第56話
オウオウ! テメェっち魔力がないんじゃねぇのかい!
ないもんは感じるもクソもねぇ!
まずは物を用意してから話をつけろぃ!
学園長の意見はそんな感じだった。
「え? 俺って魔力が無いんですか?」
「いや、あくまで仮説だ。だが、魔力量は個人差が大きい。魔力を感じ取る感覚器官が壊れていると考えるより、魔力そのものが感じ取れないほど少ないと考える方が、ありうる話なのではないかと思ってな」
どっちの可能性の方が妥当かなんて話、俺には分からない。
でも、これまでに無かった見解だ。
「あの、そうだとしたら俺はどうすればいいんでしょうか?」
「単純だな。魔力を増やせば良い」
そりゃあそうだ。
でも、そうじゃない。
「……じゃあ、何をすれば魔力は増えるんですか?」
「知らぬ」
「…………ん?」
「知らぬ」
はい! 解散!
終わりだよチクショー!
いや、別に学園長はなんにも悪くないんだけどね!
「あの、何か対処方法が分かったんじゃないんですか……?」
「そんなこと一言も言ってなかろう。吾輩はあくまでも、お主が魔力を感知できない原因として、可能性の1つを提示したに過ぎん」
一瞬希望の光を見た気がしたけど、ただの勘違いだったわ。
しかし、そんな俺の内心を見透かしたように学園長は言葉を続ける。
「今の話を聞いて落胆したか?」
「落胆という程では……まぁ、ちょっと残念というか。勝手な期待をしてテンション上げた分がそのまま下がっただけなので、プラマイゼロみたいな感じです……」
「ふんっ、愚か者め! 前例のないものを簡単に解決できるわけなかろう。それができれば何事にも研究などいらんわ!」
確かにその通り。
誰も直面してこなかった課題に俺は挑んでいる。
なんでもかんでも一朝一夕で解決できるなら、この世に難題と呼ばれるものは存在しない。
しかも、意見を貰っておいて勝手にガッカリしては失礼が過ぎるというものだ。
反省しなくては……。
「申し訳ありません……」
「謝罪などいらん」
学園長は煙たがるように手を払う。
そんなことは煩わしいだけだとでも言いた気。
「そんなことより、ルーカスよ。お主、吾輩と共に論文を書け。これから五年間は定期的に経過報告を持って吾輩の元へ来てもらうぞ。才能値1の魔法師がどのような変遷を辿って成長するのか、お主自身がこの世界に新たな可能性を示してみよ!」
そして、俺の意志すらもどうでもよい考えているのだろう。
学園長は既に決まった話であるかのようにそんあ事を言うのだった。
こうして、なんだか良く分からないまま俺の学園生活が始まる。
入学おめでとう、俺。
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