第13話
「なるほど。随分と貴重な素材で剣を作るもんだと思ってたが、ルーカス様への贈り物だったわけだ。依頼されていた軽さにも納得だ」
そう口にするディーノさんは得心した表情をするものの、若干物言いたげな空気を醸し出していた。
「ふふ、ディーノ殿。その様子だと自信作になったようですな」
「ん? ああ、まぁな……。ルーカス様がお持ちになっても恥ずかしくない出来栄えだ」
「だからこそ、碌に剣を扱えない小僧に持たせるには勿体ない……といったところですかな?」
「……‼ い、いや、そんなことたァねぇよ?」
明らかな動揺。どう見てもそう思っていたんだろうなぁ。ディーノさんの顔に『図星』と書いてある。
せっかく自信作を作ったのに、受け取るのが使いこなせないガキと来たら職人側が渋るのも分かる。
俺がディーノさん側でも嫌だと思うわ……。
「あはは……す、すみません…………」
「ち、違いますよルーカス様! ただ、使い手はブライドだとばかり思ってたもんで……」
「ですよね……」
この一帯では名の知れた剣士だというブライドからの特注依頼。そりゃあ張り切ったに違いない。
これ、本当に申し訳ないぞ。
「あの……師匠、剣の贈り物というのもありがたい話ですけど、流石に今回は……」
「おやおや、それは困りますな。ディーノ殿が言った通り、今日受け取る剣は私には軽すぎるし、何より耐久力が低い。私が放つ剛剣術には耐えきれないでしょう。そうなると、剣の使い手が不在という事になる」
「……んな事を言ったって…………」
「要は、使い手の技量がディーノ殿の剣に足りていれば良いだけのこと。ディーノ殿、一度ルーカス様に剣を持たせてあげて下さい。ディーノ殿であれば、ルーカス様が剣を持つ立ち姿を見ただけで全てを理解できるでしょう……」
いつの間にやら勝手に話が進み、妙な事になった。
これまで真剣なんて握ったことはないし、今しがた店頭に並んでいる一振りを持とうとして重さに負けた俺だ。受け取った瞬間に持ちきれなくて床にでも落としたらディーノさんの顔が絶望に染まること間違いなしだぞ。
だけど、俺の不安に反してディーノさんはブライド先生の挑戦的な物言いで乗り気になってしまった。
「ほう? ディーノがそこまで言うのか……。確か、さっき愛弟子だとか言ってたな?」
「ええ、間違いなく、ルーカス様は私が育てた剣士の中で破格の才を持っていますよ」
「なるほどの……よかろう、直ぐに用意する」
「え、ちょっと待って……」
「ルーカス様、自信を持ってください。貴方はいつものように剣を持つだけで良いんです」
ハードルが高すぎやしないか? いつもの様にって……俺、真剣を持ったことなんてないんだってば……。
しかし、俺の意思とは関係なく話は勝手に進んでしまった。
そして――――。
「これがブライドから受け取った
昆虫の翅を想起させる薄い刀剣。
俺は見た瞬間に、この剣の使い手は自分しかいないと直感で理解した。
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