巻まで追いつけるようになりますよ!」

「よし、タイトルだけ写真撮らせて。帰ってから買う」

「是非! いやぁ、今日は少女漫画仲間ができる良い日でしたか! うん、太陽がまぶしいです!」


 どんなキャラなんだよ。この果てしない曇天すら目に入っていないようではあるけど、まぁミラーナが楽しそうなら何よりだ。


 上機嫌な彼女を置いておきつつ瑠衣の方へ。


「瑠衣は少女漫画興味ないの?」

「うん。努力と才能の汗臭そうなスポーツ漫画の方が好み」

「そ、そうなのか……」


 これまた意外っちゃ意外だな。


「もしや、やっぱ瑠衣も努力は報われないと嫌な性質か!」

「普通そうだよ」

「いや、そうかもしれないけど……なるほどな」


 ならスポコン系は合ってるんだろうな。少女漫画のイメージではない。いやあれもある意味努力だけど。でも大体あれは地味な彼女がイケメンに目を掛けられるパターンが多過ぎてるし。何より、どんどん綺麗になっていく努力というよりも、元からイケメンが地味な彼女を気にかけてくれているというのがお約束だ。


 瑠衣を見る。化粧っ気がないのに、元からこんなに可愛いんだ。これ以上綺麗で可愛くなってしまったら、俺はどうなる。ひとつ屋根の下だぞ。


 見れば見るほど、綺麗だ。吸い込まれそうになるほど、現実味がない女の子。


 視線に気づいたか、彼女もこちらを見上げてくる。

 大きなブルーの瞳が、こちらをとらえ続ける――


「ほーら、青春してないで座れ、冬悟!」


 出席簿でキャス先生から胸元を叩かれて我に返った。


「あ、うっす。てか眠そうっすね」

「昨日ネトゲが……SWOなんだけど格安で宝石剣売ってたから買って転売しようと思ったら失敗してもう……!」

「先生、ギャンブルの才能ないんすから、ほどほどにしないと……」

「うっせー! 出席とるぞぉ! いないやつは挙手しろ、よし! HR終わり!」

「雑過ぎねぇ!?」


 まぁ、雑然過ぎるHRはさておき。

ネトゲの世界は色んな奴で満ちているけど、つい隣の誰かが同じゲームやってるかもしれないって思うと、面白い世界だよな。


 こんな漫画のような顔見知り遭遇率なんて絶対に御免被りたいけど。プライベートとネットの友人たちの距離は別けて考えたい派だ。万一、俺が死んだとしても、パソコンをぶっ壊してくれってノリで作った遺言状に書いてあるし。


 まぁ、ネットや現実でもいい。色んな世界に触れてみて、俺も婚約者がいるなんて立派な肩書きを名乗れるような人間になりたい、というのが最近の目標になっているのだった。


 だから、今日も退屈なオベンキョーでも頑張るとしますか。


 気合を入れるべく、俺は眠気覚まし用の酸味の強いグミを口に運んだ。

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