第8話 夢

「なぁー 少しぐらいいいだろぉ」

「何度言ったら分かるのさ!ダメに決まってるだろ!」

2人は森の中を歩く、森に入ってから6日ほどがたっていた、次の山脈はまだ見えてこず、まだどれぐらい先にあるのかは見当もつかない。

ハルはどうやら先日あったステラと話がしたいようで、ここ数日ごねている、それもこれも全てあの水晶玉が悪い

「本当に必要な時しか使わないって約束なんだよ 私利私欲を満たすことには使わない!」

「でもお前昨日の夜使ってたじゃん」

「なっ!?」

見ていたのか、ハルには眠りの魔法までかけていたというのに…


実は彼にも話したいという欲はあった、ただそれは本当に相談があったからであって…

「これは相談 そうだ相談なんだ」

そう言いながら水晶に向かい起動させる

すると…

「どうした?何かあったか」

出てきたのはウィルだった


「それ あの人絶対わかって出てきてるよな」

「あの時間は忙しかったらしいよ」

そう言いながら2人は途端に落ち込む

「帰ったらご褒美として会いに行くか」

「あくまで報告のためにね」

そう言いながら2人は森を進んでいく。

水晶玉で思い出したハルが質問をする

「そういえばさ ショウのそのカバン 魔法でそうなってるのか?」

「あぁ そういえば話するって約束だったね」

そう言いながらショウはカバンの中を見せる

「どうなってんだこれ」

「魔法で容量を広げてるんだ これなら大きな杖とかも入るからね」

「ほー じゃあ俺の剣とか持ち物とかも入るな!」

そう言いながら剣を入れようとするハルの手を叩く

「だめだよ 中に入れられる重さは僕の体重と同じしか入れられないんだ」

「えー」

「剣なんか入れたら今入ってる分と合わせて確実にカバンが壊れちゃうよ」

ハルは渋々剣をかけ直す

「だからごめんねハル その代わりほかの大事な物は入ってるから」

「そうか なら仕方ない」

そう言いながら2人は歩いていく、そろそろ休みを入れるか、そう思いながら2人は森の中の旅を楽しんでいた




「ハル!」

「おばあちゃん!久しぶり!」

「そうだねぇ 久しぶりだねぇ」

そう言いながらベッドの上のおばあちゃんにハルは抱きつく

「体 大丈夫?」

「大丈夫よ ハルは優しいねぇ」

「うん!」

しかしハルは感じていた、何かおかしい、いつものおばあちゃんとは違う

「おばあちゃん?」

「どうしたの?」

「ううん…なんでもない」

おばあちゃんはハルの手を取り、優しく語りかける

「ハル 最後のお宝探しのヒントを出そうか」

「本当!」

「最後のお宝はねぇ…」

そう言われた瞬間、背中に痛みが走った



ドサッと鈍い音がする

「痛ってぇ!」

「んん 大丈夫?ハル」

ハルは2本の木の間のハンモックの上で寝ていたのだが、途中でバランスを崩し、地面に落ちたのだ

「悪ぃ悪ぃ」

「んもーしっかりしてよね…」

と言いながらショウは再び眠りだす

それにしても、さっきの夢はとても懐かしかった、大好きだった祖母との思い出だ

あの後ちゃんとヒントをもらったのだが、宝は見つからなかった、結局何日も何日も探すうちに、たまたま図書館であの本に出会った

「お宝 まだあるのかな」

そう思いながらハルは再び眠った


「昨日はなんの夢を見てたのさ」

「ん?あぁ ばあちゃんとの思い出の夢」

「そう それはよかったね」

「んまー途中で落っこちて目が覚めたけどな」

2人は笑いながらさらに森を進んでいく。

するといきなり、木の間から数匹の蛇が襲いかかってきた

「なっ!?」

「燃えろ!」

ショウがそう詠唱すると、目の前の蛇たちは一斉に焼け焦げて散った

「これってまさか…」

「そういうことになるね」

2人は理解していた、あれは祝福ではなく加護なのだ、つまりいつか終わりがある。

ちょうど1週間、加護の消失は魔物に襲われないという保護だけでなく、彼女達との繋がりも失ってしまったように感じた

「まぁ また会いに行けばいいよ」

「そうだな クヨクヨしてられねぇ」

2人は前を向く

加護の消失はここから本格的に旅がはじまるという合図でもあった



「大丈夫か!ショウ!」

そう言いながらハルは手を差し伸べる

「うん!何とか!」

その手を掴み上へ進んでいく

加護が消えてから2週間、彼らはついに2つ目の山を越えようとしていた。

ここまでの道中はとにかく大変だった、魔物が沢山湧いては倒しての繰り返し、戦闘を重ねることで体力と魔力を消耗していき、休みを取ったり、今日はここまでで眠る機会も増えた、加護があった頃よりも旅のペースは遅くなっていった、その代わり2人の楽しい時間が増えたのは事実なのだが

「そろそろ頂上だ、上が見えてきた」

「ハル 寒くない?大丈夫?」

名もない山はとにかく寒く、地上の方では雪が降っているのが分からなかった、寒いという感覚が初めてだった2人は、気合いで乗り切ろうとしたものの、手先がだんだん凍り初めてきて、ショウが急いで炎魔法をかけることで何とかなった。

何とか2人は頂上へ着く


そこに広がる景色は圧巻だった、一面砂だらけの海が広がっている、所々湖が広がっているが川はなくさらに1個1個が小さい、奥に小さく見える城が次に目指す国、アステラだ

「すげぇな…これ」

「うん 僕も初めて見たよ…こんな景色」

2人は景色に見とれながらも、下山を始める


この旅はまだ夢の途中なのだ…





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