第4話 モノクロトーキョー





昼下がり自炊する気には全くなれず

ワタルはUberで頼んだファストフードを口にしながらあの日の夜の事を考えていた。


なんだったんだあれは。

ただのシミ?いや、シミにしてはデカすぎる。

そういうデザインか、いや、白のTシャツに

真っ赤な模様のデザインの服なんてケイタらしくない。

じゃあやっぱり、、。


ふと、つけていたテレビに目をやる。


「世田谷区で起きている連続殺人事件の続報です。新たに3人目の被害者が確認されました。

被害者は27才男性。

1、2件目同様の手口のため警察は同一犯の犯行で間違いないと声明を発表しています。」


「いやー、今回の新たな殺人といい

前回、前々回の殺人といい、非常に残酷な事件が続いてますね。」


「今のところ全て小田急線沿いで起きてますから、警察の言う通り模倣犯で間違いないとは思いますが、今はとにかく小田急線沿いに住まれてる方々に気をつけるようにとしか言いようがないですよね。」


ワタルは今までの被害者達2人とも女性だった事から

女性を狙った犯行かと勝手に考察していたが、

今回の被害者は男性。


事件の共通点は小田急線沿いで起きているということ、被害者3人とも四肢を切られ目を抉り取られているということ。

やはり先輩たちが言っていたように快楽犯の仕業か、、。


ふとワタルは昔見た映画を思い出した。


当時は恋愛ものが流行っていたがどうも見る気になれず海外のサスペンス系を見ていた。

そこからグロテスクな描写が多い映画を見始めた。その中の1つに四肢が切られたり眼球を潰すような映像があった。

今回の事件に似ていると言えば似ている。

確か鉄道会社に入社したての時ケイタと

映画の話になった。

ケイタは映画の幅が広くグロテスクな物も結構見ていた。


「あの映画良かったけど、俺ならもっと別の殺し方するなぁ笑

あとさ、たまにまだ外明るいのに人殺したりするシーンあるじゃん?俺はあれは絶対無しだね。暗い方がいいって、

"暗い方が都合がいい"って思わない?笑」


笑顔で話していた事を思い出す。


何かがリンクした気がした。

今回の殺人事件の犯人がもし、もしケイタだとしたら、、


「まさかな。

俺こそ映画の見過ぎかな。犯人が身近な人間なんて設定としてありきたりすぎるし。」




昼ごはんを食べた後ワタルは下北沢へ買い物に行った。

オシャレなカフェや、古着屋さん、雑貨屋などが多く、買い物にはピッタリな街だ。


ワタルは駅から少し歩いた場所にある

ディスクユニオンに立ち入り、少しレコードを見て周り、カフェでコーヒーを飲み

古着屋を2、3店舗周った。

元々欲しいものがあったわけではないが

ここ数日モヤモヤが溜まっていたので気晴らし程度で徘徊していた。







気がつくと外は夕陽が落ち真っ暗だ。

そろそろ帰ろうかな。

ワタルは下北沢と世田谷代田の丁度間の地点にいたのでどちらかというと人の少ない世田谷代田駅から帰ることにした。




住宅地が並んでいる道を歩いていると

少し広めのパーキングエリアで

うつむいて立っている人の姿を見かけた。









「ケイタ?」












後ろ姿ですぐ分かった。

あの日会った時に着ていた真っ赤なシミが

ついた服を着ていたからだ。



ワタルは恐る恐るケイタに近づき

震える体を抑えながら声をかける。








「ケ、ケイタ?何してるんだ?」





うつむくケイタの目線の先には

バラバラになった人間の各部位、

そして眼球が2つ転がっていた。






「お、お前!!な、、なにやっ、て、、。」






「?何が? ワタル。お前が悪いんだろ?」



「⁈」


ワタルは顔にまで血をつけたケイタを見て

震えが止まらなかったがすぐに理性を取り戻し

話しかける。


「こ、これお前がやったのか?

とりあえず、、とりあえず警察いこ?な?

お前がさ、やってないにしてもさ、

とりあえず、、な?」


「何言ってんだよ!黙れよ!!!!

お前が悪いんだろ!!!」

















ケイタはその場から走り去り

気がつくと姿はもう見えなくなってしまっていた。






目の前の視野がどんどん狭まり

モノクロに見えた。

そしてのそのままワタルはショックから気を失いその場に倒れ込んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る