第3話 邪竜ブレスは岩砕く

ベルの案内であっさりと逃げ出した。所詮田舎の子爵家、大した警備もない。

子爵領と言っても領境なんて馬車が通る大きな街道に関所があるだけらしく、村に寄ってから山越えで領を出ることになった。


「ところでリウス様、家を出て魔物を倒すってなんのためです?」

「魔物を倒して強くなるんだ!ぼくは凄く強くなれると思うから早くやりたい!」

我つよくなりたい。以上。

「うーん、それじゃあ冒険者になりましょうか。冒険者なら魔物を倒して持って帰ればお金を貰えますから。そのお金で一緒に暮らしましょう」

「ほうほう、冒険者」

それ8歳でもいける?


村までの道すがら色々教わった。細かい事はすぐ忘れたけど。

要するに冒険者に登録して仕事として魔物を倒せばお金になるということだ!倒した証明だけでよかったり体が必要だったりする。そういえばこの地も昔は色々な魔物で埋め尽くされてたもんなぁ、端っこでチマチマやってた人族がいつの間にか他の魔物を減らしていったんだ。魔物を倒したらお金をやるよって事で魔物を減らしたのは上手かったな。まぁお金自体人間種しか使わないんだけど、

ちなみに今の人間は自分たちを魔物とは別と考えている。まぁ別にいいけど、こいつらも元はこの地に蠢く種族の一つでしかなかったのにな。我もそれに合わせて人間とは別の魔物を狩るのだ。人間はめんどくさい。


ぽてぽて歩いていると後ろから馬車が来て道を譲る。ここを通るって事は子爵領の中心の町から他領に向かうのかな。一応顔を下げてベルの影に隠れておいた。

「随分飛ばしてるね」

「そうですねぇ、この方向は王都に向かってますから、どこかの偉い人が乗ってるのかもしれません」

ふーん、まぁ人間の偉いやつなんて興味ない。後ろに飛び乗ってタダ乗りしたらよかったな。


小さくなっていく馬車を眺めていたら突然ぶっ倒れた。

「ぷぷっ転んでるよ、あんなに急ぐからだよばっかだなぁ」

人間おもしろっ!なんて程でも無い。人間てのは本当に訳が分からんものなのだ。我の山を登ろうとして勝手にポロポロ落ちていってたのが懐かしい。

「リウス様、どうやら賊に襲われているようですよ。とりあえず慎重に近づいてみましょう。隙があれば助けられるかもしれません」

ははは、なぜ我が人間を助けねばならんのだ。人間同士で殺し合うと言うなら見物させてもらおう。ベルは冗談が上手いなぁ。

「………」

な、なんだその目は。その汚物を見るような、見限ったような、捨てる決心をしたような目は!貴様この我を見くびるか!!


「許せん!ぶっ殺してやる!!」

「っ!失礼しましたリウス様!急ぎましょう!!」

突然ベルが我を抱き上げて走り出した。人間どもめ!許さぬ!ぶっ殺す!!

「待ちなさい賊ども!無体はこのリウス・マーレ様が許しません!」

目の前には下卑た顔の賊ども。こいつらが何をしていようが知るか!我が怒りを知るがいい!

「貴族か?ひひひ!貴族のガキと若い女が寄ってきたぞ!今日はツイて…」

「カァァァァァッ!!」

怒りに任せてブレスを吹いた!記憶を取り戻してから溜め込んだ燃え盛る呪炎のブレスだ!馬車を囲う賊共が燃え上がる!


「ぎゃあぁぁぁぁ!!」

ははは!賊共が汚い声で鳴きよるわ!

火を消そうと転がるがそれは呪いの炎だ。威力は燃えカス程度だが砂をかけた程度で消えるものか。

「きゃあああああ!!」

あれ?随分綺麗な声で鳴いてるな?

「リウス様!燃えてます!馬車燃えてますよ!」

あ、しまった。馬車を囲んだ奴らを全員燃やしたんだから馬車も燃えるよな!でもあれは消せないな。すまんが運がなかったと諦めてくれ。


「ウォーターボール!ウォーターボール!」

なんかベルが水を出している。あれは水魔法だよな?そんな特技を持っていたとは、財宝としての価値が1ランクアップだ!

「はぁはぁはぁ、ウォォップッ!オウエェェロロロロロ!!」

ふぅむ、魔力量は余り無いようだな。戦闘は無理か。まぁベルの出した水で風呂に入るのは気分が良さそうだ。嘔吐するまで頑張る点はポイントが高い。

ベルの頑張りにより馬車は消化された、ついでに馬車の周りに出来た水溜りで賊共がゴロゴロと転がって消火したようだ。中には吐瀉物まで利用した奴もいるようで人間のしぶとさに驚いた。


「ベル、頑張ったね。馬車は無事のようだよ」

「いえウェェ!それよりリウス様がオゥェェ!火の魔法をオォォボロロロ」

声かけて悪かったな、しばらく休んでろ。

馬車の周囲の賊共にトドメを刺したいが、この程度の雑魚を倒しても対して力にはならんだろう。金になるかもしれんからひとまず放っておこう。


「馬車の人ー!もう大丈夫ですよー!馬車に火を掛けた賊共は倒れましたー!でてきてくださーい!」

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