第55話
鑑定の儀式は
俺の才能値を見た学園長はやはりと言うべきか、目を見開いて固まっている。
何に驚いているのかは考えるまでもない。
「あの……どうでした?」
俺からは儀式の結果が見えない。
個人的に、魔法師の才能値がちょっとくらい伸びていたりしないか気になっているのだが……。
座学に関してはそれなりに頑張ってきた。
知識面ではグリモルさんから及第点を貰っているのだ。
少しはこれまでの努力が報われていて欲しい。
けれど、俺の考えとは別にグリモルさんは別の話題を振ってきた。
「ルーカス……本当に魔法科で良いのか?」
「はい。魔法科
学園長は俺をジッと見て真意を確かめる。
答えは決まっている。
俺は魔法を学びたい。
だから、重ねて答える。
「俺は魔法科に進みます」
「そう……か。いや、すまん。魔法師の才能値以外に関しては、何も言及しない取り決めであったな……」
「それで、魔法師の才能値はどうでしたか? 俺自身、今の数値がどうなっているか気になっているんですけど」
「1だ」
答えは簡潔。
不動の1。
「マジかよ……座学で得た知識って才能値には関係ないのか?」
思わず学園長の前で言葉遣いも忘れて独り言ちる。
「ん? なんだ、もう既に魔法学を学んでいるのか?」
「……ええ、一応……魔法を発現できたことはないですが」
「自身の魔力を感知できないのであれば当然のことよな。……知識だけ詰めても才能値を伸ばす上で意味はない。ルーカスよ。お主、剣の振り方が本を読んだだけで上達すると思うか?」
「……まあ、無理でしょうね」
「それは魔法も同じこと。あくまでも座学は体系的に魔法の発動を理解するためのものだ。知識を得ただけで、実際に魔法を使えないのでは何も意味は成さん。逆に言えば、人から学ばずとも思った魔法を発現できるのであれば、座学など必要ないのだ。実際、魔法師の才能値が高い者ならば、誰に教えられるでもなく魔法を発現できるケースはそれなりにある」
「残酷すぎる現実を押し付けないでください」
何となくわかってた。
でも、考えないようにしていたことを学園長の口から
ここに来て俺が一年以上かけて詰め込んだ知識の空虚さを思い知らされるとは……。
やっぱり魔力の感知ができない事には、俺の魔法師人生は一歩目を踏み出せないらしい。
「学園長! お願いします! 俺に魔力を感知する方法を教えてください!」
「う~む……」
俺は学園長の前で
しかし、彼は唸るばかりで俺の求める返事はない。
グリモルさんと同じ反応だ。
そして――。
「すまぬが、吾輩は生まれてこの方、自分の魔力を感じられなかったことがない。魔力の感じ方を教えるなぞ、今こうして声を発している方法を説明するに等しい」
俺だって声の出し方なんて人に説明できない。
だって、声なんて喋ろうと思ったら自然と口から出てくるものだ。
つまり、学園長はそのレベルの感覚で魔力を感知できると、そういうことらしい。
そして、多分それは他の魔法師にも共通して言えることなんだろう。
「ちなみに、こんな俺でも学園の魔法科でやっていけますかね?」
「不可能という言葉を容易に使うのは嫌いでな。だが……吾輩は、騎士科を勧める。お主はその方が楽に卒業できるであろうよ」
それって遠回しに魔法科で卒業は厳しいって言われてるよね……。
入学初っ端から憂鬱になる話だ。
「それにしても、体内の魔力を感じないというのはどういうことなのか……。普通は魔法師の才能値がなくとも魔力を感じ取る事くらいはできる。ルーカスは1とはいえ、魔法師の才能持ち。そんな根本的な部分で欠陥があるとは――」
俺が一人鬱屈した気分になっていると、学園長の方も独り言をブツブツ呟きながら思考の世界へ潜り込んでしまった。
これはまた意識が戻って来るまで時間が掛かりそうだと思ったが、今回はすぐに考えがまとまったらしい。
学園長は「おお! そうか!」とデカい声を出し、
「お主、もしや魔力が体内に流れておらんのではないか?」
そんなことを言った。
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