第8話 春風のステータス


 「すみません。神々の皆様の前で、とんだを晒してしまいました」


 あれから暫くの間笑った後、漸く落ち着いた春風は、自身が神々の前にいる事を思い出して、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして謝罪した。


 それに対してアマテラス、ゼウス、オーディンは、


 「「「いいよいいよ、気にしないで」」」


 と、皆、一斉に親指を立てた。


 その後、春風は自身の「ステータス」を、神々にも見せながら確認した。


 表示された「ステータス」の内容は、自身の「名前」と、その横に表記された「種族」、「年齢」、「性別」、「レベル」、そして「職能ジョブ」という項目に、所持している「スキル」と称号のみだった。


 (『ステータス』っていうからには、『HP』に『MP』、それに『攻撃力』とかもあるのかなって思ってたけど、それはないんだな)


 と、春風はちょっとだけ残念に思ったが、すぐに「ま、いっか」と気持ちを切り替えて、気になっていた「職能」という項目を調べる事にし、その部分に触れた。


 職能……『神』によって与えられる特別な能力。戦闘を得意とする「戦闘職能」と、生産を得意とする「生産職能」の2種類に分けられる。ただし、どのような職能が与えられるのかは、その人の資質による。


 「職能」の項目を見た後、


 「あの、オーディン様。この『職能』というのも、エルードの神様が作ったものなんですか?」


 と、オーディンに尋ねると、


 「いや、違うな。これは彼らが作ったものじゃない。恐らく、かによって生み出されたものだろう」


 と、オーディンはかなり真剣な表情で答えたので、春風は「マジっすか」と小さく呟くと、ステータスに視線を戻して、今度は「所持スキル」の項目を見た。


 所持スキル……「職能保持者ジョブ・ホルダー」となった人間が持つ技能。「職能」のレベルが一定にまで達すると、その「職能」にちなんだスキルを入手出来る。またかなり低い確率になるが、スキルの入手に繋がる行動をしても入手する事が出来る。


 「へぇ、レベルが上がったり特定の行動で入手出来るんだ」


 と、再び小さくそう呟くと、春風は自身が所持しているスキルを見た。


 [英知]……「見習い賢者」の専用スキル。所持者が見聞きして得た様々な情報を「知識」として吸収し、「特定の行動による新たなスキルの入手」の成功率上昇に補正がかかる。また、手に入れた「知識」は特別な「道具」を用いる事によっていつでも見る事が出来る。


 [鑑定]……文字通り物体、生物等を鑑定し、その情報を見る為のスキル。


 [風魔術]……風を操る魔術。攻撃、支援、回復系の魔術をバランスよく覚える。発動するには専用の道具を必要とする。


 使用可能魔術

 ・ウインドニードル……針状に纏めた風で敵を貫く。

 ・アクセラレート……両足に風の魔力を纏わせて素早く動けるようにする。

 ・ヒールブリーズ……癒しの力を秘めた風で体力を回復する。


 [炎魔術]……炎を操る魔術。単体攻撃、範囲攻撃、戦闘力強化を得意とする。発動するには専用の道具を必要とする。


 使用可能魔術

 ・ファイアボール……敵に向かって火の玉を飛ばす。

 ・ファイアウェイブ……炎の波で複数の敵を飲み込む。

 ・ヒートアップ……体の内側に炎の魔力を流して戦闘力を強化する。


 [水魔術]……水を操る魔術。攻撃も出来るが、主に回復を得意とする。発動するには専用の道具を必要とする。


 使用可能魔術

 ・ウォーターエッジ……鋭い水の刃で敵を切り裂く。

 ・ヒールレイン……癒しの力を秘めた水を雨のように降らせる。

 ・アンチポイズン……毒を治療する。


 [土魔術]……大地(土や岩石、植物等)の力を操る魔術。攻撃も出来るが、主に自身と仲間を守る事を得意とする。発動するには専用の道具を必要とする。


 使用可能魔術

 ・アースハンマー……敵の頭上に魔力で土の塊を作り、それを勢いよく落とす。

 ・プロテクション……全身に土の魔力を纏わせて防御力を上げる。

 ・ロックブロック……前方に岩で作った壁を出現させて敵の攻撃を防ぐ。


 [錬金術]……魔力を用いて様々な秘薬や魔導具を生み出すスキル。


 使用可能技術

 ・秘薬調合……材料と魔力を用いて様々な薬品を生み出す。

 ・魔石生成……魔力を固めた結晶、「魔石」を生み出す為のスキル。現在作れるのは火、水、土、風属性の魔石だけ。

 ・魔導具錬成……魔力を秘めた道具「魔導具」を生み出す為のスキル。生み出すには魔石とその他の材料を必要とする。


 [暗殺術]……闇に紛れて敵を仕止める為の技術。一撃必殺の攻撃を得意とし、一部の武術、射撃に加え、暗器(隠し武器の事)を用いた攻撃に補正がかかる。


 [調理]……様々な食材を用いて美味しい料理を生み出す為のスキル。極めれば特殊な効果が付与された料理も生み出す事が出来る。


 [隠密活動]……影に隠れて様々な行動をする為のスキル。


 使用可能技術

 ・隠蔽……他者に見つからないように自身の気配を隠す。もしくは自身の情報を隠す。

 ・偽証……嘘を吐いて他者を惑わせる。

 ・偽装……嘘の情報を見せて他者を欺く。


 (うん、こんなところか……)


 と、全てのスキルを身終えた春風が「うんうん」と頷くと、


 「て、ちょっと待て! なんか2つほどが混じってんだけど! ていうか、[隠密活動]はともかく[暗殺術]って何!? 賢者関係ないじゃん!」


 と、虚空に向かってツッコミを入れた。


 すると、


 「それは多分、に原因があるんじゃないかな? 何か心当たりあるかい?」


 と、オーディンが春風に向かってそう尋ねた。


 「え、心当たりって……」


 と、春風は最後まで言おうとした、まさにその時、


 「……あぁ」


 と、思い当たる節があったのか、春風はオーディンから視線をずらすと、


 (……ま、まさか、か? が原因なのか!?)


 と、心の中でそう呟きながらダラダラと汗を流し、そんな彼の様子を、


 『じぃいいいいい……』


 と、周囲の人達は見つめていた。


 その後、


 「さ、さーて、最後は『称号』かな?」


 と、どうにか開き直った春風は、最後に「称号」の一覧を見た。


 異世界(地球)人……異世界から召喚された人間。


  場所:地球


  称号特性:異世界の言語を理解出来るようになる。


 固有職保持者……「戦闘系職能」「生産系職能」とは異なる「固有職能」を持つ職能保持者。「神」の加護を持たない事から、「悪魔」と呼ばれ、恐れられている。


 称号特性:レベルアップ時の入手スキルが全種類になる。


 神(地球)と契約を結びし者……文字通り「神」と直接契約を結んだ人間。ただし、どのような「神」と契約したかで特性が異なる。


  契約神:オーディン(地球の神)

 

  契約特性:あらゆる魔術とそれに連なる技術に対する適性を得る。


 (うん。こんなところか)


 と、一通り「ステータス」を身終えた春風が、心の中でそう呟くと、


 「どうだい春風君。自身の『ステータス』は気に入ったかい?」


 と、オーディンが尋ねてきた。


 その問いに対して、春風は「うーん」と唸った後、オーディンを見て口を開く。


 「ちょっとがあります」

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