第9話 砂の城

砂漠の中に佇む大きな城が目印の街、アステラ王国、大きさ、広さで言うとざっとアルフ王国の2倍ぐらいはあるだろう、しかし砂漠の町だからか、外壁は黄色く砂のようなものでできている

「やっと 着いた…」

「大変だったね…暑い…」

山を降り2人は休憩を入れながら街の門の前にたどり着いた、所々のオアシスは魔法で出来た幻想だったりで水分を補給するのが難しく、ショウの水魔法で2人は何とか凌いでいた

「さっさと入って宿屋さがそうぜ 涼しそうなところ」

「そうだね でもこの街に涼しいところってあるのかな?」

外からの外見は、砂漠の中にあると言うだけで街の中も暑そうに見える。

2人は手続きを済ませ、街の中に入っていく

街の中は想像とは全然違っていた

「涼しい」

「凄い」

2人は中に入って立ち尽くす、涼しい、寒すぎないほどに風が吹く、見た目とは違う街の快適さに2人は興奮する

「すっげぇ!これも魔法か!」

「魔法っていうか これ祝福だね 外からの砂を防いだり中を涼しくするための祝福がかかってる」

「やっぱり祝福は規格外だな…」

そう言いながら、2人は宿屋を探していった

その2人を空を飛ぶ鳥が見ている




「王 どうやらこの街に1級魔法使いが現れたようです」

そう報告するのはこの国の魔法使いだ、鳥の視界を共有し、水晶玉に写す

「珍しいな1級の旅人なんて」

そう言いながら王は水晶玉の中の2人を見つめる

「おいおい こんな事って有り得るのかよ…」

「王 もう少し言葉遣いをですね…」

そう魔法使いが咎めるが王は聞く耳を持たない

「ファウ この2人を俺の前へ呼んでくれ 話がしたい」

「かしこまりました」

そう言われたファウは少し不思議に思いながら部下の兵士へ指示を出した。




「部屋の中も涼しい〜」

そう言いながらハルはベッドに倒れ込む

「ここでこの街に着いたのは幸運だったね 数日分の食料と水を補給して明日にはこの町を出れると思う」

そう言いながら売るための素材と金を取り出す

「そうか 早く先に進むに越したことはないからな」

しかしショウの顔が暗くなる

「でも一つ問題があって…」

「分かってる この先の大砂漠の事だろ」

この先に広がるエスメス砂漠はとにかく広大である、その先にある1つの山を超えるのに少なくとも3日近く砂漠を歩かなければならない、山越えからこの街まで1日、それだけで大変だったのに3日も歩かなければならないのだ、道中では砂嵐や大蟻地獄、流砂などが原因で命を落とした人は多い

「うん どうにか僕の魔力と眠る場所を確保できるかだね」

「砂漠の夜と昼は寒暖差が激しいって聞いたしな」

ここから先を超えるためには、これらの問題を解決しなければならなかった。

2人が考えていると誰かが部屋の扉を叩いた

「失礼致します 1級魔法使いのショウ様の部屋はこちらでしょうか」

「はい 自分です」

そう言いながら扉を開けるとこの国の兵士がそこにはいた

「来ていただいたばかりで申し訳ありません この国の王がお呼びです」

「王がですか?」

急な呼び出しに2人は、もしかして自分たちが何かやってしまったのではないかと考える

「王は会って話がしたいとのことで 隣の御友人も一緒に構わないと」

そう言われた2人は王の元へ向かった


謁見の間はとても広く、中央の玉座の周り、その他の場所に金や宝石の装飾がされている、周りには兵士や魔法使い等が並んでおり、国としての大きさが伺える

「高そうな部屋だな」

「しー そういうことはあまり言わないの」

ハルは心の声を小声でショウに共有したが、咎められてしまった。

そうしていると王が現れた、王の姿はほぼ金や宝石の装飾品だらけで、所々が布に覆われている、しかし手だけは右手の人差し指だけに金の指輪をしている、髪は普通の長さで綺麗に整えられている、見えるところから見える筋肉が王は日頃から鍛錬を積んでいることがわかる、ショウはその顔に見覚えがあったが誰だか思い出せない。

2人は片膝をつき、失礼のないように頭を下げる、ぎこちないショウの所作とは正反対に、ハルの所作は美しく、こういうところは騎士学校の卒業生として見習うべきだなとショウは思った

「顔をあげて良い2人とも」

そう言われて2人は顔を上げる

「他の者達は下がれ 3人で話がしたい」

ほかの兵士や側近たちが次々と部屋から出ていく、全員が部屋を出た後、王は椅子から立ち上がりながら話す

「久しぶりだな!ショウ! 元気そうでなによりだ!」

あまりに王とかけ離れた口調で話す王にショウは疑問を投げる

「えっ なんで私の名前を…」

「ああ この髪型じゃあわかんねーか」

そう言いながら王が指を鳴らすと、魔法で髪が逆立っていき、固まる

その姿にショウの記憶の中のある人物と重なる

「あなたは…」

「ちゃんとした自己紹介が遅れたな 俺は128代目アステラ王国国王 ザルードだ」

あまりの驚きに一瞬思考が停止する

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ!」

ショウはあまりの衝撃に腰を抜かして後ろに倒れ込む

「ザルードって あのザルードか!ショウの試験で一緒だった!」

ハルは旅に出る前に聞いた試験の男を思い出す

「そうだ そのザルードだ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ!」

ハルも腰を抜かして倒れた。

「あっはっはっはっはっ!」

謁見の間が王の笑い声で満たされる


「王族関係者ならそう言ってくれてもよかったじゃないですか 普通に失礼な対応取ってしまいしましたよ」

「王族だって名乗ったら 変に気を使うだろ? それにあの時お忍びであの国に来てた訳だし」

「王が不在の国は怖すぎるな…」

3人は長いテーブルに3人だけで食事をしながら話をしていた、ザルード曰く気を使わないでくれとの事なので、なるべく敬語などを使わずに話そうとするも、相手が王だと認識してしまった今、変な敬語になってしまう

「旅は順調なのか? 順調だからここにいるのか」

「そうですね ここまで結構早く来られてる気がします」

「ワイバーンの群れと戦ったりもしたな ありゃ大変だった 死ぬかと思った」

そういった旅の話をしながら3人は楽しいひと時を過ごした、そして夕方から始まった食事会はあっという間に過ぎ去り、夜になった

「さぁ お互いの話も沢山できた事だし 本題に入ってもいいか?」

急に落ち着きを見せる王に2人は再び態度を改める

「えぇ なんの話でしょう」

王は真剣な眼差しで手を前で合わせ、話し始める

「単刀直入に話そう 今この国に私の首を狙おうとしている者がいる」

急な話に2人は身構える

「3日後 私の即位から1年を記念し式典が開かれる 2人にはその前段階で暗殺者のあぶり出しと式典当日の護衛を頼みたい」

ショウは考えた事を口に出す

「暗殺されるってなぜわかるんですか?」

「俺の幼馴染で3級魔法使いのファウの情報だ 詳しい事は言えないが 彼の魔法による力だ」

ここで言う詳しい事とは恐らく彼の魔法の中身のことだろう、魔法使いの鉄則として、手の内は明かさない、そして多く持つことが重要だとショウは教わっている

「そうですか…」

ショウは深く考える、ハルの事を考えると旅に早く出た方がいい、ただこの王には1級魔法試験での恩もある、できることなら力になりたい。

そう考える顔を見て、ハルは声をかける

「ショウ 王はお前の恩人だろ ならここは引き受けるべきだ」

「でも旅が…」

「旅のことは別にいいんだよ 別に太陽はどっか行ったりしねーからな それに この街の観光もちょうどしたかったしな」

「ハル…」

ハルがそういうなら、この話は受けるしかない、魔法使い試験での借りをここで返したい

「王 その任務 引き受けさせて頂きます」

「ありがとう!ショウ!」

そう言いながら2人は固く握手をする

「ハル君も頼まれてくれるか?」

「ショウがやるなら俺も力になる あと 2人での観光もさせて頂けると嬉しいんですが…」

「あぁ 好きに観光していくといい 街の構造を知るいいきっかけになる」

「ならショウの親友としてお力になりましょう」

そう言いながら3人で握手をする。

まさかの再会で始まったこの国での出来事が大事件へと発展することを彼らはまだ知るよしもなかった


「とは言ってもどうやって探せばいいんだろうな」

「とにかくまずは街を回ってみよう 暗殺者が潜伏できる場所とか 怪しい人を探せるかもしれない」

そう言いながら朝の支度をする、昨日は食べすぎたのと砂漠を歩いた疲れですぐに眠ってしまった、支度を整え、街を観光がてら王からの任務のため、調査をする。

しかし、初日の彼らは観光をするだけで大した収穫も得られずに終わってしまったのだった










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