第3話 異変
休日の後の出勤ってなぜこんなにも
不安と怠惰な気持ちになるのだろう。
体はダンベルのように重く、
休みの前に何か仕事で抜けミスがあったのではないか、それを他の人がカバーしてくれて出勤した時に言われるのではないか、
余計な不安感が込み上げてくる。
「おはようございます。」
「あ!ワタル君!ゆっくり休めた?体調は?」
ワタルは、朝考えていた事とは真逆の反応に少し困惑した
「三浦さん、ご心配おかけして申し訳ございませんでした。もう大丈夫です。」
「そっか!まだ少し顔色悪そうだけど安心した!また体調悪くなったらすぐ言いなよ!」
「ありがとうございます。」
大きい目とサラサラとした黒髪ショートカットが特徴的な三浦さんは駅員から男女問わず人気だ。
ケイタも三浦さんに好意を寄せて"いた"。
「三浦さんいいよなぁぁぁ。、、、
クソっ!旦那さんが羨ましすぎるぅ!」
いつもそんなことを言っていたのを思い出す。
どうやらケイタは休みらしい今日は見かけていない。
午前中の業務が終わり昼休憩
ワタルは朝コンビニで買った焼売弁当を食べながら
休憩室のテレビを先輩駅員たちと見ていた。
「そいえばさ、あの"バラバラエクゾディア"事件あるじゃん、保育士殺されたやつ、あっ。」
先輩は話してる途中にテーブルに落とした唐揚げを箸で拾い直し何もなかったかのように口に運び入れまた話し始めた。
「あれ、2人目の被害者でたみたいじゃん。」
「そーなの?グロいよなあの事件、あっ。」
もう1人の先輩もテーブルに落としたチキンカツを箸で拾い上げ何事もなかったかのように口に運び入れ話し始めた。
「ちょうど今その事件についてやってますよ。」
ワタルは、自分は絶対ちゃんと口に入れてやると
しっかり箸で焼売を挟み口の中に入れた。
「本当だ、経堂の次は千歳船橋か」
ニュースキャスターの低めなトーンで事件について報道されている。
「昨夜未明、世田谷区千歳船橋で起きた殺人事件について警察は経堂で起きた事件と類似している事から同一犯の犯行で間違いないと断定。犯人逮捕に向けて捜査を続けています。」
「殺された女性2人とも若いよな、かわいそうに。なんでバラバラにして放置するんだろうな、例えば山に埋めるとか、燃やすとか、色々隠そうと思えば隠せるのになんでわざわざ現場に放置するんだろう。」
「あれじゃね、快楽殺人者、精神異常とかさ。英語で言うと"insanity"
死体を芸術かなんかと思ってるんだろ。
よく小説とか映画とかであるじゃん。俺の殺人は芸術だぁぁぁみたいな。」
「お前そーいうの見過ぎ。理由は分かんないけど犯人は変態だね。
ほら、もう休憩終わりだ。ワタル早く食べろよー。」
「あ、はい。もう食べおわ、あっ。」
ワタルはテーブルに落とした焼売を少し見つめ
すぐ箸で取り口の中にいれ午後の業務へと向かった。
業務が終わり家へ向かい歩いて帰る。
遅延の対応でだいぶ業務が長引きすっかり遅くなってしまった。
最近買ったJBLのイヤホンを両耳にはめて
携帯に映った音楽アプリを指で押す。
ワタルはハマればずっとそのアーティストを聞く癖がある。
最近はもっぱらリーガルリリーだ。
何から聞き始めようか
キラキラの灰かな
60Wか新曲の天きりんも捨てがたい。
一曲目を選ぶのに苦戦していると
「ワタル!」
後ろから声をかけられた。 ケイタだ。
「今終わりか!お疲れさん!」
「お疲れ、どしたのこんなとこで。」
「散歩だよ散歩!
たまにはさ家の周りだけじゃなくて少し離れた場所にでも行こうかなと思って!」
「そっか。」
「うん、俺明日も休みだから1日中家にいるのもあれだろ?じゃあな!気つけて帰れよー!」
「じゃあねー。」
ん?
ワタルはケイタの異変にすぐ気がついた。
最初は暗くてよく見えなかったが
確かにあれだ。
血だ。
すぐに声をかけようとしたが、
体の震えがワタル自身を制御した。
ケイタの姿はもう暗闇とともに見えなくなっていた。
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