第10話
俺がシャワーを浴びて出てくると、二宮はソファの上で半身だけ横たえて寝ていた。
相当飲んでいたから…いや、それよりもプレゼンの日まで毎晩遅くまで仕事をしていたのだから眠いのは当たり前だと思いながら、彼の傍に近づく。
綺麗な横顔。
可愛らしい口元から漏れる寝息。
そんなものに見とれている自分に我に返る。
と、同時に二宮もハッと目を開け、俺と目が合うと
「うっわ、すみません…寝ちゃって…。」と目を擦りながら体を起こす。
「いや…もう遅いし…布団敷くから待ってて…。」と慌てて言うも、彼は「いえ!ココで…このソファでいいです…。」と遠慮がちに言う。
「お前らしくもないなぁ…ちゃんと布団で寝ろ。風邪ひいたらシャレになんないだろ?」
そういいながら、俺は自分のベットの下に布団をひき始めた。
「ほい、これ枕な…。」
「すみません。」
枕を抱えて一宮がそう言った。
「なんか、調子狂うなぁ…お前はもっと…こう…シニカルっつーか、もっとクールに…そう素直だと…俺がやりずれぇ。」
「素直だとって…俺、素直ですよ?」
「そかぁ?」
俺が冗談の色濃い疑いの眼で見つめれば、クフフと奴は笑って枕を抱きしめたまま、ころんと横になった。
あぁ、可愛い…と、そう思った。
なんか、こいつ…やっぱ、めちゃくちゃ可愛い。
「なんか、布団で寝るのって久しぶりです。あー、気持ちい…。」
「って、おまっ、どこで寝てんだよ。」
「いや…結構頑張っちゃったりしてもんだから、帰ったらなんもする気になれなくて、朝、目が覚めたらソファの上ってこと、多かったんです。」
そう言うと、二宮は腹這いになったまま、俺を見上げた。
「櫻井さんは、ちゃんとベットで寝るタイプですよね?」
「あぁ、だって、朝起きた時後悔すんのやだからな…それに身体痛くなるし…。」
そういいながら、俺もベットに腰掛け、二宮を見下ろす。
「で…やっぱ大きいな…。」
俺の貸した、パジャマはブカブカで、二宮はウエストを二重に折っていた。
「櫻井さんの匂いがします。」
そういいながら、犬のようにクンクンと袖口を嗅いだ。
「なんか、いい匂い…俺、櫻井さんの匂い、好きですよ。」
人の気も知らないで、そんな言葉をいとも簡単に吐く。
俺は動揺を隠すように「んじゃ、寝るそ」といって部屋の電気を消した。
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