ふと思い付いたら書く短いストーリー
@mizu888
お兄ちゃんじゃないの?
インターホンが『ピンポーン』と鳴って、居留守を決め込んだ。
それでも何度もなるインターホンに、諦めてモニターを見ると同じ階に住む有希ちゃんだった。
なんだろうと、扉を開ける。
「知里ちゃん、開けるの遅い!」
そう言って、つかつかと中に入ってくる。
有紀ちゃんお兄がいるかと思ってきたんだな。残念今日は友達と遊びに行ったんだよなぁ。
有紀ちゃんは高校3年、私が大学1年、お兄が大学4年。私からしたら有紀ちゃんは妹のようにかわいい。有紀ちゃんはお兄ちゃんが好き。お兄ちゃんとの恋を応援している。
昨日の時点で今日は両親いないよと伝えておいた。私もてっきりお兄は出かけないと思ってたからな。分かった時に有紀ちゃんに連絡しておくべきだった。
タイミングを見て2人にしてあげようと思ったのにな。
「ごめんね、お兄さっき出かけちゃったんだよね。」
「そうなんだ!じゃあ誰もいないってこと?」
そうだよな、せっかく来たのにいないって残念だよな。なんか残念そうにしていない気もするけど・・・
「ごめんね。じゃあお詫びに、プリンあったから一緒に食べようよ」
「ホント!食べる食べる!」
有紀ちゃんはそれを聞いてご機嫌だ。
「じゃあ飲み物も用意するね。」
「うん、じゃあオレンジジュースで!」
有紀ちゃんは当たり前に、オレンジジュースが常備なのを知っている。私がオレンジジュースをいつも飲んでいるから。
用意してリビングに持っていくと、有紀ちゃんが私がやろうと思っていたゲームのパッケージを眺めていた。
「これ今から始めるの?」
「うん、そう。これからやるとこ」
「えっ、じゃあやってるところ見てもいい?」
「うん、いいよ」
私はゲームを起動してテレビの正面に座った。
「有紀ちゃんどうぞ食べていいよ」
私はロード中に一口食べて、楽しみにしていたゲームの方に夢中になった。
少しして有紀ちゃんが後ろに回って、私を足と足の間に入れて座ってきた。
後ろからぴったりと体を寄せて
「知里ちゃんプリン進んでないよ。食べさせてあげる」
私はゲームから目も手も離せない状況で
「今いいよ、後で食べるから」
と言った。
「はい、あーん」
有紀ちゃんは話なんか聞いていないのか口にスプーンを近づけてきた。
何か言う余裕もなく、私はあーんと素直に食べた。
有紀ちゃんはそれを空になるまで繰り返した。
ようやく手が離せるフェーズに入って
「有紀ちゃん、私のは気にしなくていいってば」
と後ろに向かってくぎを刺した。
有紀ちゃんは拗ねたのか私の背中にもたれるようにぴったりとくっついていた。
そうして、また戦いが始まって手が離せない状況になった。
有紀ちゃんの手が私の腰骨をなぞる。
「ちょっ、ちょっと・・・有紀ちゃんくすぐったい」
手元が狂いそうだ。
今度は、おもしろがっているのかトップスの裾から手を入れておへそのあたりお撫でた。
「っく、くすぐったいって・・・」
私は体をよじる。
「知里ちゃん、ちゃんとやらないとやられちゃうよ」
嫌がらせがひどいと思ったら、有紀ちゃんの手は一気にトップスの中上まで上がって来て・・・
「ちょ、ちょ、ちょ…」
さすがに有紀ちゃんの手を掴んで止めた。画面では、ゾンビに何度も襲われて
『You Are Dead』の文字が大きく表示された。
「何やってるの有紀ちゃん!」
いたずらして悪い顔してるんだろうなと後ろを振り向くと、高揚しきったような顔の有紀ちゃんと目が合う。
そこで、今までの勘違いのすべてを理解した。自分の顔がひどく熱を持っていくのが分かった。
「知里ちゃん続きして」
それがゲームのことではないことは、瞳を閉じながら近づく唇でわかった。
そのあとのことは、2人とゾンビだけが知っている。
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