第51話

 王都は円状に区画が分けられている。

 中心に聳え立つ尖閣殿は王族の住居、兼、中枢機関の最重要施設。

 それを囲むように貴族街が広がり、さらに貴族街の外に平民街がある。

 俺がこれから通う学園は、当然、貴族街に位置していた。

 

「これが寄宿舎学校……」


 目の前には立方体の大きな建物が2棟。

 学園は講義や訓練を行う本館と、それ以外の時間を過ごすための生活域である別館に分かれている。

 今から用があるのは本館。

 既に学園の正式な入学期日は過ぎているが、果たしてどんな事を言われるか……。

 流石に入学拒否という事はないだろうが、不安だ。


「入学手続きは、学園本館に入ってすぐ正面の受付でと知らされていたけど……」

 

 残念ながらそれらしいものは見受けられない。


「さて、どうしたもんか……」

「おい、そこで何をしておる? 今は講義時間のはずであろう」


 背後から掛けられた声に驚き振り向けば、初老の男が一人。

 後ろに居るのに、全く気付かなかった。

 長い白髪を背に垂らし、白を基調とした装束を身に纏っている。

 正に俺がイメージする魔法使いのステレオタイプ。

 これで長い白髭を蓄えていたら満点だった。


「こ、こんにちは……」

「挨拶はよい。それより、講義はどうしおった? まさか貴族子息の義務を放棄してサボタージュか?」


 なんだか、グリモルさんに雰囲気が似ている。

 顔が似ているということはないけれど、もっと内面的な、あるいは纏う空気とでも言うべきか。

 とにかく、同じ人種。そんな風に見える。


 っと、そんなこと考えてる場合じゃないな。

 

「すみません! サボりではありません! 今年度よりお世話になるルーカス・アラディアと申します。訳あって先日行われた入学式に間に合わず……」

「アラディア……ふむ……今年の遅刻者3人の内の1人か」


 遅刻者3人……俺の他にも仲間がいたか!

 ちょっと、いや、だいぶ安心感があるな。

 あんまり良い事じゃないけど。


「申し訳ありません。道中でトラブルが発生してしまい旅程が崩れました」

「たしか、東の街道で魔物が出たとか噂されておったな。それが原因か?」


 俺が道を行ったり来たりしている間に、魔獣被害の話は王都にまで届いていたか……。

 

「……ええ、正しく」

「なるほどの……そういうことであれば、ついて来い。案内してやろう」

「ありがとうございます!」

「ああ、それと。名乗り遅れていたな。吾輩の名はオルテリア・ノーティアス。この学園で魔法学を教えておる。、学園長を兼任しておるから、今後顔を合わせることもあるだろう」


 どう考えても学園長の方が本職だと思うんだが……まぁ、細かいことはいいか。

 

「よろしくお願いいたします」

「うむ。では、付いて参れ」


 やっぱりこの人、なんかグリモルさんに似てるんだよな……。




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