先輩が…

 部活の真希先輩と近くのアミューズメントパークに遊びに行ったのは、もう数ヶ月前のことだ。

 

「これお揃いで買いませんか」

せっかくだから記念に先輩とお揃いが欲しいとのキャラクターのタオルを買った。正直に言うとある思惑があった。

「先輩ちゃんと使ってくださいね」 

「もちろん、部活の時とか使おうかな。咲良さくらも使ってね」

「はい、私も部活で使います!」とウキウキで返した。


先輩は宣言通り部活に持ってきて使ってくれていた。

もちろん私も使っていた。


部活が終わって部室に入ると、先輩の鞄の上に置かれたお揃いのタオルが目に入った。


この数ヶ月ずっとこの時を待っていた。誰も部室にいないちょうどいいタイミング。


私はサッと先輩のタオルと、自分のタオルをすり替えた。

私はバレないようにさっと自分の鞄に先輩のタオルをしまった。


ガチャリと音がして部室のドアが開いた。

間一髪だったのに、肩がビクッとする。

さっと先輩のカバンから離れて振り返ると真希先輩が入って来るところでドキリとする。


私は自分の鞄を抱きしめて、バレないでくれと願った。


「先輩、お…お疲れでした」

私は急いで部室を出ようとした。

「待って!一緒に帰ろうよ」

先輩に呼び止められる。

「は、はいっ」

いつもだったらうれしいと手放しで喜んだだろう。今日は先輩に悪いことをしたという罪悪感と、とうとう手に入ったという高揚感で声が震えた。


先輩が鞄を持って、タオルを首にかける。

「あれっ?」

先輩が一瞬不思議そうな顔をしたが何事もなかったように

「帰ろうか」

といった。 ヤバいかと思ったが、大丈夫だったようだ。


駅について、先輩とは乗る電車が違うので別れようという時だった。


「ねぇ、ちょっとおそろのタオル見せてよ。」

先輩が突然そう言って、私はだらだらと冷や汗が沸いてくる。


そんなことを言われたのは初めてだ。

ああ、バレた。

私は素直にカバンからタオルを出す。


「ああやっぱり」

先輩は豪快に私が差し出したタオルの匂いを嗅いでタオルを交換した。


こんなことなら、先に先輩のタオル嗅いでおけばよかった…。


「だめだよ、入れ変えたら」


ああ、幻滅されたかな…



「…私が、咲良のタオル持って帰るんだから」

「えっ?」


この後、実は何度も私のタオルを入れ変えて持って帰っていたと先輩に告白されるのだった…。


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