第16話
「オイ見ろよ、ガキが依頼受けに来たってよ」
「薬草取りでもする気か? それにしたって、あんなガキが町の外に出たら死ぬぞ」
「怪我して後悔することになる。止めてやらにゃ……」
「なんだあのガキ、無駄に高そうな剣持ってやがるなぁ」
「貴族のボンボンだろ。面倒事に巻き込まれかねないから関わるな」
俺みたいな子供を拒むリアクションが飛んでくるかと思もいきや、心配の声や興味を持っていそうな人が多かった。
もちろん、中には俺を避けようと考えている人も居るようだが。
「ちょっと前から剣の修練を受けてまして。先生からそろそろ実戦も経験するように助言されたのでここへ来たんですけど……」
俺に話しかけてくれたハルバードを持つ男は、顔を歪めるとデカい声で俺に言い聞かせる。
「お前みたいなガキに実戦だと⁉ そのふざけた教師は誰だ? やめとけ坊主、言っておくが実戦てのは怪我で済むようなもんじゃない。最悪、命を落とすんだ!」
「俺もそう思って先生には何度も無理だって言ったんですけど……」
「オイオイ……。そのイカレた先生とやらはなんて名前なんだ? 俺はこの辺りの実力者とはだいたい顔見知りだ。俺の知らねぇ名前が出てきたんなら、坊主は何処ぞの素人に騙されてるかもしれねぇぞ」
どうやら、この男は情報通らしい。
でも、ブライド先生って冒険者ギルドで教官やってるらしいし、絶対に知ってるはずだよな……。
というか、なんで先生は中に入ってこないんだ? あの人が俺と一緒に居てくれれば済む話しな気がするんだけど?
「俺の師匠は、ブライドという剣士です。一応、冒険者ギルドでは教官を務めていると聞いていたんですけど……」
場の空気が一気に白ける。
待ってくれ、なんだこの雰囲気は?
「………………オイ、坊主。ブライドっていうのは、元冒険者の『
「デュアル……? すみません、冒険者時代の呼び名とかは知らないんですけど、たぶんそうです」
流石はブライド先生。なにやら通り名を持っていたらしい。
俺には一度も教えてくれたことはなかった。
聞いてもいないのだけど。
「くくく」
誰かから笑いが漏れ出る。
そして――。
「「「ダッハッハッハッハ!」」」
冒険者ギルド内に爆笑の渦が起こった。
「聞いたかよ! あの人がガキのお世話をしてるってよ!」
「本当ならお笑い草だぜ! 最近見ねぇと思ったら、おままごとに付き合ってたって?」
「可哀そうなガキだ、どうせ偽物だろ? あの鬼がガキのお守なんてできるわけねぇ」
「おいおい、坊主が可哀想だろ? 自分の先生が詐欺師だなんて知ったら泣いちまうよ!」
どうやら皆さん俺が偽物に騙されていると思ったらしい。
流石にそんなことはないと思いたいけど、俺よりも付き合いの長いこの場の冒険者たちには信じられないことのようだった。
あの鬼に子供の教師は無理。あの悪魔に子供向けの優しいレッスンなんぞ出来るわけない。
そんなことを好き勝手言っている。
「おやおや? 誰が、鬼で悪魔ですか?」
だが、彼らの軽口は俺の後方にあるギルドの扉が開く音と共に静まり返る。
ブライド先生が、ようやく中に入ってきた。
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