第4話
「ほう……剣の構え方が素晴らしいですな……既にブレがない」
「ブレ? なんですかそれ?」
「おや? どなたかに構え方を教えていただいたのではないのですか?」
「いえ、木刀を握るのも今が初めてです」
「初めて⁉」
ブライド先生と挨拶を交わした俺は早々に初回の訓練を始めた。
ブライド先生もそのつもりだったようで、俺がお願いするとすぐに木刀を出した。
そして、
「思ったように剣を構えてみて下さい」
そんなことを言われて俺は何も考えず適当に両手で剣をもって中段に構えたのだが……何故か既にブライド先生が衝撃を受けている。
「ローグ様から才能値が高いとは聞いていましたが……これほどとは……。失礼ですがルーカス様、剣士の才能値は如何程で?」
参った。父様たちには才能値については極力人には教えないように言われている。
どう誤魔化したものか……。
まぁ、他に表示されてた槍術士の才能値が400だったし、とりあえずそれに合わせておくか。
「あ~、たしか400とかだったような……」
「よ……よんひゃく?」
しかし、俺の答えを聞いたブライド先生はまたしても雷撃を受けたよな反応を示す。
おかしい、槍術士の才能値については誰も何も言わなかったはずだ……。
「あの……一応聞きたいのですが、ブライド先生の剣士の才能値はどの程度なんですか?」
「………………300です」
オイオイオイオイオイオイオイオイ………………。
あれ? なんだ? もしかして400って凄い数値なのでは?
いや……ブライド先生が実は弱いのか? でも、父様が中途半端な実力の剣士を連れてくるとは思えない。
そういえば一般的な才能値が50とは聞いていたけど、一般に才能があると言われるラインの数値までは聞いたことがなかったな……。
「あの、もしかして……400というのはとても良い数値なのでしょうか?」
「ええ、私も長く冒険者をしておりましたが、400を超える才能値を持つ剣士は一人しか知りません。そのものは現在冒険者における最高ランクS等級の位を授けられていますが……」
「へ、へぇ~、そうなんですねぇ……凄いなぁ~…………」
冒険者事情なんて知らないから良く分からないけど、最高ランクというからには並大抵のレベルではないのだろう。
これは……完全に回答をミスった。
「ふ、ふふ、ふふふ…………ハッハッハッハッハ‼」
突然にブライド先生のネジが吹き飛んだ。
彼は高笑いを上げて目をかっ開いている。どう見てもヤバイ人だ。
「先生? 大丈夫ですか?」
「ええ……大丈夫ですとも。いやはや、失礼いたしました。貴族の小僧を軽く面倒みてやろうと甘く考えていましたが、改めましょう! ルーカス様! 貴方には私の剣技の全てを伝授いたします! 音を上げないでくださいよ?」
何やらとんでもなく失礼な事を言っていた気がするけど、豹変したブライド先生の雰囲気に俺は気圧される。
そこには第一印象にあった騎士のような精悍さはない。俺がイメージしていた荒々しい冒険者そのものだ。
「あの……お手柔らかにお願いしたいのですが……」
「ふふ、ええ。初日は先ず王国式柔剣術の基礎から叩き込みます。さぁ、構えなさい! 素振りなどという温い訓練をする気はありません! まずは私の剣技をその身に受けて身体に刻み込むのです!」
「ちょっと待てぇぇええええ⁉」
「行くぞおおおおおおおお!」
――バッコーン!
そんな木剣がかち合う鈍いような、甲高いような、とにかく子供の訓練には似つかわしくない激しい音が屋敷の庭に響くのであった。
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