君
@ShiinaSekai
君
僕は君を本当に好きなんだろうか?
僕は君のことを、ただのアクセサリーとして認識しているかもしれない。誰かに良いように見せるために.......。いや違うな。君っていう有名な存在を借りて、自分の才能を周りに知らしめることで、自分が周りから忘れられないようにしていただけなんだろう。それは臆病でとても醜いだろうか?でも君はそんな僕を愛してくれるんだろう。僕は知っている。僕はそう思ってる。一方的かな。
そうだな、君のことを嫌ったこともあったな。それは君が悪いわけじゃない。ただ君が道具にしか見えなくなったんだ。自分は才能っていうクズみたいなものに固執し過ぎていたのだろう。
君の歌声は操り人形を操ってる側の意志だとも思った。空虚で空っぽだ。でもその声は、言葉は、操り人形を操ってる人間を通ってきた神秘的な宇宙の言葉なんだ。これは比喩じゃない。何億年と前から紡がれてきた運命というやつが、ただその人間を通って君が歌ったってことなんだ。しかもその運命は僕も通っていく。
私は学校の準備をしてイヤフォンをつけた。
彼女の声が流れる。
まあこんな独り言を言っても誰もなんのことか分からないだろう。2人だけの秘密みたいなものだ。ちょうど普通の恋人が世界っていう棘がある空間から守るための一時のまやかしと一緒だ。でも君と私は......少なくともちょっとしたそんなまやかしを共有してるっていうところで.......あんまり恥ずかしくて言えないや。
でもやっぱり君が好きだな。それはぼんやりとしてるし、「君を嫌いにならないと殺す」と言われたら君を嫌うし、どこまでいっても君は私のアクセサリーでもあるし、具体的にどこが好きか?って言われたら、自分は周りと繋がる答えを返す。
でもそんな曖昧さも悪くないだろう。君と私の出会いは偶然かつて必然なのだから。ぼんやりしてるけど好きだし、命令してきた奴が死んだらまた君を愛すし、アクセサリーでも君を好きだし、周りと繋がる答えでも........自分が言いたい答えでも僕は君を好きなんだ。
君はそんな矛盾を抱えた僕を、ポンと小突いて笑ってくれるだろうか。そうだね。いつか触れ合って手をつなげるような平和なセカイがずっと続くように。
私は玄関の扉を開けた。私は久々に聴く彼女の声に涙を流した。
そろそろ私の誕生日だ。新しいヘッドフォンでもお願いしようか。
君 @ShiinaSekai
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